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一話

「はーい。それじゃあ、銅次くんをこのクラスから追放したいと思いま~す」


 中学校の教室。

 昼休み。

 給食を終え、教師が去ったことを確認した生里なまり 継之丞つぎのすけは、待ってましたと勢いよく教壇に駆けあがり、俺の追放を宣言した。

 生里は至福と邪悪が入り混じる歪んだ笑みで俺を差す。


 生里の言葉にクラスのあちこちで笑いが生まれる。それもそのはず。生里はこのクラスに置けるスクールカーストの頂点。取り巻きの男子や生里を好きな女子達は、何をしようと生里の味方だ。


 しかし、何故、そんな男が俺を追放するのだろうか? 

 って、いうか、追放ってなんだよ。

 疑問に満ちた脳の整理がつかぬ内に生里が更に表情を歪めた。


「なんで、自分が追放されるか分かってますか~?」


「な、なにかな?」


 俺はなるべく相手を怒らせぬよう、顔に笑顔を張り付けた。これは俺がこの14年間で身に着けた処世術だ。笑みを引き付けて下手に出れば、人は誰も相手にしない。

 だが、俺はこの時、気付いていなかった。

 そうやって生きてきて、今に至っているということを。


「その態度なんだよねぇ。話しかけてもいつも分かりやすい愛想笑い。しかも、今どき中学二年生になってもスマホも持ってない。だから、知らないだろうな。これはクラスの総意だってことを」


 なるほど……。このクラスで今日の出来事を知らないのは俺だけだったのか。クラスのグループがあることを知らない俺は、孤独にさせるには打って付けた。 


 生里が教壇を叩いて笑う。

 いつの間にか彼の取り巻き達も教壇に登っていた。

 ……。

 追放って、まあ、恐らく孤立させることだろうな……。


 生里は俺がスマホを持ってないから追放すると言うが、俺にはどう考えても別の理由しか思い付かない。

 それは俺の双子の兄――金時かねとき 銀壱ぎんいちだ。

 生里をクラスのトップとするならば、銀壱は学年のトップ。成績優秀、スポーツ万能。しかも、おまけに生徒会。更にさらにおまけを付け加えるならば、銀壱は一学年上の生徒会長と付き合っていた。生里が生徒会長を狙っていたともどこかで聞いたような……。


 俺はそっと真実を飲み込んだ。相談もされてないのに、他人の恋愛に口を出すのは野暮だ。例え自分が犠牲になろうとも――。

 なんて、本当は口に出す勇気もないだけなんだけど。

 俺は頼りない笑みを浮かべるのが精一杯だ。


「というわけで、今日から銅次くんはいない者として扱いま~す」


 そこから俺の追放という名の『無視』は始まった。

 

 例えば体育の授業。二人一組を作ってくれと言われば、俺が余るようになった。俺と組むことになりそうな状況になると、決まってそいつの体調が悪くなる。可哀そうなことに、そうなるのは俺と同じカースト最底辺。生里達の成績には一切関わらない。


 例えば教室でのプリント回収。俺達の学校ではプリントを回収するときは、一番後ろの席に座る生徒が回収することになっている。そして、俺は生里達がいる列の最後。彼らは俺に机に振れて欲しくないのか、わざと机をずらすと、床にプリントを落とす。プリントを拾う俺に「汚ねぇな」と呟くのがお決まりだった。

虐めは実話です。

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