鏡
私はいつも通り歩いていた。白い猫も隣で歩く。
少し高い丘の上、四角い何かが見えた。
イルカがやってきて言う。「あの鏡は僕の世界だ」と。
丘を登り、それを見る。それはイルカと同じ水色でシンプルな縁の、薄い鏡だった。
金魚がやってきてその鏡を覗く。鏡の中の金魚はひれが大きく、より鮮やかだった。
金魚は満足そうに去っていく。
他の金魚がやってきて鏡を覗く。鏡の中の金魚は透けていて、中身が黒かった。
金魚は楽しそうにイルカと踊り、その後去っていった。
私は鏡を覗きたかった。でも、猫が私のスカートの裾を噛んで引っ張って、私をとどめる。
イルカと金魚たちは楽しそうだ。鏡も気になる。でも、猫は私を止める。
また他の金魚がやってきて鏡を覗く。鏡の中の金魚はぴょんぴょん飛び跳ねていた。
金魚はくつくつと音をたてる。
私は思わず一歩、鏡に向けて踏み出した。
猫の牙がスカートの裾から外れ、猫は勢い余って何歩か後ろに下がり、こけそうになる。
私ははっとしてそちらを見る。
猫は私を見つめて、それから隣に来た。
私は鏡の方へ歩く。猫も隣で歩く。
私は気楽さを装って鏡を覗いた。猫と一緒に。
すると、鏡の中には金魚が一匹、佇んでいた。なんの変哲もない、至って普通の金魚だ。
猫は鏡の匂いを嗅いでいる。
そこへイルカがやってきて誇らしげに胸を張った。
私はそんなイルカを見て、その後、イルカをじっと見つめる猫を見た。
それから私は、イルカに向けた笑みを作った。
私は鏡とイルカに背を向けて歩き出す。隣にはいつもと同じように猫が歩いている。
いつもと変わらない、毎日だ。