第84話 魔王は確信する
「いや、アンタ何したんだよ!?」
静寂の中、沙月のツッコミが響く。
そのツッコミで皆我に返る。
「何って二人を大人しくさせるために、手っ取り早く当身で気絶させたんだが」
「凄い、真央姉さんそんな事できるの?」
「テレビとかでよく見ますけど、実際にできる人は初めて見ましたよ」
「真央ちゃん、二人は大丈夫なの?」
「ああ、二人にとっては急に意識が飛んだ感じだからな痛みとかはないと思う」
「何て言うか、最近思うんだが真央が何をしても全然おかしくないと思えるのは私だけなんだろうか?」
「大丈夫だよさっちゃん、私もそう思うから」
周りの皆もうんうんと頷いている。
「ところで宇界さん、二人を起こす事できない? もうすぐ授業も始まるし」
「ああ、わかった」
そう言って真央は二人に近づく。
「フッ」
「「・・・・・・んっ」」
二人の意識が戻る。
「真央一応聞くけど、今度は何をしたんだ?」
「ん? 神経を起こさせるツボみたいなのを押して二人の意識を戻したんだが」
「ああ、そうですか」
沙月はもう真央はこういう子なんだなと思う事にした。
「それより、二人に聞いてみたらどうだ?」
「おう、そうだな」
真央達は実里と花音に近寄る。
「橘さん大丈夫? 落ちついた?」
「うん」
「花音さんも落ち着きましたか?」
「うん、ごめんね」
「で、一体何があったの? 水橋さんにそこまで怒るほど何か言われたの?」
「・・・・・・わからないの、何で花音にあそこまで怒ったのか、全然わからないの」
実里は自分に起きた事を話す。
「わからないってそんな事ないでしょ、だってそうじゃなきゃあんなに怒らないよ」
「だってわからないものはわからないんだもん! 普通に花音と話してただけなのに急になんかイライラしてきて気づいたら花音に思ってもいないのに酷い事をたくさん・・・・・・」
そこまで言って実里の目から涙が零れていた。
「わかったから、橘さんもういいよ」
「花音さんはどうですか? 実里さんからそこまで怒るほど何か酷い事を言われたのですか?」
唯は花音に問う。
「ううん、何も言われてないよ、普通に実里ちゃんと話してただけなのに、そしたら急にさっき実里ちゃんが言ったように私も急になんかイライラしてきて、我慢・・・できなくて・・・気づいたら実里ちゃんに・・思ってもいないのに・・酷い事・・・たくさん」
言っている途中で花音の目からも涙が零れていた。
「ごめんね実里ちゃん、ごめんね」
「私だって、ごめんね花音」
実里と花音は互いに謝罪をする。
そして。
「「うわあああああああああああああああん!!」」
我慢できなかったのか二人とも泣き出してしまう。
仲の良かった二人が本人にもわからない事で大喧嘩しお互いに酷い事を言い合ってしまった。
周りの皆は何て声を掛けたらいいかわからなかった。
「なあ、二人はもう一緒に遊びたいとは思わないのか?」
そんな中、真央だけは実里と花音に問う。
「「え?」」
「だから、二人はもう一緒に遊びたいとは思わないのか? もう友達でいたくないと思うか? もう仲良しでいたくないと思うか?」
「そんな事ない!!」
真央の言葉に実里は反論する。
「確かに花音に酷い事いっぱい言ったけど花音と友達でいたくないって思わないもん!! これからも一緒に遊びたいもん!!」
「私だって、実里ちゃんとこれからもずっと一緒にいたいよ!!」
「そうか、ならそれで良いじゃないか」
「「え?」」
真央の言葉に二人は疑問の声を上げる。
「お前達はお互いに悪い事をしたと思っている、そしてお互いに謝ってこれからも一緒にいたいと思っている、ならそれで良いじゃないか、今日の事は大人になった時の笑い話にでもすれば良いさ」
真央はそう言って二人の頭を撫でて安心させる。
「真央ちゃん」
「ありがとう、真央ちゃん」
二人に笑顔が戻り周りの皆も安心していた。
「いやぁ、さすが宇界さん見事にクラスで着々とハーレムを築いていくねぇ」
「ハーレムって何だよ?」
「おや? 相沢さん知らないの? 宇界さんクラスだけじゃなくて他のクラスの女子にも人気なんだよ、男だったら好きになる女の子で宇界さんが一位なんだよ」
「マジか?」
「マジだよぉ、高梨さん達を筆頭にクラスの女子はほとんど宇界さんに攻略されたようなものだよ、でも私はまだ攻略される気はないよぉ、最後まで抵抗してハーレムに落ちるからねぇ」
「結局攻略されるんかい!!」
沙月がツッコミをいれる。
「まあまあ、それよりも実際に怒りが込み上げて大喧嘩になったのを見たけど、これほどとは思わなかったねぇ」
「そうですね、二人ともその気はなかったと言うのもニュースでやっていたのと同じでしたしね」
「うーん、原因は何だろうねぇ?」
「もしかして、宇宙人による実験とかでは?」
「宇宙人?」
唯の言葉に反応する亜子。
「はい、宇宙人が何かしらの電波を発信させているんですが、それは人間にとって害になるもので」
「なるほど、それを浴びた人間は怒りが込み上げて感情が爆発すると」
「はい、もしそうならこれは宇宙人がこの地球を侵略する前兆では?」
「おお、私達はとんでもない情報を手にしたのかぁ?」
「おーい、二人とも戻ってこーい、宇宙人ってそんな馬鹿な事があるか」
沙月が二人にツッコミをいれる。
「いやぁ、面目ない」
「でも、ロマンがあって良いですよね」
「まあ、宇宙人がいないとは言い切れないけどさ」
「でも、なんだか怖いね」
「真理亜?」
真央は真理亜を見る。
「だって知らない内に急にイライラして、友達に酷い事を言うんだよ? 凄く怖いよ」
「私もイライラして真理亜ちゃんに酷い事たくさん言ったら、もう耐えられないよ」
「確かに仲の良い友達ならなおさらだな」
「そうですね、このまま何もわからず、ずっと続くのでしょうか?」
「大丈夫だ」
「「「「え?」」」」
皆の不安に真央が安心するように言う。
「悪い事がずっと続くなんてない、どこかで終わりが来るさ、それに例えそうなってしまっても皆が友達で居続けたいって思うなら大丈夫だ」
真央の言葉にはなんだか自信のようなものを感じた。
「真央ちゃん」
「そうだね、真央姉さんの言う通りだよ」
「確かにそうだな」
「はい」
「皆さん、授業を始めますので席についてください。」
ここでリズが来た事により授業が始まるため全員が席に着き始める。
「リズ」
「はい」
「あの二人を見てみろ」
「あの二人と言いますと、実里さんと花音さんですね」
リズは実里と花音を見る。
「!! レイア様、これは?」
リズは小声で真央に聞く。
「放課後に説明をする、とりあえずアレを覚えておいてくれ」
「承知しました」
そして、真央は席に着く。
(やはり、間違いないな)
真央は何かを確信するのだった。
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