第66話 ゴールデンウィーク 13 レイアが学園をやめた後の話
「久しぶりに聞いたなそれ」
「あ、すまない」
「いや良いさ、事実だしな、しかしお前ノワール学園の生徒だったんだな」
「クラスは、違うが同じ学年だ、そう言えばレイラ殿の事も今思い出した、学園でも噂になっていたからな、魔王の優秀な娘がいるとアレは、レイラ殿の事だったんだな」
「なら、僕の事も知っているだろ?」
「ああ、武術も魔法も何もできない落ちこぼれだと聞いた」
「そうか」
レイアは、懐かしむ感じに聞いていた。
「僕は、途中で学校をやめたけど姉貴は、有名だったか?」
「いや、レイア殿がやめてからしばらくして大変だったんだ」
「大変? 何があったんだ?」
「レイア殿が学校をやめてしばらくして亡くなったって聞いて学園は、大変だったんだ」
「あ」
レイアには、心当たりがあった。
自分が死に場所を求めて家を出た時の事だ。
「レイア殿のクラスは、特に大変だったぞ、いじめていた奴らの中には、自分が追い詰めたんじゃないのかって罪悪感が出てきて学校をやめるって言いだしたり、魔王からの報復を恐れて学校に行きたくないって言い出した奴もいたらしいぞ」
「な、何だって・・・」
「しかも先生達なんか命を絶とうとした奴もいるらしいぞ、落ちこぼれでも魔王の娘だからな、姉の評判の為にきつく当たっていた先生もいたしな、それが学校をやめただけでなく亡くなったときたからな、取り返しのつかないことをしてしまったと言って、なんで何もしなかったんだと後悔して責任を持ってやめようとする者もいたらしいぞ」
「マジかよ」
レイアは、ただ驚いていた。
まさか自分がいなくなっただけけでそこまでの事になっていたとは、思いもしなかったのだ。
別に大して誰も何も感じていないだろうと思っていたのだ。
「姉貴は、どうしていた?」
「学園で大暴れした」
「何があった!?」
レイラは、よっぽどの事でなければ暴れたりしないので、その言葉にレイアは、驚いた。
「俺も実際には、見てないが話によるとレイア殿が亡くなって、学校でいじめられていた事を知ったレイラ殿は、レイア殿をいじめていた奴らを片っ端から魔法とか武術でぶっ飛ばしたそうだ」
「・・・・・・」
レイアは、目を見開いていた。
「当然先生達も止めに来たけど今度は、先生達に対しても魔法とか武術でぶっ飛ばしたらしい」
「マジか」
「しばらくしておとなしくなったが、何でこんな事をしたのかと先生が聞いたら、泣きながらレイア殿が亡くなった事を話したらしいんだ、さらに自分を責め続けていたそうだ、学校でいじめられていた事も、先生にきつく言われていた事も、城で配下から見捨てられていた事も、何一つ気づいてあげられなかったと言っていたそうだ」
「・・・・・・」
レイアは、ただ黙って聞いていた。
「たった一人の大切な妹が辛い思いをしていた事に気づけなかった事に対して自分が許せなかったそうだ、それからしばらくして家庭の事情だか何だか知らないが学園をやめたらしい」
「・・・・・・そうか」
レイアは、心苦しく感じていた。
そして思った自分のせいだと。
レイラが学園をやめた原因は、おそらく配下が裏切って父と母を失った事でレイラが魔王を継ぐ事になったからだろう。
その原因を作ったのは、自分が家を出ていきそのまま帰らなかった事だろう。
自分があんな事をしなければ、父と母は、今でも生きていたかもしれない、姉は、学園で優秀な成績を出してそのまま首席で卒業し立派に魔王を受け継いだかもしれない。
自分が家族を不幸にさせてしまった。
レイアは、そう感じざるを得なかった。
「レイア殿、顔が辛そうだが大丈夫か?」
「あ、すまない、気にしないでくれ」
「そうか」
「ところでお前は、これからどうするんだ?」
「俺か?」
「ああ、元の世界に帰りたいのなら、僕の配下に頼んで帰ることができるぞ」
「いや、別に良い俺は、この人間界が気に入ったからな」
レイアが元の世界に帰れると言うがギギルは、断る。
「そうなのか?」
「ああ、レイラ殿に色々教わってこの世界は、面白いと思うし何よりこの世界の海が良い、まさかこんなに広いとは、思わなかったし思いっきり泳げる、そんな感覚を知ってしまったら元の世界の湖なんか狭くて嫌になる」
「そうか」
「まあ、そう言う事だ依頼は、失敗したし俺は、また海で泳いでいこうと思う」
「そうか、まあ元気でな」
「レイア殿もな」
そう言ってギギルは、去って行った。
「しかし、参ったな買ったばかりの服が濡れてしまった」
ギギルとの戦闘で池に入ってしまった為、着ている服は、今濡れてしまっていた。
「・・・・・・まあ良いか」
レイアは、特に気にせず家に帰っていった。
しかし。
「レイア様!? どうされたのですか!? そんなに濡れて!?」
この後レイアは、リズにさっき起きたことを説明することになる。
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