その名はリリィ
コンコン
部屋につくとルシーがノックしアンに声をかけた。
「奥様、失礼致します。旦那様をお連れしましたので入ってもよろしいでしょうか?」
すると中からアンの声が聞こえた。
「どうぞ。」
中に入ると医者とアン、そしてアンの腕の中に子供がいた。
「大変元気で可愛らしい女の子ですよ。」
医者が微笑んで声をかけてくれる。
「先生、世話になったな。」
「いえ、領主様のお子様を産む手伝いをさせていただいて光栄でした。現在母子ともに健康です。ひとまずわたしは家に戻らさせていただきます。明日から1週間程は往診に来させていただきますのでよろしくお願いします。」
「ああ、明日からもよろしく頼む。」
「はい、それでは領主様、奥様失礼致します。」
頭を下げて医者は帰っていった。
「アン。大事ないか??長い時間頑張ってくれたな。」
ウィーンは泣きそうになるのをなんとかこらえ、目元を潤ませながらアンに声をかける。
「あらあら、貴方ったらおかしな顔だわ。ほら、こっちへ来て。」
穏やかに笑いながらアンがウィーンに近くによるよう声をかける。
ウィーンはアンに近寄り、アンの腕の中にいる子供を覗き込んだ。
「見て。とってもかわいいでしょう?目元なんて貴方にそっくりじゃないかしら?」
「ああ、すごくかわいいな!!でもフワフワな髪や小さな鼻は君にそっくりだ!!なぁロゼット!ルシー!」
「そうですね、大変お可愛らしいです。」
「ええ、本当です!旦那様と奥様のいいとこどりです!」
「ふふっ、ほんと?だったら嬉しいわ。ねぇウィーン、抱っこしてみる?」
「いいのか?」
「もちろんよ。」
おそるおそるあかちゃんを抱える。
「うわ!!ふにゃふにゃだな!!小さくて力を入れるのがの怖いぞ!…でもずっと抱えていたい気もするな」
「大事に育てていきましょうね貴方。ロゼットとルシーも協力してちょうだいね。」
ほんわりと微笑むアン。
「もちろんです奥様!!立派な淑女にしてみせます!」
ハキハキとルシーが答え、ロゼットもしっかり頷いている。
「ところでアン、名前はどうする?俺もな産まれる前から色々とな、考えていたんだが!」
嬉々としてウィーンが告げようとするとアンがスパッと答える。
「リリィです。」
「あ、あの、俺も…!」
「リリィです。」
「あ、う、はい…。リリィか!!いい名前だ!!きっと名前にあった子供に育つだろう!!はっはっはっはっは!涙」
いつもは穏やかなアンだが決定的なことではいつも敵わないウィーンであった。
まぁ切り替えが早いのも彼の良いところなのでいつも特に問題にならないのだが。