猫のカイ
「カイ?いい名前だな、カイがあのイラストを描いたのか?」
「猫が描ける訳にゃいだろ!」
「あれはミスターブラックが作ったカードだ!」
「ミスターブラック?」
「さっき下で会ってただろ!」
「ミスターブラックって言うのか?」
「全身真っ黒だから俺が付けただけにゃ!」
「ネーミングセンスが・・・・」
「文句でもあるにゃか?」低い声で怒っている。
カイは薄い茶色の猫で種類は茶トラだと思う、
アメリカンショートヘアみたいな有名高級猫とは違う普通の猫。
俺の頭は混乱していたがだんだんと理解してきた、
「わかって来たよ、なんでここに来たのか。なんで手紙が届いたのか理解出来た。」
「おまえ飲み込みが早いにゃ。」
「送られて来た手紙は俺の過去の記憶を思い出させる為のイラストだった。」
「うんうん、そうにゃ!」
「俺の過去のネガティブな記憶を消して、
俺がもっと自信を持って生きやすくなるように記憶を変えるってことだな!
何かのドラマで見たことあるような内容だな、
過去を変えると未来が変わる!そうだろ?」
カイは冷たい目を俺を見た、
「全然ちがうにゃ!めでたいヤツだにゃ!おまえの過去なんてどうでもいいにゃ」
「えっ俺の人生を変える為じゃないのか?」
「ミスターブラックはおまえの記憶の中に探しモノがあるらしいにゃ。」
「俺の記憶の中で探しもの?」
「おまえも覚えていないことらしい、だからイラストを見せておまえの過去を刺激して、
過去の世界を広げてから探すらしいにゃ。」
「えっ?俺が覚えて無い記憶?なんだろう?」
「だから覚えてにゃいから考えてもわからないにゃ!!」
カイは怒って俺の腕を叩いた、
猫に殴られても腹が立たないのは新しい発見だ。
「カイはミスターブラックと知り合いなのか?」
「知らないにゃ、探しものがあることだけ知ってるにゃ、
ここの世界にミスターブラックは来れないにゃ!
地上にも10分以上はいられないらしい、だからおまえと長く話しも出来にゃい。」
「なるほど!それですぐに上に行けって言ったのか!」
カイは前足で首の後ろを掻いていた。
「俺はその記憶を思い出すまで帰れないのか?」
「いや、帰れるにゃ、青い螺旋階段があればいつでも元の世界に戻れる」
俺はあたりを見回した。
「どこに螺旋階段あるんだ?」
するとカイは急にドヤ顔をして俺を見た、
「この世界では螺旋階段を出せるのはオレだけにゃ!」
「えっそうなの?」
「オレは下には行けにゃい、オレはここの案内猫だからにゃ!
おまえはここに来て過去を思い出すことが仕事にゃ、
ミスターブラックはおまえの記憶の奥にある記憶が欲しいらしい、
でも人は誰でも忘れたい記憶があるにゃろ、
そんな忘れたい記憶には記憶の番人がいて、
誰もそこには近づけないようになっているにゃ!」
「記憶の番人・・・?」
俺は頭の中で大きな三角のフードを被って片手に大きなカマを持った2mぐらいの男を想像した。
「オレも見たことはにゃい!」
「えっ?じゃその番人を探して、その番人が守る記憶を見てミスターブラックに話すってことか?」
「うんうん、そういうことにゃ!」
「無理だよ、番人はどににいるんだ?それにどんな記憶なんだ?」
「オレにもわからにゃい」
「番人が守っている記憶ってことは俺には思い出したく無い記憶なんだろ?
そんな重たい記憶なら俺も見たく無い!」
「わかったにゃ、じゃ今から下に行って、
ミスターブラックに記憶を探すのは嫌だって話すにゃ!」
「えっ?それは怖いな・・・」
「大丈夫にゃ、話さなくて心が読まれるにゃ!」
「それはそれで気まずいな・・・」
俺は空を見ながら悩んだ、記憶の中なのに空も雲もある、
この空はいつか俺が見た空なのか?不思議な感覚だな・・・
俺の記憶の中なのに、風の香りも午後の公園の香りも花の香りもする。
なつかしい香り、平和な香り、何も悩みの無かった子ども時代の香り、
そんな香りの中で大人になった俺は今は悩んでいる。
何が正解なのかわからない、
いや、正解なんて無いのかもしれない、とにかく今は下に行くことしか選択肢がなさそうだ、
俺は下に行ってミスターブラックと話すことにした。
気は進まないが・・・
つづく




