32話 突然の告白 その1
ネプト様に突然告白をされてしまった……私は一体、何が起きたのかと困惑してしまう。
「ね、ネプト様……どういうことでしょうか?」
「言葉の通りだよ、アーチェ。私は君を愛していきたいと思っている。その為には、側室として君を迎え入れる必要があるんだ」
ネプト様の言葉はやはり、「側室」として私を迎え入れるという内容だった。聞き間違いではないようね……。ネプト様が現国王を務めるマクスレイ王国では、国王陛下は一夫多妻制が普通だ。他の高位の貴族も同じではあるけれど、国王陛下の場合、対外的な場面を考慮して正室になる女性とは恋愛をしないのが通例となっていた。
つまり、ネプト様は私を「側室」に迎え入れるわけだから、事実上の告白をしたのと同じになるのだけれど。
「ネプト様……非常に光栄なお話ではあるのですが、少し考えさせていただけませんでしょうか? ニーナやウォーレスの問題が、少し進展した直後でもありますし、とても即答できる内容ではありませんので……」
「そうだな、待つのはもちろん構わない。私としてもタイミングがあまり良くなかったようだ。まずは、ニーナ嬢達への罰を検討し、告白の件は後程、聞かせてもらうとしようか」
「ありがとうございます、ネプト様。そのように言っていただければ、非常に助かります」
まさかの国王陛下からの愛の告白……それに「待った」を掛けるなんて、本来であればとても失礼なことだけれど、ネプト様は嫌な顔一つすることなく承諾してくれた。これも、幼馴染としての絆なのかもしれない。
ニーナやウォーレスとは幼馴染の関係性で、幼馴染はもうコリゴリだったけれど、ネプト様とも幼馴染なのよね。
彼との絆は大切にしていきたいと思っているし。
勿論、今回の件で非常にお世話になった弟のフォルセやお父様との絆も今まで以上に大切にしていきたいと考えている。これは私なりの成長の証なのかもしれない。
「国王陛下、申し訳ございません。側室になる、というお話自体は光栄でございますが、娘も混乱しているようでございますので……」
「いや、ノーム伯爵。私の方こそ急な告白をして申し訳なかった。しかし、彼女を幸せにしてあげたい、という気持ちに嘘はない。それは……7年前から続いているさ」
「7年前……」
あの事故の時、彼は死亡したということにして身を隠した。当時は特に王族や貴族がスラム街に来ていると、公にバレてはマズイ時期だったはずだし。ネプト様はジョンを死んだことにして自分を隠し、さらに私が教会に行っていたという事実も、公からは隠し通したのだ。その部分に関しては本当に感謝しか出来ない。
「しかし、ネプト国王陛下。姉を側室にしていただくのは良いのですが、正室であるスザンヌ様がいらっしゃる状況で、それは如何なものでしょうか?」
「む、フォルセ……それは」
「マクスレイ王国の慣習については、私は知っているつもりです。パーティーでネプト国王陛下と姉さまを引き合わせたのは私ですので、このような流れになることは予想していましたが。ネプト様は正室であるスザンヌ様のことも愛していらっしゃるはず……その辺りのお考えをお聞かせいただけませんでしょうか?」
「……」
ネプト様は正室であるスザンヌ様の話になった途端、無言になってしまった。フォルセからその話題が出るとは思っていなかったのかもしれない。スザンヌ様は礼儀正しい、とても美しいお方だ。公爵令嬢という立場だけれど、貴族の鑑のような存在と言っても過言ではないかもしれない。
ネプト様がフォルセの問いにどのように答えるのか……私はとても気になってしまっていた。




