第63話 ゴールデンウィーク 10 対決
「そろそろ、出てきたらどうだ? いるのは、わかってるんだぞ」
真央は、誰かに呼びかける。
今いる場所は、この町で広い公園。
だが今は、どこを探しても人っ子一人いないはず。
「隠れていても無駄だぞ、そこにいるんだろ?」
真央が呼びかけたのは、公園にある大きい池だった。
「気づいてたか」
その声と共にバシャっと水しぶきを上げ水面から手が出てくる。
それから、体全身が出て陸に上がって来る。
池から出てきたのは、二十代位の見た目の男性である。
服を着たまま池の中に潜んでいる、普通の人間ならただの怪しい人物だ。
普通の人間ならば。
「いつから気づいてた? 俺の存在に」
「ほぼ最初の方からだ、やけに後をつけてくる魔力があるなと感じていたが殺気も出ていたから警戒していたがな」
「行動に移そうとしたら感づかれていたのは、そう言うことか、だが殺気なんてわかるのか? 行動に移す前までは、殺気は、抑えていたはず行動に移す時に無意識に一瞬出る程度だ、それなのに気づけるのか?」
「まあな、そう言う一瞬の変化にも対応できるように鍛えられたからな」
「なるほど、見た目は、子供だが相当な実力者だな」
「お前の目的は、僕じゃないんだろ?」
「ああ、目的があったのは、もう一人のお前と同じ銀髪をした髪の長い子の方だ」
「やはりな」
目の前にいるこの男は、人間では、なく魔族そして目的が真理亜である事。
間違いなく真理亜の命を狙う魔族である。
「何故、あの子の命を狙うんだ?」
「知りたければ力づくで聞けばいい」
「僕とやるのか?」
「ああ、邪魔になるお前から消すことにする」
そう言って男は、魔力で全身を覆う。
魔力が消え姿を現す前に何か触手のようなものが伸び真央の腕に絡みつく。
「やはり、水棲魔族か・・・ん? お前のその姿って」
魔族の姿を見るが魔族は、真央を掴んだまま池の中に入っていく。
そして他にもある触手で真央の全身に絡みつきそのまま深く潜っていく。
真央は、何とか振りほどこうとするが、全身に何本もの触手が絡まって中々ほどけないでいた。
「無駄だ、お前も魔族なら知っているだろ? 水棲魔族は、水中に入れば陸にいる時より何倍もの力を発揮することができる、お前がいかに俺以上の力を持っていても水中じゃ逃げることは、できない」
「・・・・・・」
「おまけに水棲魔族は、陸でも水中でも呼吸することができるが、水棲魔族じゃないお前は、呼吸すらできないこのまま溺死させてやる」
呼吸ができない真央。
このままでは、死んでしまう。
しかし、こんな時でも真央は、冷静でいた。
(力で振りほどけないなら、こうするだけだ)
真央は、手に魔力を込めそれを地面に向けて放出した。
放出した魔力の反動で体は、絡みついている魔族ごと水面に向かって上がっていく。
「何!?」
バシャっとデカい水しぶきが上がり魔族は、空中に投げ出される。
「ぐう」
「空中なら、逃げ場はないな」
そして、水面に上がった時の反動で触手から逃れた真央が陸地で待機していた。
魔族は、そのまま真央に向かって落下してくる。
「な!?」
「終わりだ」
真央は、腕に魔力を込め落下してきた魔族に一撃を当てる。
「ガハッ!!」
真央の一撃を受け魔族は、そのまま戦闘不能になる。
少し苦戦したが真央の勝利で決着がついたのだった。
読んでいただきありがとうございます。
戦闘シーンは、難しいです。
そしてあっけなく終わりました。