第434話 再びの逃走
特効薬を完成させ学園全体にこの薬を行きわたらせるために屋上を目指す事になるのだった。
だが感染した子達から逃れて屋上に向かうのはかなり難しいため真央はエレベーターで一気に屋上まで行けないかと提案するのだった。
「確かにエレベーターなら屋上まで行けて、そこから少し階段を上ると屋上への扉がある、本来生徒達は立ち入り禁止だが、今回は緊急事態だから問題ないだろう、私はそれで良いぞ」
真央の提案に和久井先生は賛成すると他の皆もそれが一番だと思ったのか頷いて賛成するのだった。
「よし、そうと決まったらすぐに行こう」
沙月の言葉に皆も頷いて屋上へと行くためエレベーターを目指そうとしたその時だった。
「梓美!! 後ろ!!」
「え?」
真央が言うが時すでに遅く梓美の背後から感染した生気のない目をした子が抱き着くのだった。
「うわあああああー!!」
「あずみん!!」
亜子が梓美に近づく。
「バカ、私から、早く、離れろ」
梓美はその場に崩れながらも亜子に自分に近づかないように手で制す。
「でも」
「いいから、はや、く」
梓美は静かになる。
「あずみん!!」
「ダメだ亜子!! 近づくな!!」
沙月が言った瞬間梓美は亜子を押し倒す。
「え?」
「はあ、はあ、亜子、亜子ぉ」
押し倒した亜子を見ながら梓美は息を荒くする。
「お前は、いつも私の事を嫁、嫁と言うが、本気かどうかがわからないから、どっちなのかハッキリしてくれよ」
「あずみん」
「お前は、私の事を嫁だと言っているが、それは冗談なのか? それとも本気なのか? なあ、ハッキリ言ってよ!!」
「あ、あずみん、わ、私は、私は」
「亜子」
「あずみん」
二人はお互いに向き合って二人だけの世界へと入っている。
「どうやら二人共感染してしまったようだな、ん? マズい、皆急げ!!」
真央が言うとそこにはたくさんの感染した子達であふれていたのでその場から逃げるのだった。
「ねえ、一体どこから皆来たのかな?」
「おそらく私達と同じように地下へと通じる階段を通ってここまで来たのかもしれませんね」
彩音の疑問に唯が答える。
「あれ? でもここって指紋認証しないと入って来れないんじゃ?」
「きっと感染した子の中にここに入れる子がいたんだよ、その子の指紋認証で入って来たんだと思うよ」
「そっか、梓美ちゃんだけじゃないもんね」
実里の疑問に花音が答えた事で実里は納得する。
「とにかく皆急いで!!」
佐藤先生が先頭を行くと培養液に隠れていたのか感染した子達が出て来て佐藤先生に抱き着く。
「え? きゃっ!!」
突然抱き着かれた事でバランスを崩してその場に倒れると他の感染した子達が佐藤先生に覆いかぶさって来る。
「ちょっと、待って、いやああああああー!!」
「先生ぇー!!」
佐藤先生が感染した子達に襲われて沙月が声を上げる。
「いやああああああ、あ~ん!!」
「先生?」
「沙月さん、止まってないで急ぎましょう!! 佐藤先生の犠牲を無駄にしてはいけませんよ!!」
襲われている佐藤先生の悲鳴に沙月は一瞬違和感を感じるが、すぐに唯に言われて走るのだった。
「なあ、さっきの佐藤先生、襲われているはずなのに、何か喜んでなかったか?」
「気のせいですよ、そう言う事にしておきましょう」
「ああ、まあ、そうだな」
沙月がさっき感じた違和感を言うが唯は気のせいだときっぱり言った事で沙月もこれ以上は何も言わずに納得する事にしたのだった。
そして一同は何とかエレベーター前まで到着したのだった。
読んでいただきありがとうございます。
唯の言う通り、そう言う事にしておけばいいんです。
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