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そういえばルームメイト

そういえば忘れていたルームメイトの話。


その日の放課後のことである。


「そういえば、関野ってルームメイト誰なの?」

色々衝撃がすごくて聞きそびれてたけど、と中村に言われ、ああそういえばと帰り支度をしながら卓磨が答える。

「2-Aの持田って奴だよ。」

それを聞いた中村と咲田はとても微妙な表情になった。

ちなみに筑井は親衛隊とのお茶会に、徳永は親衛隊の会議に向かっており既に教室にいない。


「知ってんの?持田も中村たちのこと知ってるみたいだったけど」

「俺ら、っていうか殆どの奴が中等部からの持ち上がりだからな。」

大体顔と名前は分かる、と中村。

「持田って、風紀のでしょ?」

咲田が聞いてくる。

「うん、そういってた。風紀電話の番号も聞いた。」

これで制裁されても大丈夫!と無駄にきりっとしていうと、中村と咲田は更に変な顔をする。

「どったのふたりとも。顔変だけど」

「美醜の分からん奴に変とは言われたくねえ…!

…いや、持田って、風紀用だろうがプライベート用だろうが、基本的に教えないって聞いたんだけどなあ…」

「え、なんでまた」


中等部からの奴はみんな知ってるんだが、と前置きした上で、中村が話してくれる。


「あいつ、3つ上に兄ちゃんがいるんだよ。ものすっごいイケメンの」

「いけめんの」

「おう。で、持田は中等部時代から風紀やってたんだけど、あまりにも兄貴とツナギを取ってほしいっつう輩からの電話ばかりに切れて、風紀電話使わなくなったんだと」

だから意外だったんだけど、と言葉を切った中村は、卓磨をまじまじと見つめる。

「イケメンがわからん話はしたの?」

「おう。最初威嚇されたけど、その話したら何度も謝られた」

「なるほど、害にならないと思われたのか」

咲田はうんうんと何か納得している。

「ほんとびっくりするくらい顔判定な、この学校…」

「まあ、持田の兄に関しては、教師側もしょうがないよねってなるくらいの顔だったからねえ」

そういうと咲田は自分の鞄を漁り、あるアルバムを見せてくれた。

「これが持田のお兄さんだよ」

そこには満面の笑みを浮かべた男の写真。

「うわあ胡散臭い笑顔」

「…まあ、関野はそうか…」

「いや、胡散臭いっしょこれは」

「…これが近年トップクラスのイケメンなんだよ…」

ほー、と気のない言葉を返した卓磨だったが、ふとあることに気付いた。

「胡散臭い笑顔は置いといて、持田とそっくりだね」

輪郭やら、鼻筋やら、卓磨の目から見ればルームメイトとなった持田と、とてもよく似ている。

目元だけ少し違うが、なるほど兄弟なだけある。

うんうんと頷いていると、咲田からとても引きつった声が聞こえた。

「…ええー、ほんとに…?関野の目を通すとそっくり兄弟になっちゃうのかあ…」

「…持田には絶対にいうなよ、あいつのコンプレックスだから」

中村に言われて、卓磨は首を捻る。

「持田の兄はイケメン」

「うん」

「持田と兄は似てる」

「う、うーん?」

「イコール、持田はイケメン。…となるはずなんだけど…」

2人の反応をみるに、どうやら違うらしい。

こういうとき、常人と同じように反応できないのがもどかしい、と卓磨は思う。

一度、友人の女子とテレビに出ていたアイドルが似ていると述べたところ、ファンを敵に回すから二度と口にするなと凄まれたこともあり、美形とそうでないのを似ていると評すことは褒めでもなんでもないということは、なんとなく理解してはいる。

理解してはいるが、じゃあ体感としてあるかというとあやしい。卓磨の友人たちは卓磨について理解しているし、今まで卓磨の周りに外見至上主義な人間はいなかったのだ。

「…あー、あのな、関野」

中村は、悪口じゃねえからな?と前置きしてから卓磨に語る。

「持田自身、不細工なわけじゃねえよ?ただ、俺たちから見るとな、兄貴の方は超絶イケメンで、持田は“そうじゃない”んだ。それは持田も理解してる。で、この学校だと、“兄貴はイケメンなのに”と言われてしまうんだ。」

それでな、と続ける中村。

「関野が悪いわけじゃないんだけど、この学校で持田と兄貴が似てるとは口にしない方がいい。あいつの兄貴、いまだに根強いファンがいて、持田が弟なのが気に食わないっつって、持田に嫌がらせしたりしてんのよ。」

「…はあ?」

「謎理論過ぎてさっぱり理解できないんだが、そういう馬鹿がいるんだよ。」

美形か否かで判断されるのもよく理解できないのに、美形の弟だからと嫌がらせする意味もさっぱりわからない。

「…宇宙人かな?」

「ああ、話も通じねえし、そう思っといて問題ねえよ。」

「俺も、持田のお兄さんの写真持ってるってだけでちょこちょこ嫌がらせうけるしねえ…」

咲田が苦虫を噛み潰したようにいう。

「え、大丈夫なん?」

「ああ、うん、定期的に下駄箱に呪いの手紙入れられてるとかそんなんだから、実害はないよ」

「…でも、やなんでしょ?」

「だいじょぶだいじょぶ、関野がそんな顔するほどのあれじゃないから」

思った以上に真剣に受け止める卓磨に、咲田はごまかすように笑う。

「あの宇宙人の行動には割かしみんな困ってて、先生も対応してくれてるし、何よりこうやって愚痴れるし。ひとりで抱え込んでるわけじゃないから。」

「…なるほど、おれも相談乗るから、言ってな?」

「ありがとね。関野も困ったことがあったらすぐ相談してよ?」

「おう、咲田も中村もめっちゃ頼りにしてます。」

真顔で言い切る卓磨に、思わず笑う咲田と中村だった。


持田(兄):超絶美形。笑顔は胡散臭い。

宇宙人:地球外生命体。手を合わせて見つめてみても、愛し合えないし話もできないし空気も読めない。

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