第81話 事情聴取の話
「そう言えば、真央は何で昨日休んだんだ?」
「そうだね、真理亜ちゃんはともかく何で真央姉さんも?」
「確かに気になりますね」
「ああ、警察から事情聴取を受けてた」
「「「「え?」」」」
真理亜達は疑問に思った。
「いや、警察の事情聴取って何で? リズ先生が助けたのならリズ先生が受けるならわかるけど、何で真央まで?」
沙月の言う事は尤もである。
「なんか、警察の人が僕に聞きたい事があるって話だったから」
「「「「聞きたい事?」」」」
「ああ」
そう言って真央はその時の事を話すのだった。
~真央回想~
真央とリズは警察署へと来ていた。
真理亜の誘拐事件の詳しい話をするためである。
「ここですね」
「そうだな、それにしても何で僕まで呼ばれたんだ?」
「なんでも、レイア様に聞きたい事があるそうです」
「聞きたい事? 何だ?」
「さあ? それは行って見ないと何とも言えませんね」
「そうか、まあ行くか」
二人は中に入って行く。
しばらくすると女性の警察官がやって来る。
男性より同じ女性の方が話しやすいだろうと言う気配りなのかもしれないと二人は考えた。
こうして事件についての詳しい話をするのだった。
あらかじめ二人で決めたようにリズが犯人達を気絶させ真理亜を救出したと言う感じに話を進めて行った。
「なるほど、ではリズさんが犯人達を無力化させたと言うわけですね?」
「はい、間違いありません」
「それにしても、見かけによらず強いのですね」
「ええ、まあ軍隊が相手でも一人で対処できる戦闘訓練をしてきましたから、あの程度などいたずらっ子を相手にするようなものですね」
「どんな訓練か気になりますが関係ないからいいですね、それと犯人の動機についてなんですが、やはり、リズさんが聞いた通り被害者の子の父親に会社をクビにされたのを逆恨みしての犯行でした」
「そうですか、ところで真央さん、隣にいる彼女ですが何故呼ばれたのですか? 聞きたい事があると聞きましたが」
「ああ、そうでした真央ちゃんと言ったね? あなたに聞きたい事があるのだけど、良いかしら?」
女性警察官は真央に優しく語り掛ける。
「はい、良いですよ」
真央は了承する。
「わかったわ、犯人達が言っていたんだけど、何でもあなたが大人の姿になったって、しかも銃の弾を素手で全部掴んだと言っていたの」
女性警察官の言葉に真央とリズは一瞬何とも言えない顔になる。
「僕が、大人の姿にですか?」
「そうなの、捕まえて連れて行く時もずっとあなたが大人の姿になった、銃も効かない、人間の動きじゃない化け物だ、あいつを捕まえろ、とか言っているのよ、真央ちゃん、この話を聞いてどう思う?」
真央は考える。
「僕が大人の姿になって、銃弾を素手で掴み、人間じゃない動きをする・・・・・・」
そこまで言って真央は。
「何ですか? そのアニメや漫画みたいな話」
呆れた顔をしてそう答えるのだった。
「やはり、子供のあなたでもそう思うよね」
「まさかとは思いますけど、そんな戯れ言を信じてはいませんよね?」
リズが確認をするように聞く。
「当然です、こんなわかりやすい嘘誰が信じますか、それに犯人達はわけのわからない事ばかり言っていて、本当に困っているんですから」
「わけのわからない事?」
真央は疑問を口にする。
「ええ、犯人達が誘拐した動機は会社をクビにされたからと言っていたけど最初はこんな事するつもりはなかったと言っていたの」
女性警察官の言葉に真央とリズは、は? と言いたくなるような顔をする。
「何でも最初は誘拐なんてするつもりはなかったんだけど急に怒りが込み上げてきて気づいたらこんな事をしていたそうなんです」
「急に怒りが込み上げてきたって、そんな馬鹿な事が」
「ええ、私もそう思いますが、ここ最近そう言った事件が増えているんです、そして全員がやるつもりはなかったのに急に怒りが込み上げてきて、気づいたらと」
女性警察官の言葉に真央とリズはある可能性に思い至る。
だが確認しようがないため確実とは言い切れなかった。
「とにかく、最近そう言った事件がこの辺りで増えてきているのでお二人も気をつけてください」
「わかりました」
「それと、真央ちゃん」
「はい」
「お友達が誘拐されたと聞いて、追いかける気持ちはわかるけど真央ちゃんは子供なのよ、そんな危ない事をしてはダメよ、私達警察や大人の人に任せれば良いの、真央ちゃんまで危険な目にあったら悲しむ人だっているでしょ?」
「・・・・・・ごめんなさい」
女性警察官に注意され真央はその時の事を思い返す。
確かにあの時の真央は冷静さを失っていて周りが見えていなかった。
おまけに今の自分は子供の姿をしているため何も知らない人からすれば子供が危険な大人達を追いかけようとしている行為は確かに危ないと言えるだろう。
故に真央は素直に自分が悪いと反省するのだった。
「わかれば良いのよ、それに真央ちゃんが友達を心配して追いかけようとした事も決して間違いだとは思わないわ、でもやっぱりそう言う事は大人に任せるべきだと言う事もわかってほしいの」
「はい、わかりました」
真央がそう言うと女性警察官は真央に微笑む。
そして真央自身もまた誰かに心配される事は申し訳ない気持ちもあったが自分を心配してくれる事が嬉しい気持ちもあったのだった。
~真央回想 終~
「とまあ、こんな感じかな」
「いや、明らかにその犯人達ヤバい薬でもやってたんじゃないのか!? 銃まで持っていたそうだし」
「そうですね、真央さんが大人になって銃弾を掴むって」
「絶対にありえないよ、真理亜ちゃんがそんな危ない犯人達と一緒にいて何もなくて良かったよ」
「そうですね、幸いな事に気を失って何も覚えていないんですよね?」
「うん、目が覚めるまで何も覚えてなくて、警察の人が聞きに来たけど誘拐されたのは覚えていてもそこから先は何も覚えていなかったから」
「いや、何も覚えていなくて良かったかもな、もし覚えていたらその時の事を思い出して怖くて外にも出られない事になっていたかも知れないし覚えていなかったのは幸運かもな」
沙月の言葉に皆は頷く。
「警察もそう言うヤバい薬をしていたかも知れないと言う事も含めて調べるらしいけど」
「それにしても許せないよな、自業自得なのに逆恨みで関係ない真理亜を誘拐するなんて、しかも怒りが込み上げたって、ふざけるなって言いたいな」
「うん、私もさっちゃんの言う通りだよ、絶対許せないよ」
「でも、最近確かにそう言う理由で事件を起こしたと言うのをニュースでよく見ますね」
「うん、皆同じように最初はやるつもりはなかったのに怒りが込み上げて我慢できなくなったって言ってたね」
「僕も警察で言われてニュースを見たけど、確かにそう言う事件が多かったからそれについて詳しい事が知りたいんだ」
「詳しい事? 何か気になるのか?」
沙月の言葉に真央は頷く。
「ああ、ちょっと気になって、詳しい事が聞きたいんだけど」
「だったら、あいつに聞けば良いと思うぞ」
「あ、そっか」
「確かに彼女ならこういう事はもうすでに調べてるかもしれませんね」
「? 誰の事だ?」
「えっとね、真央ちゃん、私達のクラスにたくさんの情報を調べている子がいるの」
「その子なら今回の事も調べてると?」
「うん、気になった事は全部調べようとする子だから多分調べてると思うよ」
「なら、その子に話を聞いてみるか」
真央達はその子の所に行くのだった。
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