第24話 『発端』
あはははは! やった、やった! 日村秋月が行方不明!! ようやく私の前からいなくなったわ!
元はといえば、あいつの容姿が良すぎたからいけなかったのよ。凡人の顔だったら、私もこんなに悩まずに済んだのに。私の計画を邪魔しやがって……。
私はこの学校で、すべての人間を虜にするつもりだったわ。男も女も、年上も教師すらも! 誰もが私の美しさの前にひれ伏し、私は美貌の頂点に君臨するはずだった。
だけど配属された同じクラスには、あの日村秋月がいた。運動神経抜群、容姿端麗、成績優秀、人当たり良好。彼はすべてにおいて完璧だった。あろうことか、もしかしたら私の唯一の取り柄である容姿までも上を行ってしまうくらいに!
もちろん男女の違いはあるため、男子生徒は日村なんかには目もくれず、ただ私だけに目と心を奪われていたのだけれど、女子まではそうはいかなかった。女子生徒は私の美しさを尊敬し、そして異性である日村を好きになった。
だけどそれじゃあ駄目なのだ。私の欲望は満たされない。たとえ同姓であろうと、私の美しさを敬い、そして私を好きにならねばならないのよ!
それが私の欲望。
人間は誰しも、私の顔に惚れなければならない。
すべての人間は、私だけを見つめていなければならない。
それが唯一の、そして最大なる私の望み!
だから許せなかった。私よりも注目の的となっている日村秋月のことが。
要は目立たなければいいのだ。皆から中傷されればいいのだ。いなくなればいいのだ。
このクラスから。この学校から。この世から。
だから私は計画した。金本浩介が私に告白してきた時に、日村と仲が良かったことをぼんやりと思い出したのだ。
そして明美から金本が嫉妬深いことも聞き出し、実行に移す。
金本を振った直後、私はまったく好きでもない日村に告白した。結果はオッケー。ま、当然だけど。
私と日村が付き合うことによって、金本の嫉妬心を煽る。そうすれば、どんな愚鈍な男でも、さすがに親友という間柄に亀裂が入るでしょうね。私はそれを狙ってやった。
幼馴染の対立。もしかしたら暴力沙汰になるかもしれない。公然で殴り合いの喧嘩にでもなってくれれば、謹慎はま逃れないでしょう。そうなれば日村を一時的に遠ざけられると同時に、周囲からの評価もぐっと下がるでしょうね。
事がどのように転ぼうと、私にとってメリットは数あれどデメリットなどほとんどない。しいて言えば、日村と恋人となる汚名を着せられるくらいか。ま、これも日村を陥れるためには喜んで受け入れようじゃない。
そしてまさかの出来事が起こった。
金本が殺されたのだ。
私はすぐに日村が犯人だとわかった。もっと別の場所ならばともかく、学校の中で、しかも真夜中に起こった殺人。金本がその時間帯に学校で何をしていたのか、さらに私が計画した感情の揺さぶりを考慮した結果、犯人は日村しかいないと確信していた。
まさかそんなところにまで発展するなんて……。
でもこれはチャンスだ。殺された金本には申し訳ないと思うも、しかし私の計画の下積みの為に死ねたんだから、喜んでいることでしょう。特に私を完璧に好いていた金本ならね。
犯人は日村。ならばそれが発覚すれば、日村を永遠にブタ箱へとぶちこめるではないか!
私は考えた。どうやれば日村が犯人と、警察が突き止めてくれる?
私の足りない頭では警察に頼ることくらいしかできないのもわかっているけれど、それでも時間が経過するにつれて捜査は難航するばかり。
警察は本当に日村を捕まえてくれるのか。そう疑い始め、悩み続け、焦り疲れた頃……、
明美が失踪した。
続いて日村も姿を消した。
二人は未だに姿を現さない。家からも捜索願いが出されているらしい。
私としても二人が行方不明になった理由はわからない。
けれど――、
ふふふふふ、あははははははは!
結局のところ、目的は達成された! 私の計画がどこでどのように作用したかはまったく不明だけど、日村秋月がいなくなった!
これで私が一番よ! 私こそが美の頂点へ君臨するの!
あはは、楽しい! 日村のいない学校生活を想像するのは、楽しすぎる!
これからが私の美の天下なのよ!
あは、あは、あはははははははははははははははは××××××××××!!!!
――美シサトハ支配ナリ。




