第430話 地下施設
「地下施設、そこで僕の身体から取った細胞で特効薬を作るのか?」
真央が梓美に問う。
「そうだ、地下施設なら設備も道具も十分ある、特効薬を作るには最適の場所だ」
「地下施設って、ゾンビ映画のような展開が次々に出て来るな」
映画のような展開が続いたのか、朱莉はもういいだろとでも言いたそうな顔をしている。
「行くのは構わないし、僕の細胞を採取するのも良いが、この後どうするんだ? 地下に行くって事はここから出るって事だが、保健室の入口はああなってるんだが」
真央が指差した方は保健室の入口。
入口は感染した生気のない目をした子達が今も入口の扉を叩いている。
とてもじゃないがここから出るに出られない状況であった。
「それなら大丈夫よ」
佐藤先生が自分が使っていると思われる机の下にあるスイッチを押すと机が移動して床に地下へと続く階段が現れる。
『え!?』
全員がその仕掛けに驚く。
「さあ皆、私について来て」
佐藤先生に言われて全員がついて行くのだった。
階段を下りて行くといかにも地下道と言える場所であった。
「皆、電気がついているけど足元に気をつけてね」
「あの、佐藤先生」
「ん? どうしたの沙月ちゃん?」
「その、何ですかこの地下道は?」
沙月が問うと他の皆も気になっている様子だ。
「この地下道はね、各教室から避難できるように作られてるの」
「各教室にあるんですか!?」
沙月と同じように皆も驚く。
つまりさっきのようなスイッチが各教室にあると言う思わぬ新事実を知ったのだ、普通の学園ではないものがあるので驚くのも無理はない。
「ええ、もし授業中に災害などの非常事態が起きた時に避難できるように地下施設を作ったけど、地下への移動がエレベーターと階段だけだと混雑して避難が遅れる可能性もあるからスムーズに避難できるように各教室にさっきのような地下へと行ける階段を床につける事にしたのよ」
「す、凄いですね」
「ええ、もしテロリストや最悪の犯罪者集団が来たとしても大丈夫なように撃退用の要塞化機能も備わってるわ」
「要塞!?」
沙月に続いて全員が驚く。
「ええ、ありとあらゆる武装兵器が作動して、あなた達生徒を守る要塞学園となるわ」
「この学園は何か強大な組織や地球外生命体の侵略者とでも戦ってるんですか?」
「ふふ、面白い事言うわね、ここはただの学園よ、ちょっと防犯機能が高いだけだから安心して」
佐藤先生は生徒達を安心させるように言うが、沙月達は何とも言えない顔をしていた。
「それにしても、こんな機能があったなんて、ますますゾンビ映画みたいな感じになってきましたね」
唯が話題を変える。
彼女はどこかワクワクしている様子だ。
「唯、こんな時に何ワクワクしてんだよ?」
「だって凄いじゃないですか、こんなのゾンビ映画やゾンビゲームくらいでしか見た事ないんですよ? それが自分が通っている学園にあったなんて、まさに灯台下暗しとはこの事ですね」
「アンタねぇ、こんなとんでもない状況で何言ってるんだよ」
「でも、さっちゃん、こんな状況だからってのもあると思うよ?」
「そうだねぇ、加藤さんの言う通り気を張り過ぎても疲れちゃうし、今は安全って事だから少しくらいリラックスになると思うよぉ」
亜子の言っている事も一理ある。
危険な状況が続いてるからこそ、安全な場所にいる時はリラックスした方が今後の行動に支障が出る可能性は低くなるだろう。
「皆、着いたわよ」
佐藤先生が言うとそこには大きな扉があった。
「開けるわね」
扉を開けて中に入るとそこには広い空間が広がっていた、
「地下都市ですか、ここは?」
沙月の言葉に全員が同じ事を思った。
まるで一つの街とでも言いそうな空間であった。
「避難場所になった時に避難して来た人達がストレスを感じずに済むように色々と考えて設計したらこんな一つの街みたいな作りになってしまったそうよ、ちなみにこの避難場所は清涼女子学園初代理事長が提案したそうよ」
「初代理事長、どれだけお金持ちだったんですか?」
「噂ではかなりのお金持ちだったそうよ、世界の半分を手に入れられるくらい」
「どこの魔王だよ!?」
沙月がツッコむがそうこうしているうちにある部屋の扉の前で止まる。
「梓美ちゃん、ここで良いの?」
「はい、ここが研究施設の入口です」
そう言って梓美は扉の横にあるパネルに手をかざすと音がなり扉が開く。
「指紋認証ですか、徹底してますね」
「研究施設だからな、簡単に誰でも入れないように指紋入力している人以外はこの扉は開けられないようになっているんだ、ここからは私が先に進んで案内するよ」
そう言って梓美が先頭を歩き、真央達は後をついて行くのだった。
読んでいただきありがとうございます。
学園の地下には一つの街がありました。
清涼女子学園初代理事長恐るべし。
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