第85話 原因を潰す
本日二話目の投稿です。
学校の授業が終わり放課後になる。
「あ、お母さんが迎えに来た」
彩音の親が車で迎えに来たため彩音は車に向かって行く。
「今日からしばらくは皆で帰る事はできないな」
「仕方ないですよ、あのような事が起きた後ですから」
「皆、ごめんね」
「真理亜が謝る事など何もないさ」
真央の言葉に沙月と唯も頷く。
真理亜が誘拐された事件が起きたため学園側はしばらくの間生徒は親に送り迎えしてもらう事になったらしい。
「さっちゃん、お母さんがさっちゃんも一緒に乗せてくれるって」
「そうか、なんか悪いな」
「しょうがないよ、さっちゃんの家皆忙しいし行こう」
「じゃあ皆、また明日な」
「皆、バイバイ」
「うん、また明日」
「さようなら」
「また明日」
彩音と沙月は車に乗って帰って行く。
「あ、私の家の迎えが来た」
「私の所も来ましたね」
少しして真理亜と唯の家の迎えも来た。
「真央さんはどうするのですか?」
「僕はリズと帰るからリズの仕事が終わったらだな」
「じゃあ真央ちゃん、また明日」
「では真央さん、さようなら」
「ああ」
真理亜と唯も車に乗って帰って行った。
残った真央はリズの仕事が終わるまで待つのだった。
しばらくしてリズが来る。
「お待たせしました」
「そうか、なら行くぞ」
「はい」
二人はそのまま帰るのではなく学園の中に入って行くのだった。
~side 理事長室~
「それで、何故ここにいるのですか? レイア様?」
レイアとリズは理事長室に来ていた。
フィオナはここにいる理由を問う。
「フィオナ、今日僕のクラスで大喧嘩があった、とても仲良しの二人が急に怒りが込み上げてきたらしい」
「え? それって」
「はい、最近人間界で起きている事件にも似たようなものがありますよね、理事長」
「ええ、やるつもりはなかったのに急に怒りが込み上げたと」
「ああ、その原因がわかった」
「え?」
「おそらく、何者かに感情を操作されたのかも知れない」
「え!?」
フィオナは驚く。
「今回のケースと似たようなものが僕達の世界にもあった」
「私達の世界に同じような事が?」
「ああ、幼い頃から仲の良かった人間の男女がいたんだ、その二人は将来を誓い合うほどお互いを愛していた、だがそんなある日勇者が来た、そしたら何故か女の方がたった一日で勇者を愛し将来を誓い合った男に対してさんざん酷い事を言って婚約もなかった事にしたらしい」
「ちょっと待ってください、将来を誓い合うほど愛していた女性がたった一日で勇者に心変わりするなんて、おかしいですよ」
フィオナの疑問は尤もである。
「ああその通りだ、そしてその理由は勇者が魅了のスキルを持っていたからだ」
「スキルって、人間達が言っている魔法以外の特殊な力の事ですか?」
「そうだ、僕達色々な魔族が元々持っている能力のようなものを人間達はスキルと呼ぶらしいな、その勇者が持っていたスキル魅了は異性の者なら自分の思い通りに操る事ができるらしい、つまり男なら女、女なら男を操る事ができるようだ」
「なるほど、それならさっきの話も納得ですね・・・・・・ってまさか!?」
フィオナはここである事に気づいてしまう。
「そう、似ているだろ? 急に態度が変わったと言う点については」
「まさか、最近の事件は誰かが感情を操作して起こしたもの?」
「そうだ、真理亜を誘拐した犯人達が言っていた事からすると感情を操作されたと思う」
「では、スキルを持った人間が」
「いや、人間だとしたら何故子供から年寄りまでと幅広く使ったんだ、ましてや使った後何故そのままほっといたか、そう考えると使った奴は人間には興味がないと考えられる」
「人間に興味がないと言えば」
「おそらく魔族だろうな、人間を下等生物と見下しているんだからな」
「では、また真理亜さんを狙う者が」
「それはまだわからない、だがここ最近の騒動の原因はそいつの可能性が高い、これからそいつを見つけて捕らえるつもりだ、もし原因がそいつなら原因を潰しておかないとな」
「ですが、一体どうやって?」
「簡単だ、リズ」
「はい」
「探せるか?」
「もちろんです」
リズは自信満々に答える。
「喧嘩した生徒達を見てみましたが、わずかながら魔力が残っていました、相手を状態異常にする力を使う時には自身の魔力も使いますから相手に掛けた魔法などには自身の魔力がわずかに纏わりついているものなのです」
「そうなのですか?」
「ええ、ですがわずかな魔力なので人間には毒や麻痺などは症状として出ているからわかると思いますが洗脳や操作と言ったものは操られている側も自分達がそうとは思っていないと感じる系統の洗脳や操作もありますからね、周りからすれば態度が急に変わった位としか思わず、操られていると見抜く事ができるのは魔力を見る事ができる我々魔族やそう言った状態を見抜くスキルを持った者にしかわかりませんね」
人間と魔族では魔力の捉え方が違う。
人間は魔力を感じる事ができるが見る事はできない。
だが魔族は魔力を感じるだけではなくその魔力に敵意があるかそうでないかを感じる事もでき、さらに実態として見る事もできる。
これにより魔族それぞれの魔力が違うためどの種族の魔族なのかを判断する事もできるのだ。
「話は戻りますが見た時その魔力は人間の物ではなく魔族の物でした、それとアレは多分魔法によるものだと思います」
「魔法ですか? でも洗脳系や操作系の魔法など聞いた事もないのですが」
「ええ、ですから魔法に長けた種族が新たに生み出した魔法でしょう、魔力の感じからしてもう何の種族かは把握しています、後はその魔力の反応を辿れば良いだけです」
そう言ってリズは探索の魔法を発動する。
実里と花音に纏わりついていた魔力と同じ魔力を探すため魔力を上げかなり遠くの範囲まで調べる。
そして。
「見つけました」
「なら、早速行くか」
「レイア様、ここは私にお任せください、相手が魔法に長けた魔族なら私が適任かと、それにあの程度の雑魚、レイア様がわざわざ行くまでもありません」
「そうか、ならお前に任せるぞリズ」
「はい、お任せください」
そう言ってリズは転移の魔法を発動させその魔族のいる場所に向かうのだった。
「大丈夫なのですか?」
フィオナはレイアに問う。
「リズが問題ないと言っているなら問題ないさ、あいつは強いからな」
レイアはそう答えるのだった。
~side リズ~
「ここですか」
リズが転移した場所は誰もいない廃工場である。
「さてと、始めますか」
リズは結界の魔法を発動する。
その名の通り結界の魔法は周りに結界を貼る魔法である。
これにより外からの侵入を防ぎ中からは侵入者を外に逃がさなくする事ができる。
「もうここからは出られませんよ、おとなしく姿を見せたらどうなのですか? いるのはわかってますよ」
「へえ、面白い魔法だな、お前ウィッチ族だろ?」
そう言ってリズの前に男が姿を現すのだった。
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