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東部第二連邦高等女学校の日常  作者: キュッチャン
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第25話『山城生徒会長の憂鬱』

山城生徒会長が小さくため息をついた。

藤崎はそんな生徒会長を不安げに見つめる。


ここ最近の心労を思えば、ため息ぐらいつくだろう。

ただでさえ重責を担っているのに、現在の西校の対決姿勢は異常だと言える。

そう藤崎は考えた。

その時、今日もまた生徒会が介入するべき雑事がもたらされた。

ここ最近はちょっとしたことでも破壊工作が疑われ、西校の陰謀ではないかと囁かれる。

はっきり言ってパラノイアであり、杞憂に終わることが殆どなのだが、可能性がある以上警戒しなくてはならない。

いきおい本来対応する部活や委員会の他に、荒事に長けた生徒たちをつけることになる。

この調整もいまや生徒会に大きな負担をかけていた。


生徒会長が藤崎に呼びかけた。

「藤崎、佐藤を呼んでくれるか?」

「はい、生徒会長」

この頃は小規模なPMC系部活に依頼を出すことも増えたが、どうも佐藤を部長とした機械化装甲射撃偵察帰宅部(ふざけた名前だ)への依頼が頭一つ抜けて多いように思えた。

腕は良いがどうにも細部が雑で、藤崎はといえば、正直そこまで好いてはいない。


藤崎は、機械化装甲射撃偵察帰宅部が部室として使っているガレージのドアを開けた。

「佐藤、生徒会長がお呼びだ。来い」

「またか…」

不満そうに佐藤がタバコを灰皿に押し付けて立ち上がった。

「お前ら、PPを手伝って、BMPをすぐ回せるようにしとけ」

佐藤が部員たちに指示を出す。

こういう目端は利くので、全く無能ではないのは確かだが…藤崎はどうにも釈然としなかった。


──生徒会長室

佐藤と話すときの生徒会長は、声が少し明るいように藤崎は思った。

いや、他の生徒と話すときも明るい声で話す方だ、生徒会ではどうしても深刻な話題が多くなるので明るく振る舞えというほうが無理なのだ。

そう思い直して再度、会話に集中する。


「その護衛を君たちに頼みたい」

「了解です。報酬分はまぁ、努力しますよ」


佐藤の方はといえば、いつもこうだ。慇懃無礼な態度で明らかによそよそしい。

不良生徒と、優等生の生徒会長では、反りが合わないのだろうが、もう少し会長に敬意を払うべきだろう。


退室する佐藤と目が合った。顔に出しているつもりはなかったが、不満げな表情を作っていたようだ。

佐藤は肩をすくめて生徒会長室を出ていった。


「藤崎、佐藤とはもっとうまくやれないか?」

「は、会長、申し訳ありません」


ふむ、不良生徒だと下に見ているのは確かに良くないかもしれない。

もっとも墜落輸送機の一件やスラムの一件があるのだから、私が一方的に歩み寄るのも釈然としないという思いがある。

しかし、尊敬する生徒会長が佐藤を頼るなら、部下の私がその足並みを乱すのも問題なのではないか?


「以後、気をつけます」

藤崎は背筋を正して言った。

「そうかしこまることはない。だが、仲が良いに越したことはないからな。

それでは仕事に戻ろう。未決の書類がまだまだある」

「はい、会長」


単調な書類仕事が続き、藤崎は頭の片隅でまた考え始める。

やはり、どうも会長は佐藤を好きなのではないか?

だがなぜだろうか?確かに精悍な顔立ちと力強い態度は一部の生徒から人気ではあるが、会長もそういったタイプが好きなのだろうか?

それならそうとしても、なにも佐藤でなくてもいいだろう、会長にはもっとお似合いの相手が居るはずだ。

なにもあんな不良生徒でなくたって…


「藤崎…?藤崎?どうかしたのか?」

「あっ、会長…すみません…」

会長の呼びかけを聞き漏らしていたことに、そして自分が考えていたことにも、藤崎は罪悪感を感じた。

「そろそろ食事にしよう、一緒にいかないか?」

「はい、お供します」

尊敬する会長のことだから気になるのか、あるいは自分は…

…佐藤に嫉妬しているのだろうか?

藤崎はふと、そんな事を思った。



──中学生当時の山城が襲われたときに、偶然通りかかった佐藤が助けたという事件は、今は山城生徒会長だけの記憶である。

佐藤はと言えば、その時助けた地味で臆病な女子中学生が、今の山城生徒会長だとは思いもよらない事であり、この一件が元で、山城が西校ではなく東校へ進学したということは、山城生徒会長だけの秘密だった。

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