プロローグ
今思えばなんの変哲も無い人生だったように思う。
仲の良い父母、少し怖い祖母と私に甘い祖父、それから8人もいた兄弟の末っ子として暮らしていた私。
8人と言うと孫には驚かれてしまうが当時はごく普通のことで、私の周りもそのような家庭ばかりだった。
戦時中は働き手が欲しい、老後の世話をしてもらうためなどの理由でとにかく兄弟が多かった。
末っ子として産まれた私は、皆んなにかわいがられ甘やかされていたと我ながら思う。
1番辛かった事と言えば戦時中だったため、ご飯をお腹いっぱい食べられなかったことだろうか。
それでも私は末っ子だったので他の家族よりも沢山譲ってもらって食べていたのだけれど。
そんな辛さも子供の頃だけで戦後は右肩上がりしていく人生だったので辛かったことなどほとんど忘れてしまった。
19歳の時にお見合いしてそのままお父さんと結婚。3人の子供に恵まれた。そして今では7人の孫、2人のひ孫がいる83歳のおばあちゃんだ。
つい先日肺炎にかかってしまい入院中の身だが、体力の低下もあり症状が悪化。改善は難しいだろう。
長く患うのも嫌だし、お父さんには昨年先立たれて寂しく思っていたところなのでまぁこれでよしと言うところです。
お父さん、私ももう少ししたらあなたのところに行くことになりそうです。
「お母さん!!」
「おばあちゃん…」
ああ、みんなの声が聞こえる。
けれどもうお別れね、とっても幸せな人生だったわ。
ありがとう。
声に出してお別れが言えないことが残念だけれど、もしまた生まれ変わったとしてもこんな人生が送りたいものだわね。