幕間:ふうきのおしごとっ☆2
持田弟登場回タイトルはもう全部これでいいや(考えるのをあきらめた)
―――どいつもこいつも顔で判断しやがって。
「…っていう心の声がつい出ちまったんだ」
すまん、と謝る持田に、卓磨は慄く。
「…そんなに判断基準顔なの、この学校……」
人の美醜を識別できない卓磨にとって、それは死刑宣告に等しい。
「…おれ、卒業まで五体満足でいられるかなあ…」
クラスメイト達から散々言われてはいるが、正直クラスメイトが優しいので実感は持てていない卓磨である。
「…顔見知り以外と迂闊に喋らなきゃ問題はねえ。」
「…おれ結構お喋りなんだよねえ…」
「…まあ、最悪風紀がいるから」
「…風紀?」
卓磨のいた中学には、風紀委員会は存在しておらず、ピンと来ない。
「ざっくり言えば、喧嘩とか虐めの仲裁組織って感じだな。だからもし苛められたりしたら、風紀に言えばまあ、大体はどうにかなる」
「それは助かるけど、どうやって連絡するの?」
「…悪い、引き止めた本題がそれなんだわ」
そういって、持田は携帯電話を取り出した。
「持田はガラケー派か」
「いや、支給品。風紀なんだわ、俺。」
「…ほう?」
風紀はガラケーで連絡を取り合うのか、とどうでもいいことを考えていると、
「だから、この番号登録しとけ。んで、何かあればかけろ。授業中でも、風紀の呼び出しは可能だからな。」
何故か顔を顰めながら、携帯の番号を見せてくる持田。
「…ああ、なるほど。制裁とかされそうになったら持田が助けに来てくれると。」
「なるべくな」
ようやく合点がいった卓磨は、自分の携帯電話を取り出す。
「スマホか」
「俺はガラケーで十分だったんだけど、友達がスマホにしてすらいむ?入れろってうるさくて」
「…“SKYLIP”だろ」
“SKYLIP”とは、スマートフォン向けアプリで、ざっくりいうと複数人数で電話やチャットが出来るものであり、卓磨が全寮制の高校に進学するのを機に、中学の同級生たちが絶対に入れろと強要してきた代物である。
「…お前、通知すげーことになってんぞ?」
“SKYLIP”は、加入しているチャットが更新されるとお知らせが届く。
その件数が見えた持田がいいのか?と聞いてくる。
「…なんか、さっき出来た友達の写真送ったらすごいことになって」
「誰の写真取ったんだよ?」
「知ってる?中村と、咲田と、筑井と、徳永っていうんだけど」
「…親衛隊持ちと親衛隊が混じってんじゃねえか。」
てかなんでそんな面子で写真取ったし。
風紀委員の持田からすると、一般生徒と親衛隊持ちと親衛隊が仲良くしている図が思い浮かばない。筑井の親衛隊が穏健派とはいえ、あまりにも暢気である。
「なんか、俺の新しい友達を俺らがチェックしてやるとか煩いから協力してもらったんだけど、筑井と徳永の写真が女子ウケすごくて」
とげんなりした様子の卓磨。
「特に、徳永が女子に人気のアイドルグループの奴に似てるから、それでもっと写真よこせって」
「…筑井じゃないのか」
「筑井もウケてはいるんだけど、それ以上に徳永フィーバー。徳永も満更じゃなさそうだったからいいけど」
言いながら、持田の風紀専用携帯の番号を登録する卓磨。その手際はお世辞にもいいとは言えず、スマホを使い慣れていないことが非常によく分かる手つきであった。
「…よし、これで勝つる…!」
「何と戦うんだお前は」
「え、いじめっ子と?」
「…戦わずに俺を呼べという話だよ…」
持田は思わず頭を抱えた。
風紀委員会:基本的にノーマル男子しかいないため、男同士の恋愛拗らせトラブルはどういう感情で処理すればいいかわからない。年に数回、支給携帯に告白の電話がかかってくる奴がいる。