第75話 魔王は冷静さを取り戻す、そして
本日、二話目の投稿です。
レイアの頬に痛みが走る。
それはリズに平手打ちをされたからである。
「・・・・・・」
レイアは頬に手を触れ、目を見開きリズを見る。
「私が、真理亜様の心配をしていないですって? そんな事あるわけないじゃないですか!!」
リズは大声を上げていた。
それは心からの叫びのようなものだった。
「私だって真理亜様の事が心配に決まってますよ!! でも、だからこそ落ちつかなければいけないんです!! 普段のレイア様ならそれぐらいわかっているはずです!! そんな事絶対に言いません!! それほどレイア様は冷静さを失っているんです!! だから落ちつかなければいけないんです!!」
言い終わりリズは息を荒げていた。
認識阻害の魔法を使っているため、二人の今のやり取りは周りには聞こえていない。
感情的になったレイアを落ちつかせるためにリズが使用したのだ。
「申し訳ありません、落ち着かせるためとは言え主に手を上げるなど許されない事、罰は後でお受けしますですが今は真理亜様を」
「いや、その必要はない」
その声はいつものように落ちついた声だった。
「真理亜が攫われたと聞いて冷静さを失っていた、すまない、お前に嫌な事をさせてしまった」
「いえ、私は気にしていません」
「だがもう大丈夫だリズ、真理亜を助けに行くぞ」
「はい、レイア様」
二人は真理亜を助け出す準備に取り掛かるのだった。
~side 真理亜~
「上手くいったな」
「ああ」
もう使われていない廃工場。
そこには数人の男がいた。
「で、どうするんだ?」
「決まってるだろ、こいつの親に電話するんだよ」
そう言って男は真理亜を指差す。
「・・・・・・」
真理亜は怯えている。
縛られ口にガムテープを貼られていてしゃべる事すらもできない。
「ああ、金をたらふく取るんだよな?」
「そうさ、こいつの父親のせいで俺達は被害を受けたんだからな」
「そうだ、むしろ慰謝料をたっぷり貰うべきだ!」
「そのために娘のこいつを攫ったんだからな、嫌でも払うさ」
そう言って一人の男、おそらくリーダー格と思われる男が真理亜に近づく。
「おい、俺達はな、お前の親父に恨みがあるんだよ、恨むんならお前の親父を恨むんだな、お前がこんな目にあったのは、お前の親父が悪いんだからな!!」
「んんっ!」
男が急に怒鳴り声を上げたので真理亜はビクつく。
今の真理亜にはただ怖いという感情しかなかった。
怖くて怖くて、誰か助けてほしいと思うくらい怖くなっていた。
そして、あまりの怖さで目からは涙が零れていた。
~side レイア~
「はい、では、よろしくお願いします、理事長」
リズは電話を切る。
「レイア様、報告を終えました、警察と真理亜様のご家族には理事長から伝えるそうです」
「そうか、リズ、真理亜の居場所はわかるか?」
レイアはリズに問う。
真理亜の魔力は封印されているため魔力を辿る事は不可能だからである。
「ご安心ください、探索の魔法を使いますので」
「詳しい位置がわかるのか? かなり距離が離れているかもしれないのに」
「それもご心配なく、真理亜様には記の魔法を掛けて正確な位置がわかるようにしていますので」
「いつ掛けたんだ?」
「最初に記憶を覗いた時です」
「なるほど」
探索の魔法は探したいものの場所がわかる魔法であり、記の魔法は特定の人や物に掛ける事により探索の魔法でより早く正確な場所がわかるのである。
携帯のGPSのようなものである。
「元々レイア様が城を出て行ったあの日のような事が二度とないように探索の魔法をより早く正確なものにするようにしようと生み出した魔法ですが、ここで役に立つとは思いませんでした」
「そうか、だが今はありがたい、リズ頼む」
「はい、今お待ちを」
リズは探索の魔法を使用する。
そして。
「見つけました」
たった数秒で記の魔法を掛けた真理亜の居場所を突き止めた。
「すぐに転移の魔法を使います」
リズは転移の魔法で真理亜のいる場所へと繋ぎレイアとリズはすぐに入って行く。
「ここは?」
「今はもう使われていない工場ですね、隠れ家としては持ってこいの場所ですね」
「真理亜はどこだ?」
「あの中にいます」
リズが指差した方角に急いで向かう。
「真理亜!!」
レイアは真理亜と誘拐犯達のいる場所に辿り着くのだった。
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