表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/36

35話 スザンヌの動向 その2

「あなたがアーチェ嬢ね? 私はスザンヌという者よ。知っているとは思うけれど」


「は、はい! スザンヌ様!」



 ネプト国王陛下の正室に当たるスザンヌ様が、私に会いたいと言って来たのは、ほんの数日前のことだ。お父様も断るわけにはいかずに、すぐに承諾したらしいけれど……その日がついにやって来たのだ。



「スザンヌ様からお越しいただかなくても、お呼びいただければ、いつでも私の方から向かいましたのに……」


「いえいえ、それだと申し訳ないわ。ノーム伯爵にも随分と無理をしていただいたのだし」


「さ、左様でございますか……」



 まあ、確かにお父様は予定を色々と調整していたと思うけれど。応接室には厳重な警備が敷かれていた。全て、スザンヌ様の護衛になる。流石は正室……王妃という立場だけあるわね。


「用件は既に聞いていると思うけれど、こうしてあなたと会いたくなってしまったの。急に訪問してごめんなさいね」


「い、いえ……とんでもないことでございます……!」



 スザンヌ様は噂に違わぬ礼儀正しいお方だ。その言動からもそれが伺える。ネプト様が通例を破って愛情を見せたことにも納得が出来るかもしれない。


「ネプトとの関係は概要ではあるけれど聞いているわ。例のスラム街からの付き合いらしいわね?」


「そ、そうですね……私はその時は知らなかったのですけど……」


「なるほど。でも、私よりもはるかに共に過ごした時間は長そうね……彼があなたを側室に選ぶ理由も分かる気がするわ」


「えっ、スザンヌ様……?」



 今の会話内容だけで分かったと言うこと? それらしき部分はなかったように思えるけれど……。


「ネプトから聞いているかどうかは知らないけれど、私……というより、私の家系は元々、あのスラム街をどうにかした方が良いと訴えていた家系なの。ネプトが私を王妃として最初に選んだ理由もそこにあるのよ。ほら、彼はスラム街の人種差別をどうにかする為に、7年前から視察をしていたでしょう?」


「ああ、なるほど……そういう接点が……」


 改めてスザンヌ様から聞かされると説得力があるように感じられた。同時に最初はやはり、政略結婚の様相が強かったことも……。二人が一緒になれば、今後もスラム街の人種差別はなくなっていくだろうと思えたから。


「では、お二人は本当に最初は……その、政略結婚だったのですか?」


「まあ、そういうことになるわね。でも、お互いがまだ若かったから……まあ、そういうことよ」



 通例を破ってしまったということか……それは人間として仕方のない部分なのかもしれない。


「私と比べると、アーチェ嬢は最初からネプトに気に入られていたみたいね。教会での一件もそうだし……そう考えると、少しだけ嫉妬しちゃうわ」


「あっ……スザンヌ様、それは……」



 温厚なスザンヌ様だけれど、少しだけ漏れた本音といったところだろうか。ここは引いてはいけない……ちゃんと自分の気持ちを伝えなければ。そうでなくては、正室である彼女に失礼になる。私はスザンヌ様にしっかりと向き合うことを誓った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ