第74話 魔王、取り乱す
「真理亜が連れていかれた」
その言葉を聞いた途端真央の中で動揺が走った。
「どういうことだ!? 連れていかれたって!?」
真央は、彩音達に聞く。
だが明らかに取り乱した感じの声になっていた。
「真央さん、落ち着いてください、皆さんも落ち着いて何があったか説明をしてください」
リズは、皆を落ちつかせ、説明するように求める。
「わか、らないんです、私達、普通に帰ってたのにいきなり」
沙月がその時の事を説明する。
それは、今から少し前の時間の出来事である。
真理亜達は、いつものように通学路を通って帰っていた。
だが。
突然、真理亜達の前に車が止まり、ドアが開き出てきた男が真理亜に近づく。
「え?」
いきなり男に捕まれ真理亜は、車の中に連れ込まれてしまう。
「真理亜ちゃん!?」
「おい、何するんだよ!!」
「真理亜さんを放してください!!」
彩音達は、男に掴み掛かるがすぐに振り払われてしまう。
そのまま車のドアを閉め、車は、真理亜を乗せたままどこかへと行ってしまった。
「そんな事が」
「うぅ、真理亜ちゃん」
「なんでだよ、何で真理亜が」
「突然の事で私達何もできなくて」
彩音達からは、涙が溢れていた。
大切な友達が目の前で誘拐されたのなら無理もないだろう。
「どっちに行った」
「え?」
「その車は、どっちに行ったと聞いてるんだ!!」
真央は、彩音達に聞く。
普段の彼女とは、思えない大声で。
「あっちの方に真っ直ぐに」
唯が車の行った方角を指さす。
「クッ!!」
真央は、すぐにその方角に向かって走り出した。
「真央さん!!」
リズが呼び止めるが、真央は、聞かずそのまま走り出してしまう。
「皆さんは、このまま家に帰ってください」
「でも、真理亜ちゃんは」
「真央だって」
「真央さんは、私が連れ戻します、真理亜さんの事も学校と警察には、私から伝えますので皆さんは、家に帰ってください、大丈夫です真理亜さんは、必ず助けますから」
そう言ってリズは、真央を追いかけていった。
レイアは、走り続けていた。
(クソ!! 僕は、馬鹿か!!)
レイアは、取り乱していた。
そして自分を責めていた。
(何故真理亜の傍にいなかった!! 何故大丈夫だと思った!! 真理亜の命を狙う者がいると言うのにこういう事だって可能性としてあったのに何故僕は、真理亜の傍にいなかった!!)
「レイア様!!」
レイアに追いついたリズがレイアの手を掴む。
「放せリズ!! 早くしないと真理亜が!!」
「ですから、落ち着いてください!!」
「落ち着けだと!! 落ちつける訳ないだろ!! 真理亜が攫われたんだぞ!! なのに落ち着けだと!! お前は、真理亜が心配じゃないのか!!」
レイアは、リズに感情的になっていた。
普段のレイアからは、とても想像ができない程に。
「レイア様・・・失礼します」
するとレイアの頬に何かの痛みが走った。
そう、リズは、レイアの頬に平手打ちをしたのだった。
読んでいただきありがとうございます。