第77話 絶対の恐怖
「な、何だアレ?」
男達は目の前で起きてる事に理解が追いつかなかった。
「ガキの姿だから何もできないと思っているんだろ? だからこっちの本来の姿で相手をしてやるよ」
レイアは宇界真央としての姿ではなく魔王レイアの姿になっている。
「おい、どうなってる? さっきまでガキだっただろ」
「そのガキがいきなり大人の姿になってるだと?」
「な、何だ、俺は夢でも見てるのか?」
男達は混乱していた。
子供がいきなり大人の姿になる、普通なありえない事が起きているからである。
「さて、お前達覚悟はできているか?」
そう言ってレイアは男達に近づく。
一歩一歩ゆっくりと。
「ち、近づくな!!」
男は何かを取り出す。
「ん?」
レイアは男が手に持っている物を見る。
小さい鉄の塊のような物である。
(あれは、確か拳銃とか言う武器だったな)
男が持っていたのは拳銃だった。
他の三人の男達も拳銃を取り出す。
「・・・・・・」
拳銃を見ても特に気にせずレイアはまた歩みを始める。
「お、おい!! これが見えねえのか!?」
男は拳銃を構える。
「・・・・・・」
それでもレイアは歩み寄る。
「く、来るなああああああああああああああ!!」
男は拳銃の引き金を引く。
拳銃が発砲し銃弾がレイアに向かって行く。
しかし。
「ん?」
レイアは銃弾をつまむように掴み受け止める。
「は?」
男は呆気にとられた声を出す。
「ほう、これが拳銃か一般に銃とも呼ばれている物だな、これだけ離れているのに威力も速さも衰える事なく届くとはな、これなら鎧も貫通できるか、しかもこんな小さな弾だから見抜くのも難しいな、弓矢と違って使い方も難しくないから覚えてしまえば子供でも大人を殺せてしまうな、恐ろしい武器だ、手に入れた奴は使い方を考えないといけないな」
レイアは銃弾を見ながら独り言のようにつぶやく。
「おい、どうなってんだ!?」
「銃弾を受け止めた!?」
「何だよ、こいつ」
男達は恐怖を感じていた。
そして。
「・・・・・・」
レイアが男達に顔を向ける。
「ひっ!!」
「く、来るな!!」
「うわああああああああああああああああ!!」
あまりの恐怖に男達は次々と拳銃を撃ちまくる。
だがレイアは全ての銃弾を手で掴んで捕らえる。
やがて弾切れになったのか銃声は止んだ。
「これで終わりか?」
レイアの手には銃弾が握られている。
「う、うわあああああああああああああ!!」
逃げ出そうとする男達だが。
「ふん」
レイアは掴んだ銃弾を親指で弾き男達の足元を狙う。
「ひっ!?」
足には当たらなかったが後数センチで当たる程のギリギリの距離でレイアは正確に地面に当てる。
「僕が逃がすと思うか?」
そして男達の後ろにいたレイアはいつの間にか目の前にいて逃げ場をなくす。
「あ・・・あ・・」
「お前がリーダーだな」
レイアはリーダーと思われる男を掴み地面に転ばす。
そしてその上に立ち男を見下ろす。
男はレイアにただ恐怖を感じていた。
「おい、僕が怖いか?」
レイアは男に問う。
男は震えているが首を縦に振る。
「そうか、だが真理亜はもっと怖かったんだぞ」
レイアは静かに威圧を込めながら言う。
「あんな小さな子供を、ましてや女の子を大人の男が四人でどれほど怖かったか、わからないわけないよな? お前達は有能なんだから」
「・・・・・・」
男は黙って聞いていた。
ガクガクと震えながら。
「ちなみにわかってないから教えてやるが、真理亜の父親がお前達をクビにしたのは当然の事だと思うぞ」
「・・・・・・??」
レイアの言う事に男はわけがわからない顔をしている。
「本当にわからないようだな、いいか? 会社というものがどういうものかはよくわからないが要は組織のようなものだろ? ならまず必要なのは仕事ができるかどうかではなく他人との関係を作る事だ、いくら仕事ができても組織なら誰かと一緒に仕事をする事だってあるはずだ、お前達のさっきの発言を聞いて思ったが、お前達できない奴の事をそうやって見下したりバカにしたりしていたんじゃないのか?」
レイアは男達がクビになった説明をする。
「な、何でだよ? それの何が悪いんだよ?」
「そうだ、できない奴を馬鹿にして何が悪い? できないほうが悪いんだろ?」
「俺達は、何も悪くない」
「・・・・・・はぁ?」
「「「ひっ!!」」」
地面に転がっているリーダーの男以外の三人がそれぞれ反論するがレイアのひとにらみで黙る。
「お前達は何を言ってるんだ? そんな簡単な事もわからないのか? お前達が上の立場になった時にそんな態度を取ってついてくる奴がいると思うか? むしろ会社の評判を落とすようなものだ、だから真理亜の父親は仕事ができてもお前達をクビにしたんだ、それなのにお前達は自分達の何が悪かったのかを省みないどころか勝手な逆恨みをして挙句の果てには誘拐をするとはな」
レイアは男達をどこまでも見下したような顔で見る。
「お前達は許さない、真理亜に恐怖を与えたお前達をな」
レイアは足を上げる。
そして。
「終わりにしてやるよ」
グチャグチャに潰す威力で男の顔めがけて下すのだった。
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