第68話 家庭訪問
ゴールデンウィークが終わり学校が始まる。
ほんの数日会わなかっただけなのに真央は、久しぶりに皆と会った感じになっていた。
「休みの間も皆と会っていたのに、学校で会うと何だか嬉しい気持ちになるね」
「私も真理亜ちゃんに会えて嬉しいよ~」
「気のせいか? お前の嬉しいと真理亜の嬉しいが別の意味に聞こえるのは」
「ふふ、私も皆さんと会えて嬉しいですよ」
こんな何気ない会話も久しぶりだなと真央は、感じていた。
学校生活が楽しいからなのかもしれない。
「そう言えば、休み明け早々家庭訪問があるらしいな」
「家庭訪問?」
沙月の言葉に真央は、疑問を口にする。
「ん? 真央の所では、無かったのか?」
「初めて聞いたな、家庭訪問って?」
「担任の先生が自分の担当しているクラスの生徒の家に行き、親と一緒に学校でどんな風にしているか家では、どんな風に過ごしているかを聞いたり話し合ったりする事だよ」
「私達のクラスだと一条先生が私達の家に来て親と一緒にどんな風にしているかを話し合いますね」
「なるほど、だがそんな事して何かわかるのか?」
真央は、疑問に感じていた。
別に話し合ったからと言って何がどう変わるのか元の世界の学校では、家庭訪問が無かったためそこがよくわからなかった。
「そうだな例えばだけど、家と学校だと雰囲気が違う子がいたとするだろ?」
「家と学校で違う? どんな風に?」
「家だと明るく振る舞ってるけど学校だと雰囲気が暗い感じだな」
「なるほど」
「で、家庭訪問でそう言う子の家に行って話し合ったとするだろ?」
「うん」
「そこで親が言う家での姿と先生が言う学校での姿を話したとしたら」
「・・・! そうか家と学校で違うのならその子に何かあると思える」
沙月の説明で家庭訪問の必要性に真央は、気づく。
「そう、もしかしたら学校でいじめられてるんじゃないかとかそう言う事に気づく事ができるってことさ」
「なるほど」
「他にも色々あるよ真央姉さん」
「他にも? どんな事だ?」
沙月の説明だけでも十分だと思っていた真央だが彩音が他にも必要性がある事に真央は、疑問に思った。
「ええっと学校での成績とかも話し合ったりするんだよ、そうすると親も自分の子は、何が得意で何が苦手かもわかるから」
「なるほど、そうすれば親も何を勉強させれば良いかもわかると言う事か」
「そう言う事」
「他にも学校での態度とかも話し合ったりしますね」
「態度?」
「はい、沙月さんが言ったいじめについてわかるだけでなく学校では、どのように過ごしているのか、授業の時は、ちゃんと聞いているのか、休み時間は、どのように過ごしているのか、給食は、ちゃんと残さず食べているかなどを親に報告する感じですね」
「それは、良いかもな家だと親の目もあるから良い子にしているけど学校だと親が見ていないから好き勝手やったりするようなバカもいるからな」
「バカって真央どうした?」
「僕の所でそう言うのがいたからだ」
ノワール学園にいた頃そんな生徒がいた事を真央は、思い出していた。
「そうか、まあ深くは、聞かないけど大変だったんだな」
「そうだな、大変だったな、ところで他にも何か聞かれるのか?」
「後は、学校が楽しいかとか学校で気になる事とか自分が思った事とかだね、学校が楽しくないと行きたくないって思ってしまうかもしれないからそう言うのも確認するように聞いてくると思うよ」
「なるほど、確かにそれは、一理あるかもな」
皆から聞いた事で家庭訪問の重要性を理解した真央であった。
「それでは、来週から家庭訪問を行います、プリントを配りますので各自家の人に忘れずに見せてください」
そう言い一条先生は、クラスの皆にプリントを配る。
プリントを受け取った真央は、確認する。
「僕は、初日の最後か」
こうして真央の初めての家庭訪問が決まったのだった。
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