第72話 家庭訪問 5 今の気持ち、そして家庭訪問の終わり
「宇界さん、学校生活は、楽しいですか?」
一条先生は、最後にそう真央に質問する。
「学校生活ですか?」
「はい、私達教師が一番気にするのは、そこなんです、いくら学校で成績が優秀でも、学校が楽しくなければ行きたくないと言う子も見てきました、だから私達教師は、それが知りたいのです、学校での生活は、楽しいのか宇界さんが感じている今の気持ちを教えてほしいのです」
真央は、考える。
そして思い返すのは、元の世界でのノワール学園での生活だった。
落ちこぼれの自分は、ノワール学園での生活は、ただ辛いものだった。
だから学校生活など楽しいものでは、ないと思っていた。
だが。
「学校生活は、楽しいですよ」
それは、真央の嘘偽りのない本心だった。
人間界に来て、真理亜を近くで守るために学校に通うことになった。
ノワール学園での事もあり、学校生活は、適当にやり真理亜を守る事に専念すれば良いと最初は、思っていた。
しかし、真理亜達とふれあった事により、気づいたら学校生活が楽しいものになっていた。
毎日が楽しい、学校に行くのが楽しい、いつの間にかそんな気持ちが強くなっていたのだった。
「前の学校とは、大違いで毎日が楽しくて、家に帰ったら早く明日にならないかなと思ったりして、授業も楽しいし、友達と話すのも楽しいです、学校生活って本当は、こんなに楽しいものだったんですね」
本人は、気づいているのかは、わからないが話している時の真央は、楽しそうに笑っていた。
「そうですか、それは、良かったです、宇界さんが楽しそうで安心しました」
「前の学校については、聞かないのですか?」
前の学校と言ったからてっきりそこについて聞かれるかと思ったが何も聞かれない事に真央は、疑問に感じた。
「確かに、さっきの宇界さんの話だと前の学校では、あまり良い思い出がないと感じましたが、今の学校が楽しいのならわざわざ前の学校については、聞く必要がないと思いますので」
「そうなのですか?」
「はい、大切なのは、今ですからですが、宇界さんがもし今の学校でも辛いと感じたのなら、無理に抱え込まず、誰かに話してください、友達でもリズ先生でも私でも良いです、誰かに話す事でスッキリする事もありますから、決して一人で抱え込まないでください」
「・・・ありがとうございます、一条先生」
真央は、感謝を伝える。
素直に一条先生の言葉が嬉しかったからである。
「長居してしまい申し訳ありません」
「いえ、お疲れ様です、一条先生」
「では、お邪魔しました、宇界さんまた明日学校で」
「はい」
そう言って一条先生は、帰っていった。
「どうにか無事に終わりましたね、レイア様」
「ああ、そうだな」
家庭訪問が終わりレイアとリズは、無事に終わった事に安堵する。
「一条先生は、信頼できそうな先生ですね」
「ああ、おそらくだが、本当に生徒一人一人の事を考えてくれる先生なのかもな」
「そうですね、少し頑張りすぎなんじゃないのかと心配になりますが、素敵な先生なのは、間違いありませんね」
「そうだな、それに最後に言ってくれた言葉は、素直に嬉しかった」
「辛いと感じたら一人で抱え込まずに誰かに話す事ですか?」
「ああ、先生は、本気で言ったと思うが例え本気じゃなくても適当に言った事でもそれでも僕は、嬉しかった、きっと言葉にして言ってくれたからかな」
「確かに思ってなくても、言葉として言ってくれるだけで救われる事もありますからね」
「そうだな、さて、そろそろ夕飯にするかリズ頼む」
「はい、すぐに用意します」
そう言ってリズは、夕飯の支度を始め、レイアは、勉強をするのであった。
こうして魔王レイアの初めての家庭訪問は、終わるのだった。
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