第429話 解決方法
「まあまあ、そんなにあずみんを怒らないであげてよ、悪気があったわけじゃないんだから」
「亜子、アンタは何で梓美の隣で同じように正座してるんだ?」
「そりゃ、嫁の責任は私の責任でもあるからね」
「誰が嫁だ!!」
「それで、その失敗作はどんな効果なんだ?」
叫び終わった沙月は冷静になり梓美に問う。
「惚れ薬に似たような物だからな、目の前の人物が魅力的な存在に見えてその人物に抱き着こうとする症状に駆られるそうだ」
「なるほど、それで皆執拗に追いかけて触れようとしたんだな」
「ああ、そして抱き着かれた人は感染して数秒くらい経つと感染者となりまだ感染していない人を襲うんだ」
「本当にゾンビ映画のゾンビだな」
「疑問に思ったんだが、何故感染している子達は感染していない子がわかるんだ、生気のない目をした子達も完全に感染していない子がわかっているかのように動いていたしな」
「それはだな、感染した子達は目の前の人物が魅力的に見えるとさっき話しただろ? 感染した子達は自分達と同じだからか感染した子には何も感じず感染していない子は魅力的に見えるそうなんだ」
「なるほど、それで魅力的に見える子を見つけて襲ってるのか」
梓美の答えに真央は納得するのだった。
「それで感染した子達は何も話す事はなくただ魅力的な人物を探して彷徨っているんだ」
「ん? 何も話さなくなる? ちょっと待て、感染した真理亜を見たが喋ってたぞ?」
「ああ、感染したばかりならまだ自我が残っていて喋る事ができるんだが、時間が経つとその自我も失って魅力的な人物を探して彷徨うだけの存在となってしまうんだ」
「真理亜さんや茜さん達が喋れたのは感染したばかりだったからなんですね、ですがあれから時間が経ってますし、真理亜さん達が目覚めた時には」
「ああ、おそらく自我を失って彷徨っているだろうな」
「ひえー、ゾンビ映画なら触れられても嚙まれさえしなければ感染する事はないけど、梓美ちゃんの作ったのは触れるだけで感染しちゃうんだもん、ある意味ゾンビより危険だよ、あれ?」
言っている途中で彩音が何かに気づいた顔をする。
「そう言えば、真央姉さん真理亜ちゃんに抱き着かれたのに何ともないよ?」
「何!? それは本当か!?」
彩音の言葉に梓美は驚く。
「そう言えば、確かに真理亜さんに抱き着かれてましたね」
「あー、そう言えばそうだったな」
唯と沙月も彩音に同意するように言う。
「R、本当なのか?」
「ああ、確かに僕は真理亜に抱き着かれたな」
「ちょっと待ってよ、大丈夫なの?」
「ああ、あれからかなり時間も経ってるが別に何ともないな」
朱莉と里奈の問いに真央は答える。
特に身体にこれと言った変化も起きていないようだ。
「そんなバカな、確かに触れられたら皆感染したのに」
「ねえ、もしかしてだけど、真央ちゃんにはその惚れ薬に似たような物に対する抗体があるんじゃないかしら?」
黙って聞いていた佐藤先生が言う。
「抗体?」
「ええ、元からそれに対する抗体を持っていたのなら、真央ちゃんが触れられたのに無事なのも説明がつくわ」
「だとしたら、何とかなるぞ!!」
絶望の中で希望を見つけたかのように梓美は立ち上がるのだった。
「この異常事態を解決できる方法がある、それは真央君の身体だ!!」
「僕の身体?」
「言っておくが別に変な意味じゃないからな」
「ああ、それはわかってる、それで僕の身体が何なんだ?」
「真央君の身体の中には私が作ってしまった惚れ薬に似た薬に対する抗体がある、つまり真央君の細胞を採取して、それで特効薬を作ればこの事態をどうにかできると思うんだ」
「なるほど、ゾンビ映画でよくある主人公が実はゾンビ化するウィルスに対して何故か最初から抗体を持っていたって奴ですね」
「おおー、と言う事はさしずめ宇界さんは主人公だねぇ」
正に映画のような事態になっているからか唯と亜子がどことなく興奮したように言う。
「Rがこの事態を解決する重要人物って事はわかったが、そんな特効薬どこで作るんだ?」
「そうだな、ここだと材料も設備も何もかも足りない、だからあそこに行く必要がある」
「どこに行くつもりだ?」
「あの薬を作った施設、つまりこの学園の地下施設だ」
朱莉の問いに梓美はそう答えるのだった。
読んでいただきありがとうございます。
解決方法が見えてきました。
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