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東部第二連邦高等女学校の日常  作者: キュッチャン
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第13話『結成』

あたしは佐藤 志緒理、東部第二連邦高等女学校の一年生。

タバコが好きでちょっと人より背の高いぐらいの、普通の女子高校生。


高校生と言っても、教育水準は大破壊前とは比べ物にならないと言われている。

だがそれでも、ちゃんと生活に必要な事を教えてくれる。

生活に必要な事というのは銃の手入れの方法だとか、どうすれば銃弾がマトに当たるのかだとか、そういうものだ。

もっともこういう大事なことは、もっと早いうちにみんな身につけちまう。

今はそういう時代だ、そうなってもう何十年も経った。

そう習った。


歴史だの数学だの小難しいこともやるにはやるが、大人の教師が足りないから大抵は頭の良い生徒たちが教師役をやっている。

あたしはもちろん大して真面目にはやらないが、馬鹿にされるのも癪だから程々にやってる。


どうせあたしは銃の方で生きて行くしか無いのだから、それで十分だ。

どうあがいたって政府に頭の方で雇われることはないだろう。

もっとも中央政府なんて本当に今も存在しているのか怪しいものだ。

地方自治政府が辛うじて生き残ってるだけで、

それも正規軍の事務仕事以外に何をしているのかわかったものじゃない。

だいたいこの地域の自治政府は、西校からの連中で、ほとんどまったく、枠は埋まってしまう。


「ねぇねぇ、私達も高校生になったんだし、アルバイトしない?」

幼なじみのメガネ(本名は中村 千秋だ)が言った。

あたしは顎を撫でながら答えた。

「それならあたしはPMCがいいね、接客なんてやりたくない」

「いいね!だったらもっと人を集めなきゃ!」

予想外にメガネは乗り気だった。


「さて…」

チームを組むなら気兼ねのない同期がいい。

先輩の顎で使われるなんてのはゴメンだ。

人数は、あと2,3人は欲しいところだな。


「ん?佐藤じゃないか、女選びか?」

辺りを見回していると腐れ縁の笹嶋が声をかけてきた。

「…そうかもな」

「おいおい、急に目覚めちまったのか?」

「PMCのバイトを始めようと思って、手頃なやつを探してたんだ。

そうだ、お前も来るか?」

「悪いな、もう立ち上げちまった。戦車同好会だ」

「そうだったのか、お前が来るなら手っ取り早かったんだが」

「お詫びと言っちゃなんだが、一人妙なやつが居るって話を聞いたぜ」

「妙なやつ?」

「ロシア語で…なんだったかな…そうだ、ストレロクとか名乗ってる奴が居て、中学からソロの傭兵やってたらしいぜ」

「ストレロク?本名は?」

「それが本人も知らねぇってんだ、記憶喪失の上にまともな記録がないんだってよ」

「確かに妙なやつだ」

「まぁ、腕は確かだろうぜ。頑張って口説いてみな」

笹嶋はそう言って去っていった。

──名前もわからない記憶喪失の一匹狼。

…そんな奴と友達になれるか?


「……わかった、チームに加わろう」

交渉は拍子抜けするほどあっけなく終わった。

はやくもその境遇と性格からすっかり孤立していた上に、ソロの限界もわかっていたストレロクは、ひとまずチームに所属することを選んだようだった。

「気まぐれだ、水が合わなかったら抜けさせてもらう」

「もちろんさ、無理に残れなんてあたしも言わないよ」

「これからよろしくね!」

メガネが言った。

「あぁ…よろしく」

「よろしくな。

さて、あと一人ぐらい誘おうと思ってるんだが、誰か候補はいるかい?」

「それなら足が欲しい、クルマが一台あるだけで行動範囲も、出来ることも、まったく変わる」

ストレロクが言った。

「ふーん、なるほどな…」

顎を撫でながら応答する。

「それなら車好きの久遠って子が居るんだけどどうかな?」

メガネが言った。

「声をかけてみたらどうだ?私はそこに居ないほうがいいかな?」

ストレロクが言った。

「どうせチームを組むなら、一緒に居たほうがいいだろ」

「そうか。そう言うなら、一緒に行こう」


「クルマは今は無いけど、実はアテがあるんだ」

久遠が声をひそめて言った。

「実は今BMP-1をレストアしてて、協力してくれるならチームに入ってもいいよ」

「そういうことなら、喜んで協力するが。

あたしらに車のことなんてわからねぇぞ」

「資材集めとパーツ集めを手伝ってくれればいいよ。

一人だと危ないし、運ぶのも大変だから」

「あぁ、そういうことか」



──放課後

「これが私のレストアしてるBMP-1」

外観はほぼ新品と呼べるほど完璧に塗装の塗り直された歩兵戦闘車が、トタン板の偽装の中から現れた。

「凄いもんだ。まだ修理が要るのか?」

「直ってるのはむしろ見た目だけ。中身を交換しないと走れないよ」

「そんなもんどこで探すんだ?」

「BMP-1の部品なら、まだそこそこ廃墟の倉庫とかにあるんだよ。

正規軍はもうBMP-1を使ってないからね」

久遠がウインクして見せる。

「じゃあ、探す場所はもう決めてあるのか?」

ストレロクが言った。

「もちろん!ついてきて!」

BMP-1を再びトタンで覆い隠しながら久遠が言った。



久遠は廃墟の基地へチームメンバーを連れてきた。

メガネが抜け目なく用意した荷車を瓦礫だらけの道を進ませるのは、それなりの労力を必要としたが、

エンジンなどの重量物を手で運ぼうとは誰も思わないので、仕方のないことだと納得する他無かった。

「さぁ、ついでに金目のものも拾って帰ろう!」

荷車を引くメガネが言った。

「金になるものはだいたい取り尽くされたあとだよ」

久遠が冷静に言った。

メガネが顔をしかめる。

「メガネのことは気にするな、いつものことだ」

メガネは金銭欲が服を着て歩いているような人間だという事を、あたしは長い付き合いで思い知っている。

ストレロクが不満げな顔をする。

まぁそんな顔をするなよ、こいつだって良いやつなんだぜ。

金に汚いのは認めるけどよ…。


「それでこの駆動系パーツか、BMP-1本体とか、使えそうな物を手分けして探してほしいんだけど」

久遠がマニュアルの該当ページを見せながら言った。

「…白黒でよくわかんねぇな」「他のエンジンとの見分けがつくか不安だ」

「うーん、とにかく使えそうなものを見つけたら呼んで」

「わかった…」


──わからん…。

「誰か機械がわかるやついるか?」

久遠から離れてからメガネとストレロクに聞いた。

「わからん」「わからないよ~」

「…」「…」「…」

「あー、とりあえずBMPを探してみるか?

外装があるなら中身も近くにあるかもしれない」

「そうするしかねぇな」

ストレロクの提案に同意した。他に手も浮かばない。

「どうせ私達じゃわからないから金庫でも探さない?」

「お前…」

メガネはもはや諦めて目的を見失っているようだ。

ふと、あたしは殺し文句を思いついた。

「でもクルマがあれば金目の物をたくさん積めるぞ」

「あっ」

どうやらうまく行ったようだ。

「ふむ、それじゃあまた後で会おう」

ストレロクは「なるほど、そうやって使うのか」という顔をしながら、BMPのパーツを探しに行った。

「じゃあ、あたしらもパーツ探しに行くとするか」

「オッケー」

メガネと別れて倉庫の廃墟に入る。

なるほど、ざっと見渡す限り、簡単に持ち運べて金になりそうなものは何もなさそうだった。

あとに残っているのは乱雑に物色されたゴミの山という感じだ。

「こりゃ時間がかかりそうだ…」


──結局この日はなんの収穫もなかった。

メガネは落胆し、次からは荷車は物を見つけてから持ってこようという事になった。


──数日かけて隅から隅まで調べた時、一台のBMPが近くの林に、草木に埋もれているのが見つかった。

「久遠、こいつはどうなんだ?」

「持って帰ってバラすまではわからないけど、

少なくともここにはこれ以上何もなさそうね。

私はここで持って帰る準備をするから。皆は荷車を持ってきて」

「あいよ」「やっとか」「動くと良いなぁ」

ここ数日の苦労がようやく実を結ぶ時が来たらしい。

あるいはこれも徒労に終わるのか。

あれこれ考えながら荷車を運んでゆき。

久遠を手伝ってエンジンブロックを荷車に乗せた。

「あとはこれを持ち帰って、分解して使える部品を探すわ」

「もしかして、これ一個じゃ動かない…?」

メガネが聞いた。

「ニコイチで動けば最高に運がいいよ。

他にBMPの部品がありそうな場所も調べてあるから…」

「そんなに手間がかかるなら、バイトしてBMPのパーツを買ったほうがマシじゃないか?」

「そうかもしれねぇな」

あたしは顎を撫でながら同意した。

「バラしてみるまでわからないんだからそんな顔しないで、早く帰ろう!」

こいつは機械の相手をするのが幸せという類の人間らしいと、あたしはだんだんわかってきた。


──数日後、レストアの完了したBMPの上に、あたし達は居た。

「ん~快調快調~」

バイトをして買ったインカムから久遠の声がする。

「登下校が楽でいいわ~」

メガネが横で言った

「お前たちはもっと歩いたほうが良さそうだがな」

ストレロクが言った。

「部活の申請も出したし。これからが本番ってもんだ」

あたしは言った。

「バリバリ稼いで大金持ちになろう!オーッ!」

メガネが叫ぶ。

ストレロクはそれを見て微笑みながら言った。

「せいぜい稼がせてくれよ、部長」


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