第86話 戦闘に入る
「その魔力、魔法に長けたウィッチ族だろ?」
リズの前に男が姿を現す。
二十代位の男性と見ていいだろう。
「やはり、ウィザード族でしたか」
リズは、ため息交じりにそう嘆く。
「いかにも、私は、ウィザード族のベールと言う、以後お見知りおきを」
ベールと名乗ったウィザード族は、自己紹介をする。
「あなたも、魔王の娘を殺すように頼まれたのですか?」
「頼まれた? 何の事だ?」
ベールは、疑問を口にする。
「ですから、あなたも他の魔族のように頼まれて魔王の娘を殺しに来たのでは、ないのですか?」
「さっきから何を言っているのかわからないな、そうやって私を油断させるつもりだろうが、その手には、乗らないぞ」
ベールは、リズが何を言っているのか本当にわかっていないようだ。
「・・・・・・そうですか、では、もう一つお聞きしますが最近人間達が急に怒りが込み上げて犯罪に走ったりする事件が増えていますがそれは、あなたの魔法によるものですか?」
リズは、ベールに問う。
「いかにも、私が生み出した魔法で下等な人間達の感情を増幅させる実験をしていたが」
「そうですか」
「それにしても、この世界でウィッチ族に会えるとは、もはや運命だな」
「はい?」
リズは、こいつは、何を言ってるんだみたいな顔をする。
「見ると顔も中々のものだな、私の子を産むには、十分だろう光栄に思え私の子を産める事をな」
「・・・・・・ハア、あなたは、何を言っているのですか? ちなみに私は、もう結婚していて娘もいますよ」
「ふん、どうせ同じウィッチ族だろ? ならその女と貴様の娘も私の物にすればよい、これだけいれば我らウィザード族も増えていくだろう」
ベールは、高らかに言う。
「全く、あなた方ウィザード族は、そんなんだから私達は、あなた方から離れたのですよ」
リズは、呆れたように言う。
ウィッチ族は、元々ウィザード族と一緒だったが男の方がプライドが高く女をただ自分達の種族を増やす存在としか思わずしかも男を産まなければ、暴力を振るうなどと言った事が多くそれに耐えきれなくなった女性達は、彼らの元を離れ、新たにウィッチ族と言う種族として生きていく事になったのだ。
「こちらの気持ちも聞かず自分の勝手で無理やり犯し、さらに男でなければ許さず女を産んだら罵声や暴力を振るう、だから私達は、ウィッチ族として新たな種として生きていく事にしたのですよ」
「全く、勝手な事をしてくれたものだ、貴様ら女は、我々の子を産むためだけに存在するのに、勝手に離れていくとは、貴様らは、我々一族を滅ぼす気か?」
「その自分勝手さが嫌だから私達は、離れて行ったのですよ、なのにあなた方は、結婚をしていたウィッチ族を無理やり攫ったりして無理やり犯したりしたそうじゃないですか、私達をただの繁殖の道具としか見ていないあなた方などいっそ滅んでしまえば良いと思いますね」
「貴様!! 何て事を言うんだ!! 我らウィザード族が滅べば良いだと!?」
「ええ、そうですよ、と言っても同じウィザード族でも紳士的に振る舞う方達もおりますからね、私が知る限りでも二人います、一人目は、ウィザード族の魔王ゼルア様ですね、あの方は、とても紳士的なお方で他種族の者をすでに妻にしていますからね」
「ゼルアだと? あんなガキがウィザード族から出た魔王などと認める気はない!! しかも、同じ魔法に長けたウィッチ族では、なく他種族の者を女にするなどウィザード族の恥さらしが!!」
「そうそう、その高貴なウィザード族ですが、もう一人の方のウィザード族、我らが魔王レイア様の配下で部隊長の一人クロナですね、その彼が言ってましたよ、ウィザード族は、プライドが高いだけで、男を産む事にこだわるのは、単に女の方が男より魔法の質が高いからでそれが女は、ただ繁殖させる道具としか考えていない男共にとっては、屈辱しかないから罵声を言ったり暴力を振るったりする器の小さい集団だと、確かにそう思えますね」
リズは、馬鹿にしたかのような笑みを浮かべ、ベールを見る。
「貴様ぁ!! 私に対して何たる無礼な!! もういい!! 私の子を産む女にしようと思ったが、貴様のような女は、必要ない!! 私に無礼をした事を後悔する程辱めて、無様に殺してやる!!」
そう言ってベールは、攻撃魔法の態勢に入る。
「やれやれ、この程度の挑発ですぐ感情的になるとは、クロナの言う通り本当に器の小さい集団と言えますね」
リズは、呆れた様子でウィザード族との戦闘に入るのだった。
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