第56話 ゴールデンウィーク 3 真央は、試着されまくる
「では、これは、どうですか?」
「これも良いですね」
真央は、唯と店員によって色々試着させられている。
もう、十着以上は、試着した気がする。
「・・・・・・」
真央は、何も言わずされるがままだった。
「色々試着しましたが赤や黄色みたいに明るく派手な感じの色より青や白など涼し気な感じの色が似合うと思いますね」
「確かに真央さんは、クールな感じですからそっちの方が似合うと思いますね」
「でも、組み合わせ次第で派手な色も似合うと思いますよ」
唯と店員は、話し合っている。
それを見ていた真央は。
(何やってるんだろ? 僕は)
そんなことを考えていた。
「なあ、いつまで続けるんだ」
「一番似合う服が決まるまでですよ」
真央の質問に唯は、笑顔で答える。
「いや、もう結構着たし良いんじゃないのか?」
「何を言ってるんですか? まだ色々試着しないとどれが一番良いかわからないじゃないですか」
「もう十分だと思うけど」
「ダメです、まだ着ていない服がたくさんあるのですからちゃんとそれも着て見ないといけませんよ」
「そうですね、私も新人ですがプロですからね、お客様が一番似合う服を選ばなければなりません、妥協など一切する気は、ありません」
「そう言うことです、さあ真央さん試着の続きをしましょう」
「・・・・・・」
真央は、口を開けて言葉が出ない感じになっていた。
「ねえ、ちょっと待って」
ここで彩音が口を開いて言い出す。
真央は、ハッと救いが来たような感じで彩音を見る。
「何ですか? 彩音さん」
「真央姉さんには、確かに派手な色は、似合わないかも知れないけど、それって上の方だからじゃないのかな? 下の方だったら例えばこの赤のスカートにして上の方を白にすれば」
そう言って彩音に言われた通りに真央は、試着をする。
すると。
「あ! 確かに似合いますね!!」
「これは、初歩的な盲点でした、そうですよ上と下だと印象も違いますから組み合わせ次第で無限に可能性があるじゃないですか」
「だよねー、真央姉さん赤とかの派手な色は、下の方が似合うと思ったんだよ」
「・・・・・・マジか」
唯と店員だけでは、なく彩音までも参戦したことにより、真央の試着がより一層強化されてしまった。
だが、まだ強化は、終わらなかった。
「ねえ、私も思いついたんだけど、赤とかも明るめじゃなくて濃い感じの方の赤なら似合うんじゃないかな? ほらこの白の上に羽織る感じでスカートもこっちの黒にしてみたら良いと思うんだけど、真央ちゃん着てみて」
「え?」
真理亜に言われて真央は、その通りに着て見た。
「「「おお!!」」」
三人の歓声が上がっていた。
「確かにこれは、似合いますよ!!」
「何だか大人っぽさが出ていて良いです!!」
「凄いよ、真理亜ちゃん!!」
「えへへ」
まさかの真理亜まで加わったことによりさらに、真央の試着が強化されてしまった。
(まさか、真理亜まで何なんだ、試着って女の子をここまで熱くさせるのか!?)
そんなことを思いながら試着が早く終わってほしいと思っていた。
「皆、盛り上がっている所、悪いんだけど」
とここで今まで黙っていた沙月が話し出した。
「さっきから黙って見ていたが、気づかないか?」
「何がですか?」
「真央を見ていれば、わかると思うんだけど」
「さっちゃん、何がわかるの?」
「真央は、クールな感じだと皆言っているよな? さらに髪が短めだから、なおさら女の子なのにかっこいいと言えるだろう、だから思うんだ」
ここで一旦沙月は、間を置き。
「真央って男の子っぽいボーイッシュな服も似合うんじゃないのかと!!」
眼鏡をクイっと上げながらそんなことを言い出す沙月。
「「「「!!」」」」
沙月のその発言に真央以外の全員がハッとなる。
「確かにそうかも」
「女の子だから、女の子らしいかわいい服ばかり選んでいましたが」
「真央姉さんなら・・・似合うかも!!」
「ボーイッシュな服なら、こちらにあります、何着か持ってきますね」
そう言って店員は、服を取りに行く。
そして真央は。
(沙月、お前もか)
と思っていた。
最後の一人沙月が加わった事により、真央の試着、最強の布陣がここに完成した。
「お待たせしました、似合いそうな服を何着か持ってきましたよ」
店員が真央に似合いそうなボーイッシュな服を何着か持ってきた。
「ありがとうございます、さあ真央さん、さっそく試着しましょう」
「・・・・・・」
この時真央は、思った。
これからは、オシャレについても少しは、考えようと、そしてこの試着時間が一刻も早く終わってほしいと切に願った。
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