11話 追い詰められるウォーレス
「ウォーレス殿の今後の為にもハッキリと申し上げましょう……」
「は、早くしてくれ……！ 一体、何が勘違いなんだ！？」
フォルセに遊ばれるように焦らされているウォーレスの構図。まるで餌を目の前に待てをさせられている犬のようだった。見ている私は面白いけれど、ウォーレス本人からすればたまったものではないだろう。
「ウォーレス殿は私の姉であるアーチェが、まだ自分のことを好きなのだと勘違いしていませんか？」
これ以上、焦らすのは得策ではないと判断したのか……フォルセはとうとう、勘違いの理由を話した。ウォーレスがそんなことを考えているのであれば驚きだけれど、内容自体は普通のものだ。
でも、それを聞いたウォーレスの態度は……想定外だった。なんと形容していいのか……とても驚いている？ と言って良いのかしら？ なんとも微妙な表情に彼はなっていた。
「な、何を言っているんだ？ フォルセ殿……いくら、アーチェの弟だからって言って良いことと悪いことがあるのだぞ！？」
ウォーレスは図星を突かれたからか、明らかに焦っている様子だった。まさか、先ほどの話は事実だと言うの？ ウォーレスはまだ私が彼を好きだと思っている？
すごく気持ち悪いことだけれど、確かにそんな感情がないと、私に告白してこないわよね……しかも、婚約解消をして間もない間に……。今のウォーレスの取り乱し具合を鑑みれば……それは事実だということになるわね。
「はあ……」
私は思わず、溜息を吐いてしまっていた。ウォーレスがどんどんと情けなく見えてくるわ……。
「しかし、事実なのでしょう？ でないと、アーチェ姉さまに告白する意味が分からないですし……」
「そ、それは……うぐ」
ウォーレスは言葉を詰まらせてしまっていた。完全に図星だということを認めたようなものだ……。溜息がどんどんと強くなりそうだ……まさか、事実だったとは。
「いや、しかし……その点についてはニーナも言っていたことだし。そうだろう、ニーナ？」
助け船のつもりなのか、ウォーレスはニーナに何か言葉を出してもらうように促していた。往生際が悪いというかなんというか……。
「ええ、確かに言いましたけれど。でも、ウォーレス……私はあくまでも予想の範囲として言っただけですよ？ それが間違っていたからと言って、私に責任を追及するのはおかしいのではないですか？」
「に、ニーナ……！ そんな……！」
完全な正論で返されたウォーレスだった。確かにニーナの言っていることは正しいけれど……ニーナはそんなことを言っていたの？ なんだか、ニーナへの信頼が薄れていきそうな事態だった。
