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東部第二連邦高等女学校の日常  作者: キュッチャン
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第16話『スカッド狩り』

──北日本陸軍基地の廃墟

「PP、スカッドのTELなんか動かせるのか?」

ストレロクが、R-17ミサイル(スカッドB)を搭載したTEL(ミサイル発射装置と一体になった大型トラック)に乗り込むPPに問いかけた。

「別に運転の基本は同じよ。車体が長いから大変は大変だけど」

PPが答える。

彼女たちは新しく設立された『戦略戦術ロケット愛好会』の依頼を受けて、廃墟の陸軍基地からミサイルとTELの回収に来ていた。


「こんな物騒なものを回収することになるとは思わなかったなぁ」

ストレロクが言った。

西校に配慮して立ち上げにストップがかかっていた戦略戦術ロケット愛好会は、関係悪化に伴い、政治的威圧効果を見込んで設立が承認されたのだった。

「しかし、このミサイル、まだ飛ばせるのか?」

「クルマは専門だけど、ミサイルのことは知らないよ」

PPがTELの運転席から言った。

「ミサイルは分解して複製するんだとよ」

部長が近づいてきて言った。

「PP、TELは動かせそうか?」

「部長、ストレロク、今エンジンかけるから横にどいて」

「あいよ」「はいはい…」

部長とストレロクが脇に退くと、PPはエンジンを始動した。

先にPPによって、近くにあった同型のTELとサンコイチで整備されたTELは、数十年のブランクを感じさせない轟音を周囲に轟かせた。

「いけそうだな」

ストレロクが呟く。

「メガネ、新入り、TELの修理は終わった。学校に戻るぞ」

部長がインカムに向かって言った。


「ところで誰がBMPを運転するんだ?」

「メガネは一応クルマ動かせたろ。

おいメガネ、お前BMP運転しろ」

「え~私~?」

「よし、学校に戻るぞ!全員乗車!」

メガネを無視して部長はBMPの上に乗った。


「いつもより心なしか揺れるなぁ…」

砲手席のストレロクが言った。

「心なしかどころじゃないぞ、こっちは」

振り落とされそうになった部長と新入りは、上に乗るのを諦めて、狭苦しい兵員室の座席に座っていた。

「ちょっと~こっちだって頑張ってるんだから~」

運転席のメガネが言う。

「メガネ、私のBMPを壊さないでよ!」

「PPまで!」

BMPの後ろを、PPの運転するTELが追いかけている。

瓦礫だらけの道を進むのでどちらもスピードはひどくゆっくりだ。

キャタピラ式のBMPは本来もう少し速度を出せるのだが、慣れないメガネは不整地最大時速45kmのスペックを発揮できていない。

もっともTELから離れすぎてもいけないので、現状では特に問題ではなかった。


BMPに護衛されたミサイルを襲撃しようというモノ好きは現れなかったため、BMPとTELは無事に東校へと帰還した。

物珍しさから、校庭や窓際に居た生徒たちが、やってくるTELを眺めている。

「さて、クライアントに会うとするか…」

心なしか疲れた顔の部長がBMPを降りて、言った。

大きく伸びをしてから歩きだす。

「PP、もうエンジンきって良いぞ」

ストレロクがインカムで連絡する。

「あ~、車体は長いし、制動距離もよくわからないから疲れたよ」

PPもなれない運転に疲れたようだった。

「PPいつもこんな視界で運転してるんだぁ」

メガネもBMPから這い出してくる。

「新入りちゃんは元気だねぇ」

特にどうというふうもない新入りを見ながらメガネは言った。



──戦略戦術ロケット愛好会 部室

設立間もない戦略戦術ロケット愛好会の部室は、引っ越しの真っ最中という風景だった。

折りたたみ式の机や椅子が壁に立てかけてあり、部員たちの私物や部活に必要なものが、ダンボールに満載されて部屋の隅に積み上げられている。

「おーす、頼まれてたミサイルとTELを持ってきたぞー」

部長がノックもそこそこに部室に入り、言った。

「おぉ!いやはや仕事が速いね君は」

白衣に大きな丸眼鏡をかけた戦略戦術ロケット愛好会の会長が言った。

ロケット愛好会設立が許可されるまで科学部で液体燃料を研究していた彼女は、すでにいっぱしの偏屈な研究者という雰囲気を醸し出していた。

手段と目的を選ばないやり方から『東校のフォン・ブラウン』と呼ぶものも居たが、実際のところ、ロケットで宇宙旅行をしたいのか、それとも何かを破壊したいのか、単に飛ばすことが目的なのかは、誰にもわからなかった。

「TELの修理のほうが案外すぐに終わったんで、楽な仕事だったよ」

「うんうん、それはよかった。さぁ約束の報酬だ。

受け取りたまえよ」

「ありがとよ。また何か有れば言ってくれ」

「そうしよう。君も発射試験のときには見物していきたまえ。

きっと見ものだぞ」

「失敗しなけりゃ良いけどな…」

部長はぼそっと呟いた。

「なるほど、それもそうだ。打ち上げ失敗の事を考えると、発射ボタンは残念ながら私以外が押すことになるね」

──いい根性してんなコイツ…。

部長は思った。

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