表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/58

島に潜みし邪悪

「島の外は中々面白かったぞジャリュウ」

捕食者の島の森の奥地。

ダイルが蛇の鱗を纏う青年に、以前の外の住人…粉砕男達との戦いを語っていた。

ジャリュウは面白くなさそうな顔だった。

この島には彼らに及ぶような捕食者はもういない。昔は強敵が多かったのだが、今では強敵が猛威を振るっていた時に隠れていた弱者ばかりで、二人はこんな死地でも世間話ができた。


ジャリュウは低くこう呟く。低いが、ダイルと比べれば高めの声で。

「お前らばかり得して。何か置いてかれたみたいだ」

「そう言うな。本来ならば違反行為だ」

ダイルは地面を見た。

頑丈な土だが…この下に何があるか彼らは知っていた。

「次外に出れば、俺らでもあの方に食われる。あの方が捕食者の頂点である事を忘れるな」

楽観的に見えるダイルも、この時ばかりは脅すような声を発し、そのまま背を向けた。

ジャリュウは、手頃な岩に腰かけて、自分の膝の上に肘を置き、頬杖をついた。


「…」


…ジャリュウの背後の茂みが、小さく揺れた。

振り替えると、そこには茶色い毛皮を着たジャリュウと同い年くらいの青年。

狼のハウンディだ。

「なあハウンディ。このまま縛られ続けるのか?この島に」

ジャリュウの言葉を聞くハウンディの目は…何と言うか、無機質だ。

なのに生気を感じられる。

…彼は瞳に備えた無機質な壁の向こう側に、熱い感情を秘めているのだ。

「俺達は捕食者。強い相手と戦って、そして喰らう。俺達の生き方はそれだけ。なのに、俺達にはもっと色々な所へ行く力を持っている。生き方を縛られてるにも関わらず」

「そう。だからこそ、もっと色々と知りたい。…流石ハウンディ。将来お前と殺しあうのは、ちょっと気が重いよ。ハヒヒ…」

あえて間抜けな笑い声をあげてみせるジャリュウ。

ハウンディの目は、変わらなかった。

「何より、俺とお前は…似てるからな」

真顔になるジャリュウを見て、ハウンディは少し下を見た。



…そんな彼らの姿を、一つの黒いドローンが監視していた。

森の木々のほんの僅かな隙間の映像を、隅々まで細かく遥か遠くの城のモニターへ送り出していた。


映像を見ていたのは、白衣を着た蛙のような姿をした怪人、そして黒いツインテールに眼帯の女…闇姫。

蛙怪人の名はガンデル。闇姫軍屈指の腕前を持つ科学者だ。

「やはりです闇姫様。僕の狙い通り、この最強の捕食者四人の裏に、更なる上が存在するようです。いかがいたしましょうか?」

「時代に乗り遅れた下等どもだと思っていたが、早急に対応する必要がありそうだな」

赤い椅子に座っていた闇姫がゆっくり立ち上がり、部屋の隅に置かれてあった写真立てを見る。

ここからでは、光が反射して見辛いが…闇姫の頭にはある人物達の顔が浮かんでいた。

「ガンデル。今回の件、私の妹達も呼び出してでも迅速な対応が必要だ」

「ええっ!?…黒姫様と影姫様をお呼びに…!?」

わざとらしい程の勢いで尻餅をつくガンデル。闇姫は動かず、モニターを睨むばかり。

木々に囲まれた島の地面…。

闇姫は、この島から感じる底知れぬ魔力を感じ取っていた。



…そして更に場面は変わり、捕食者の島のある場所…。



虎縞の毛皮を着ており、山吹色の髪に虎の耳が特徴の女、タイガが、暗黒に支配された空間である人物に頭を下げていた。

悪喰(おじき)様…!どうか我らに外の世界で戦う権利を…。この島ではもう物足りません!」

暗闇に頭を下げ続けるタイガ…。


…と、暗闇に何かが浮かび上がってくる。

真っ赤に輝く、巨大な目だ。目だけでタイガよりも大きい。

…捕食者の裏に潜む者だ。

「タイガ。お前はいつからそんな弱い頭になった?外での暮らしを許される捕食者は、唯一生き残った捕食者だけだ」

歯を食い縛るタイガ。鋭い牙がちらついている。

巨大な目…悪喰はそれだけ言い残すと、再び暗闇へと消えていった。


頭を上げるタイガ。



…胸元から、ある物を取り出す。

緑色に輝く宝石だ。これは以前外の世界に出た時に宝石店から盗み出したもの。



「…ジャリュウ」

呟くタイガ…。




…その時!暗闇から飛び出す紫の光線が、タイガの手元の宝石に直撃した!

一瞬で粉々になる宝石…タイガは唖然とした。


「異物を持ち込むな」


暗闇にこだます、悪喰の声。


…タイガは、両腕をダランと垂らしてしまっていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ