第90話 罪を犯した者の末路
「徳本さん、呼びました? 何か用ですか?」
イゴールに呼ばれて一人の女性が姿を現す。
「ああ、松来さん、今大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です」
松来と呼ばれた女性は、特に問題なく答える。
「イゴール、彼女は、誰なんだ?」
レイアは、イゴールに聞く。
「ああ、彼女は、松来さんと言って私と一緒に暮らしている人です」
「僕達がいた時には、いなかったが」
「ええ、その時には、一人旅をしていたんですよ、彼女も色々あるので」
「そうか、ところで徳本って?」
「私が人間界で使っている偽名です」
「そうか、それで彼女を呼んだのは、何故だ?」
「今に、わかりますよ、松来さん申し訳ないがいつものをやってもらって良いですか?」
「いつものって・・・・・・ああ、アレですね」
松来は、ベールを見て何かを理解した。
「それで、その魔族は、どんな罪を犯したのですか?」
「罪だと!? 貴様誰にむ「黙りなさい」 ッ!!?」
ベールは、反論しようとするが松来の一言で黙る。
「で、罪は、何ですか?」
「フィオナさん、さっき私にした説明を彼女に」
「は、はい」
フィオナは、松来に説明をする。
「なるほど、わかりました」
そして松来は、何かを取り出す。
その何かとは、一冊の本であった。
「罪人、ウィザード族のベール、あなたのした事は、多くの者を無理やり犯罪者にし仲の良い者を引き裂く、そしてそれを楽しみ、反省する気もない到底許される事では、ありません、よってあなたを三百年この本の中に封じ込めます」
「封じ込めるだと!? 私をか!? 何故だ!? ふざけるな!!」
「ふざけるも何も、あなたのした事が許される事では、ないからですよ」
ベールの怒声に松来は、平然と答える。
「ふざけるな!! たかが下等生物共の怒りの感情を増幅させただけで三百年だと!? バカげてる!!」
「三百年でも、短い方ですよ、本当なら五百年でも良かったのですから」
「何!?」
松来の言葉にベールは、驚く。
「五百年だと!? 何故私が!?」
「理由は、あなたが今朝子供達に魔法を掛けて大喧嘩させたことですよ」
「は?」
「ですから、先程そこのハーフエルフの彼女が説明した学校での出来事ですよ」
松来がベールを五百年にしようとした理由は、今朝レイアが止めた実里と花音の喧嘩についての事らしい。
「ふざけるな!! たかが下等生物のガキに魔法を掛けたくらいで」
「はあ? 何を言ってるんですか?」
松来は、怒りの籠った口調になっていた。
「あなた今何て言いました? たかが下等生物のガキ? ふざけないでくれませんか?」
「あー、これは、マズいですね、彼女の地雷を踏みましたね」
先程までベールに怒りを向けていたイゴールだが今は、ベールに憐れみを向けていた。
「良いですか? 子供は、純粋で穢れ無き存在、ましてや幼女ならもう穢れ無き天使、わかりますか? 天使ですよ!! そんな純粋な幼女達に悲しみの涙を流させたあなたを許すわけないでしょ!!」
松来は、途中から興奮したように言う。
「なあ、イゴール彼女は、どうしたんだ?」
「松来さんは、元の世界で醜い大人達をたくさん見てきたんですよ、醜い大人達によって純粋な子供達が、命を落としたり、変態な大人達の慰みものにされて穢れて壊れてしまったりなど、そう言った人間の醜い部分をたくさん見てきて、元の世界の人間達を見限ってこの人間界に来たそうです」
イゴールは、松来に何があったのかをレイアに説明する。
「そうか」
そう言ってレイアは、松来を見る。
「そうですよ、醜い大人も元は、純粋な子供だったのに醜い大人達を見て自分も醜い大人へとなっていく、そんな人をたくさん見てきて私は、だんだんわからなくなってきて・・・・・・」
「おい、大丈夫なのか?」
「まあ、彼女も酷く精神的に参っているので人間界で療養しているみたいな感じですね、一人旅に行ったのも自分を見直す良い機会だと思ったので私が薦めたんですよ」
「そうか、だがそろそろ」
「ええ、そうですね、松来さんそろそろ本題に入りましょう」
イゴールは、松来に言う。
「ハッ!! そうでしたでは、刑を執行します、罪人を三百年この本に封じ込めます」
「ま、待て!!」
「待てません」
松来は、問答無用で本を開く。
「ああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
ベールは、開いた本のページに吸い込まれていく。
「これで、罪人への刑は、終わりました、三百年自分のした事をよく考えて反省しなさい」
そう言って松来は、本を閉じるのだった。
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