表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶の世界の探しもの  作者: yukiko
18/28

アップルパイ

今度の場所は俺の実家だった。


俺とカイは俺の実家の前に立っていた。

白い壁、瓦の屋根、玄関までの3段の階段、

駐車場に俺の自転車が置いてある、

田舎では無いが、都会でも無い、郊外の街でまだ新しい街だ。

庭が広くて母さんが花壇を作っていた。


「俺の実家だ!」と言うと、

「わかってるにゃ!」カイが言った。

「俺が生まれた時に建てた家だから、この時はまだ築13,4年かな?

 壁も庭もまだ新しい。もう2年は帰ってないな、懐かしい・・・」

「さっ中に入るにゃ!鍵はかけて無いにゃ!」

「そうだよな、昔は鍵なんてかけなかったよ、平和な時代だったな。」


俺は自分の家に入った。

玄関はきれいに片付いていた置いてあるのはテニスのラケットだけだ。

中学生の時はテニス部だった、

毎日学校の周りを走らされて、砂埃の中走っていたあの砂の味を思い出した。

実家の玄関の芳香剤の匂い、母さんには言わなかったけど、

デパートのトイレと同じ匂いだといつも思っていた。


誰からも見えないのにコソコソと足音を立てないように、つま先で歩いて中に入った。


家に上がるとキッチンから甘い匂いがする、

キッチンを見ると母さんがアップルパイを焼いていた、

「アップルパイだ!」

「おいしそうにゃ!」

「俺が美味しいって言ったら、母さんが週1でアップルパイを焼いている時期があった。

 1ヶ月が過ぎた頃から飽きて来たけど母さんが美味しい?と聞いて来るから、

 もう飽きたとは言えなくて、何度も美味しいって言って食べてたな。」

「親あるあるだにゃ、良いお母さんだにゃ!」


「そうだ!この頃、母さんと父さんは喧嘩ばかりだった、

 よくわからないけどとにかく2人の間に溝があったのは確かだった。

 アップルパイを食べるとあの重い独特な空気を思い出すようになって、

 大人になってアップルパイを食べなくなった、

 もともと食べる機会もあまりなかったけど・・・」


母さんは悲しい顔でアップルパイを焼いている、

専業主婦だった母さんは誰にも相談出来なくて、一人で悩んでいたのかもしれない。

俺が高校に入学してすぐに2人は離婚した、このころが一番ツライ時期だったのかもしれない。

子どもの俺は何も気が付いてあげることが出来なかった。

俺は何も知らなかったんだな。母さんを見て悲しい気持ちになった。


「おまえの部屋にいくにゃ!」とカイが言って階段を上がって行った、

母さんは猫が家の中にいることに気が付いていない、

階段を上り左側にあるのが俺の部屋だった。

部屋は汚くておもちゃがたくさん床に転がっていた。

「汚い部屋にゃ!」

「中学生の男の子の部屋はこんなもんだろ!」

俺は机の横に置いてあったスケッチブックを手に取って中を見た。

昔から絵を描くのが好きだった、

このオレンジと黒のスケッチブックをいくつ買ったか覚えていない、

色鉛筆もたくさん買ってもらったな、

勉強も運動も普通の俺だったが、絵だけは上手かった。

いくつか賞をもらったこともあった、

大学を選ぶ時に絵の選考も考えていた、でも絵の世界に入れるほどの才能は無かった。

絵が上手いと絵の才能があるは違う。


スケッチブックをパラパラとめくり俺はある場所で手を止めた。

「なにが描いてあるにゃ?」

カイが机に上ってスケッチブックを覗いた、

「ミスターブラックにゃ?」

「なんでここに描いてあるんだ?」

「おまえ昔から知り合いだったにゃか?」

カイは目を細めて俺を見て来た、

「こんな絵描いたことも覚えてない!」

「覚えてない記憶にゃ!ここにヒントがあるにゃ!

 この絵は想像で描いたのか?ミスターブラックとおまえは知り合いだったにゃ?

 思い出すにゃ!」


俺はこの絵のことを思い出そうとした、

でもモヤがかかったように記憶が消えていて何も思い出せなかった。

「ここに番人はいにゃい!ここに記憶は無いみたいにゃ!」

「でもミスターブラックと俺はどこかで会ったことがあるということがわかった。」


その時に「ただいま」と言う声が下でした。

「俺が帰って来た。」ドタドタと階段を上る音が聞こえる、

カイは急いでベッドに下に隠れた、

俺は見えないから隠れる必要はない!

子どもの俺はカバンを部屋に投げるとすぐに下に行った、

子どもの俺が出て行くとカイがゆっくりベッドの下から出て来た、

カイはホコリだらけだった!「汚いにゃ!!ベッド下も掃除機かけるにゃ!」

カイはホコリをはたきながら怒っていた、しかし猫が怒っても怖くはない。


「母さん!アップルパイ美味しい!」無邪気な声が下から聞こえて来る、

下に行って子どもの俺を見ながら、「そんなに美味しい美味しいって言うと後悔するぞ!」

俺は届かない声で言ってカイと外に出た。


「少しづつ近づいてるにゃ!」

「次こそ番人がいるかもしれない、早く行こう!」カイは青い螺旋階段を下ろした、

俺とカイは足早に螺旋階段を上った。


つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ