第436話 屋上へ 2
何人かの犠牲を出してしまった真央達はエレベーターへと乗り込む事ができ、屋上へと向かう。
「彩音、何だかんだ良い奴だったよ」
「そうですね、いつも明るく場を楽しくしてくれました、とても残念です」
沙月と唯は犠牲になった彩音の事を思い心を痛める。
「うう、花音」
「今は泣いていいさ」
実里も一番の友達である花音を失った事に涙を流し理子はそんな実里を慰めるのだった。
「どうやら生き残ったのはこれだけだな、R」
「ああ」
真央、沙月、唯、実里、理子、朱莉、里奈。
現在このエレベーターに乗っている七人がこの学園で動ける生存者達であり、彼女達が全滅した時こそこの学園は終わってしまうと言っても過言ではないだろう。
今、この学園の命運は彼女達にかかっているのだった。
「確か最上階に着いてそこから階段で上がるんだったな?」
「そうですね、階段を上がって扉があったらそこが屋上へと出る扉ですね」
「屋上で上空に向かって梓美と和久井先生が作った特効薬をその筒に入れて打ち上げれば学園全体に広がって感染した子達も元に戻って平和な学園生活が戻って来るって事だ、だが」
沙月は何とも言えない顔をする。
「ここまでゾンビ映画のような展開が続いてるからな、何て言うか、その、だな」
「わかりますよ、屋上に着く前にも何かありそうですよね」
ここまで本当にゾンビ映画とかでありそうな展開が続いていたせいもあるのか、すんなり屋上に着かないと考える子が多くいるのだった。
そしてそれは当然のように起きるのだった。
エレベーターが最上階の前で止まって扉が開く。
「な、何だ? まだ最上階じゃないのに何でエレベーターが止まったんだ?」
沙月がすぐに閉めるボタンを押すがエレベーターは反応せずに止まったままである。
「ダメだ、動かない」
「目的地までもう少しのところでの事故、これもゾンビ映画である展開ですね」
「仕方ない、屋上まではもうすぐだから歩いて行くしかないか」
真央達はエレベーターから降りて屋上へと向かって歩き出す。
「静かだな」
「ああ、恐ろしいほどにな」
真央と朱莉は自分達以外に誰もいない状況を不気味に感じていた。
さっきまで感染した子達がたくさんいたのに今この場所には誰もいない。
嵐の前の静けさとも言える状況だった。
そして、当然その静けさは突然破られる事になる。
どこからともなく感染した子達が姿を現すのだった。
「やっぱり、すんなり通してはくれないか」
「いつの間にかエレベーター方面からも大量に来てるぞ」
「階段からも上がって来ますね」
「ゾンビ映画でよくあるな、突然大量のゾンビが現れるとこいつらどこに隠れてやがったんだって」
「これは本当にいざって時に朱莉ちゃんを盾にするしかなくなって来たかもね」
「逆にお前を盾にしてやるよ!!」
「言い合ってる場合じゃないぞ、とにかく屋上に急ぐぞ」
真央達は屋上に向かおうと階段を上がっていく。
「え?」
実里が上がっている途中で足を止める。
「花音?」
実里の目には感染した子達と一緒にいる花音の姿が映った。
すると花音は実里に近づきそのまま抱き着いて押し倒すのだった。
「実里の気持ちを考えたら責める事はできない、行こう」
真央が言うと残ったメンバーで屋上を目指す。
「見えたぞ、あれが屋上だな」
すると屋上へと続く扉が見えてくる。
「おお、やっとゴールが見えてきたな」
「油断しないでください、感染した子達がすぐ迫って来ますよ」
ゴールが見えて安堵する沙月だが感染している子達がすぐそこまで迫っている事を唯が伝える。
「よし、行くぞ」
真央が扉を開けて行くと他の皆も続けて入り、全員が屋上に入った事で扉を閉めるのだった。
「後は、こいつを打ち上げるだけだな」
そう言って真央は特効薬を取り出すのだった。
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異変解決までもう少しです。
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