手紙
石井は俺に近づいて来た、俺はドキドキした、まさに心臓が口から出そうという状況だった。
そして俺の横を通り過ぎた。
「えっ?見えて無いのか・・・」
石井はきょろきょろと辺りを見てから俺の下駄箱に手紙を入れた。
そして自分の下駄箱から靴を出してそれを履いて走り去った。
あっと言う間の出来事だった。
「嘘だろ!あの手紙は石井だったのか?」
「覚えてるにゃか?」
「中1の冬の朝、下駄箱に手紙が入っていて、
俺が手紙を取ったら同じクラスの後藤がサッと俺の手から手紙を奪って、
『誰からの手紙だよ!みんなに報告だ』って言って教室に行って、
みんなに俺の下駄箱に手紙が入っていたことを言ったんだ、
返せって言って手紙を引っ張ったら手紙が切れてしまったから全部は読めなかったけど、
とにかく俺が好きだってことが書いてあった、
みんなも手紙を見て誰かが石井の字に似てるって言ったんだ。」
「おまえは石井いずみが好きだったから嬉しかったんだにゃ!」
カイは下駄箱の上に登り記憶の番人を探しながら話した。
「そうだ、俺は石井が好きだったから嬉しかった、
でもみんなに石井の字に似ているって言われて、
石井はみんなの前で宮本くんなんて好きじゃないって言うから、
石井じゃないと思っていた。
当時は石井に裏切られたような、笑顔で断崖絶壁から押されたような、
なんとも言えない気持ちになってそれから、
誰かを好きになるのが怖くて・・・」
「ふ〜〜ん大変にゃね〜」
カイは前足で首を掻きながら言った。
「興味少しも無い感じだな!」
「興味なんて無いにゃ!一番可哀想なのは石井さんだにゃ!
彼女がどれだけ傷付いたか!精一杯の告白が台無しだにゃ!」
確かに彼女が一番の被害者だ、その時の俺は自分のことで精一杯だったんだ、
彼女は今は何しているのかな?
カイはキョロキョロしながら話してした。
「ここにも番人はいないみたいだにゃ!」
次に行くにゃ!
「もう行くのか?」
「ここに番人はいない、おまえのラブレターの差し出し人もわかったからもう十分にゃ!
そうそう、場所を変えると1日が過ぎるにゃ、
おまえがここに来てもう2日目だにゃ、次の場所で3日目にゃ!」
「えっ!そうなのか?でもお腹も空かないし、夜も来ない。」
「記憶の世界と普通の世界は違うにゃ!」
カイは呆れた感じで言った。
「普通の世界は24時間でなぜか3回ご飯を食べないといけない世界にゃ、
ここはだいたい1日が6時間でご飯は食べても食べなくていい。
夜は来たり、来なかったりだにゃ。」
「そうなんだ、生活リズムが崩れそうだな・・・」
「生活リズム?にゃんだそれ?」
「生活リズムは・・・」
「聞きたくないにゃ!次にいくにゃ!」
「はいはい・・・」
カイはドアからするりと出てシッポを回して青い螺旋階段を校庭に下ろした。
そして俺たちはまた青い螺旋階段を上った。
つづく




