ハチ
今度の世界は林の中だった。
「ここは・・・」
俺は辺りを見回した、木々の香り、ヒヤッとした空気、ここは林の奥だ、
だんだんと記憶が鮮明になって来た、
「わかったここはみんなで秘密基地を作った場所だ。」
「中学生で秘密基地?子どもにゃ!」
カイは笑いながら言った。
「昔はスマホも無いし遊びが無かったんだよ!」
俺が怒っていると、後ろで子どもの騒ぐ声がした。
子どもの俺と健と真也が来た、そして慣れた様子でドアの壊れた小屋に入って行った。
家から自転車で10分の所にある雑木林の中の少し広くなった場所に、
もう使われていない小屋があった、誰かが物置にしていた小屋だが、
中には何も道具は無くて小屋は半分朽ちていた。
学校の先生には雑木林に入ってはいけないと注意されたけど、
俺たちはこっそりとそこで集まってゲームをしていた。
誰かの家で遊んだほうが快適だった、
しかし俺たちは「秘密基地」という響きが気に入っていて何度も来ていた、
林の中の非日常空間が楽しかったのかもしれない。
平凡な日常に刺激を求めていたのかもしれない。
「で?ここでハチに刺されったってことかにゃ?」
カイが聞いて来た。
「そうだ!ここでハチに刺された!それも3箇所も!それからここに来なくなった、
今日が子どもの俺たちがここに来た最後の日だ!」
俺は思い出したあのハチに刺された痛さを!
「ここでハチに刺されなかったら、おまえたちはまたここに来るにゃ、
人生の中では一見最悪に見える出来事でも。
その出来事のお陰で学ぶことがあるにゃ。
ハチに刺されたことは学びにゃ!
このままここに来ていたら他の犯罪や危険なことに巻き込まれていたかもしれだにゃ・・・」
学校の先生みたいにつらつらと話していたカイが急に話しを辞めた、
「どうしたんだ?」カイは遠くを見ていた。
「あれはにゃんだ?」
雑木林の奥に動く影があった。
カイが俊敏に猫のように走って確認しに行った・・・
あっ!あいつは一応猫だったな。
「カイ気をつけて・・・」
俺の声はカイには届かなかったみたいだった。
俺はやることも無いので、
子どもの俺と健と真也と一緒に小屋で待っていた、
他の3人はもちろん俺のことは見えない。
みんなゲームに集中している、この時代はスマホを持っている中学生はいなかった
みんな3DSでポケモンのゲームをやっている。
家で一人でゲームをやるより、みんなで同じ空間で同じゲームをするのが楽しかった。
15分過ぎてもカイは帰って来なかった。
俺は外に出た、小屋にドアは無いから虫は入り放題だ、だからハチに刺されたのだろう。
久し振りに木を見た。
上を見上げると木と木の間から青い空が見える。
息を吸うといつもと違う空気が肺に入って来る
キレイな空気と言う人がいるがきっとこれがきれいな空気なのだろう、
緑と茶そして青しか視界に入って来ない。
耳を澄ませると鳥の鳴き声が聞こえる。
全身の力が抜けて、体の重たさを感じる、人間にはこんな時間が必要なのかもしれない。
記憶を見つけることは出来るのか?
顔を取られたらどうしたらいいんだ?
急に不安に襲われた。
その時、
カサカサと物音がした。振り向くとカイが帰って来た、
「見失ったにゃ!」カイは息を切らしていた。
「番人だったのか?」
「わからにゃい!でもあの動きは番人かもしれにゃい、
おまえはここに来て何か思い出したことにゃいか?」
「ここで・・・」
俺は辺りを見回した、
「ここでの思い出は楽しい思い出ばかりだ、消したい思い出なんて無い。」
「番人がまた来るかもしれにゃい、
おまえがここにいることを知られたら面倒にゃ!
警戒してさらに記憶がわからにゃくなる次にいくにゃ!」
その時後ろで悲鳴が聞こえた、「ハチだ逃げろ!!!」
子どもの俺と健と真也が悲鳴を上げてハチから逃げて行った、
「頑張って逃げるにゃ!」
カイは冷たく言った。
カイはシッポを回して青い螺旋階段を下ろした。
深い緑の林に青い螺旋階段、絵画のような光景に見とれていると、
「早く行くにゃ!」カイに怒られた。
俺は急いで螺旋階段を上った。
つづく




