あなたは美形ですか?YES →NO
前途多難な学園生活の始まり
「よし、分かった。」
一通りの学内イケメン写真を卓磨に見せたりなんだりしたあと、中村は重々しく頷いた。
「お前もうひとりで校内うろつくな」
「えー」
「えーじゃない。うちのクラスの奴でさえまともに識別できないような奴、ひとりでうろつかせるとか、すぐ制裁されそうで心臓に悪い」
そう。
卓磨は結局、美形写真を見せられても殆ど美形と認識できなかった。
そればかりか、クラスメイトに協力を仰ぎ、それぞれを美形か否かの判定をしてみたものの、二者択一にも関わらず正答率は半分以下という記録をたたき出していたのだった。
「だね、まさかここまでとは…」
写真を見せてくれていた咲田が顔を引きつらせている。写真部に所属し、人よりも審美眼が厳しい咲田からすると、卓磨の感性はちょっと信じがたいものがあった。
「しょーがねーじゃんー」
卓磨はむくれる。
「目がでかいのも細いのも鼻が高いのも低いのも唇厚いのも薄いのも全部美形じゃん。これが美形ですっていう特徴ないじゃん。」
そんなんわかんねえよ、と卓磨。
「…まあ、ウチの学校美形のバリエーション豊富だからな…」
「…とりあえず、俺の親衛隊には話しておくよ」
イケメン判定に付き合ってくれたイケメン、筑井が苦笑いしながら言う。まさか、幼少期からイケメンともてはやされた己をみて、「美形じゃない」と自信満々に断定されるとは思わなかった。
「…筑井くんは親衛隊がいるの?」
「うん、まあ、一応?」
そういうと、卓磨はばっと中村を振り向く。
「…ねえ、これもう制裁対象になる感じ?思いっくそ話しかけたけど」
「他の美形ならアウトだけど、筑井のとこは割とおとなしいから、筑井が話通してくれれば大丈夫だ」
中村が答えると、卓磨はぺしょ、と机の上でつぶれた。
「…むりだ、この程度の会話で制裁されるなんて…俺一生この学園ひとりで歩けないじゃん…」
「…とりあえず、僕のコレクションあげるから、この中の顔だけでも覚えとくといいよ」
「…ありがとう咲田くん…」
「…とりあえず、僕も所属の親衛隊に話はしとくよ。どこまで効果あるかはわかんないけどね」
やはり判定に付き合ってくれた、生徒会の親衛隊に所属する徳永が呆れ半分にいう。美形が識別できないとか、こいつ人生の半分は損してるなと思いつつ。
つぶれていた卓磨はちらりと徳永を見上げる。
そしてまた中村を見る。
「…中村くん」
「どうした関野くん」
「徳永くんはどうしてセーフなのだろうか」
女子が騒いでいたアイドルととても似ているのに。
「…関野くんに悲しいお知らせだ」
「…なんだろうか。既に悲しみでいっぱいなんだが」
「…実は、話しかけてもOKな美形もいるんだ」
「………Oh」
転校したい。
ぺしょりとつぶれたまま、卓磨は小さく呟いた。
入学初日のことだった。
筑井:幼少期からイケメンと持て囃されてきたエリートイケメン。爬虫類マニア。
徳永:美しいものが大好きなドルオタ。仲間募集中。