スキルドレイン!不遇スキルは全て俺の物!便利過ぎて勇者ご一行に重宝される。
「あなたは真の仲間じゃないわ」
「そ、そんな…」
勇者様に真の仲間じゃない宣言される男。
「くそ!こうなったらこのスキルで見返してやる!」
「そうはいかないんだなーこれが」
俺はそいつの額に手を当てるとこう唱えた。
「スキルドレイン!」
俺の手が怪しく光る
「ほう、あんたかなり高位のヒーラーらしいな」
「お、お前、俺に何をした!?」
「こうしたのさ!」
俺はそいつの顔を思いっ切り殴った。
「さあ、お得意の回復魔法で直してみな」
「く、ヒール!」
スキルドレインされた男は回復呪文を唱えるが殴られた傷は癒えない。
「くくく、お探しの呪文はこれかい?ヒール!」
男が呪文を唱えると男だけでなく周囲の勇者一行まで巻き込んで大幅に回復した。
更に周囲の全方位索敵まで行い勇者に報告する。
「勇者殿、あそこの谷にゴブリンの群れが隠れていやすぜ」
「よし、皆警戒よ!」
勇者は皆に臨戦態勢を取らせる。
「よくやったわドンヒュー、助かったぞ」
「いえいえ、勇者様のお役に立てて光栄です」
自分と同じ真の仲間じゃないはずなのに感謝される男、ドンヒュー。
彼は元ヒーラーの彼に向き合うとこう告げた。
「あっしの様に要領よくやらないと、そりゃあ追放もされますぜ」
元ヒーラーは自分の過去を振り返る。
そういえば索敵も回復も全てタイミングは勇者任せだった。
言われた事しかしてこなかった指示待ち人間だったのだ。
「おっと、敵の攻撃魔法がきましたぜ。ここはあっしにお任せを」
ドンヒューは勇者一行の前に立つと攻撃魔法を一身に引き受けた。
高い防御力と体力を併せ持つタンクのスキルのおかげだ。
無論これもドレインしたスキルである。
「武器が壊れかけてやすね、あっしが直しやしょう」
「ええ、助かるわ」
「ウェポンクラフト!(武具錬成)」
ドンヒューがそう叫ぶと刃こぼれした勇者の武器が新品同様に変貌する。
更にドンヒューは他のパーティーメンバーの装備もチェックし念入りに修復した。
「助かったぜ、ドン」
戦士の一人がドンヒューに礼を言う。
ヒーラーの男には生涯一度も掛けて貰えなかった言葉だ。
「回復薬がなくなりそうでやんすね。さっそくこしらえやしょう、アイテムクラフト!(道具錬成)」
ドンの魔力も無限ではない。
回復薬の補充もドンの立派な役目であった。
「なぜこうも扱いが違う、そんな目であっしを見てやすね」
ヒーラーの男は納得いかないと無言で頷く。
何故ならこの男がしているのは巷で不遇職と言われている落ちこぼれの仕事と世間で見られている所業だからだ。
「勇者様達はチートな力もなく前線で命を懸けていらっしゃいますよね?それに比べあっしらはどうです?」
言われてみるとそうだ。
不遇職はサポ―ト職が多く前線に出る事は無いし、あってもチート力に守られて安全である。
だから前線メンバーに気付いて貰う為にも積極的な自己アピールが必要なのであった。
「おっと獣人の娘ですか。魔物使いのスキルを持つあっしの出番ですね」
ドンは元ヒーラーに軽く手を振ると前線に躍り出た。
ドンの力で能力を奪われた者は「持たざる者」としてこの厳しい世の中を生きていかなければならない。
一方要領の良さと積極性、奪った不遇職のスキルの数々を活かしたドンは勇者御一行に重宝されることになった。
追放されて「もう遅い」とか「ざまぁ」とか「スローライフ」とか開き直る前に自身の生き方を見直してみませんか?
あなたのやり方次第では「真の仲間」になれるやもしれませんよ?