まずは学園に慣れましょう
友達100人計画始動
卓磨は昔から、人と仲良くなることが異常に上手かった。
別段媚びた覚えも、気を引くような真似をした覚えもない。
それでも、どんな人間の懐にもするりと入り込み、あっという間に仲良くなった。
勿論、嫌われることもあるが、本人は好かれることがありゃ嫌われることもあるよね、と特に気にしていない。
問題らしい問題も、年齢も性別も問わずに仲良くなってしまうため、女の子との仲が友人どまりにしかならないことくらいである。割と真剣な悩みではあったが。
前述の通り、親衛隊という存在のおかげで、見目麗しい生徒には友人と呼べるものが出来難かった。
そして何より、その生徒たちは、普通の友人という存在を諦めていた。
そんな中、外部入学生として高等部にやってきたのが、関野卓磨だった。
「関野卓磨っす。中学までふっつーの学校だったんで、ここのルールとかよく分からんので教えてもらえると有難いっす」
外部生ということでひとりだけ自己紹介させられた卓磨のそれは、とてもやる気がなかった。
やる気ねえなあと担任に突っ込まれると、いや俺的にはやる気マックス、とやっぱりやる気なさそうに答えて、イケメンだけど気難しいと言われる担任の爆笑を買い、驚きをもってクラスに迎えられた。
入学した卓磨が最初にしたことは、こんな質問だった。
「なんか、話しかけていい人種といけない人種がいるって聞いたんだけど、どう区別すんの?」
「基本、美形はアウトだな。親衛隊に制裁される。」
休み時間、隣に座っていた生徒にそう尋ねて、返ってきた答えに卓磨は眉間に皺を寄せた。
「…ひっじょーに困ったことにですね、中村くん」
「どうかしましたか関野くん」
「ノリいいね中村くん。…いやさあ、」
おれ、ヒトの顔の美醜が分からないんだよね。
その言葉を聞いたお隣の中村くんは、つい大声になった。
「美醜が分からないってどういうことかね関野くん?!」
「えっまだそのノリでいくのかね中村くん」
「いいから答えろ!」
「いやー、昔っからそれでよく怒られるんだけどさあ」
曰く、「美人、可愛い、かっこいい、男前、等々と言われる人種と、それ以外の人種にどういった違いがあるのかよく分からない」
らしい。
「目がデカいなーとか、肌がきれいだなーとは思うんだが、可愛いかと聞かれると何が?と思ってしまうんだよなあ」
そんでよく女子に怒られてた、という卓磨。
「男同士でさ、何組の誰某が可愛いだの美人だのって話になっても、いっつも俺ついてけなくてさあ…」
「…なんてこったこの学園じゃ死活問題だぞ関野くん」
「おおうマジかどうしよう中村くん」
「うーん…あ、おい咲田お前うちの学校の美形の写真一通り持ってなかったか?」
「え、持ってるけど」
「関野くんに見せてやってくんねえ?」
中村がそういうと、了承して手にファイルを持って近づいてくる男子生徒。
眼鏡をかけた、ヒトのよさそうな生徒だ。
「ありがとう咲田くんとやら。…あ、今更だけど中村くんも咲田くんも話しかけて大丈夫な人種?」
ふと不安になって問うと、中村が目を大きくかっ開いた。
「…俺と咲田にそう聞くってことは、本当に分かってねえんだな…」
「なになに、関野くんは俺らが美形にでも見えるの?」
深刻そうに呟く中村と、面白そうに笑う咲田。
「いや、美形とそうじゃないのの区別ができないんだと」
「え、マジで?」
「大マジ。」
中村が答えると、咲田は手にしていたファイルをめくって、卓磨に見せてきた。
「じゃあ、この人どう思う?」
そこにいたのは、金色の髪の、顰め面した生徒。
「金髪ってありなんだ。」
「じゃねーよ。イケメンだろ?」
「これをイケメンというのか」
「じゃあこっちは?」
次に見せられたのは、長い髪を一つに束ねて、薄く微笑む生徒。
「長髪もありなのか。」
「だからそうじゃねえ。」
「でもさっきの人と顔の系統違うじゃん」
「違う系統のイケメンです。」
「…じゃあこっちはどう?」
見せられたのは、顔が小さくて目が妙に大きい生徒。
「あ、これならわかる!」
「おお!」
「女子がよくイケメンって騒いでた男と顔が似てるから!」
「そんな理由かよ。」
おい、とつい裏拳ツッコミをいれた中村だった。
中村くん:卓磨の隣席。とてもノリと面倒見が良い。長男。
咲田くん:中村くんと仲良し。写真部。美形写真コレクションは趣味。彼女持ち。