第422話 会いに行った
「それで、どの子が朱莉ちゃんの友達なの?」
隣のクラスに行き、里奈は朱莉の友達を探しにキョロキョロと中を見ていた。
「ところで朱莉ちゃん、何で隠れてるの?」
「いや、そのだな」
朱莉は教室のドアからこっそり覗いている。
はたかれ見れば完全に怪しい行動をしている子供である。
「まあ、ぼっちの朱莉ちゃんには隣のクラスに行くだけでもかなりハードル高いからね」
「ぼっちじゃないと言っているだろ」
「はいはい、朱莉ちゃんにしては頑張った方だから、私が代わりに聞いてきてあげるよ、で、どの子なの? 名前は?」
「名前って、R」
「いや、それはゲームの中での名前でしょ? 朱莉ちゃんで言うリアルの方の名前よ」
「ああ、リアルの方の名前か、確か、宇界真央って名前だよ」
「え? 宇界真央って、あの有名な?」
「そう、その宇界真央だよ」
「・・・・・・マジで?」
里奈は不安な顔で朱莉を見る。
「おい、何だその顔は?」
「だって、朱莉ちゃんの友達があの宇界真央って、そんな事ってあるの? そんなラノベみたいな展開ってあるの?」
「そんなに疑うのかよ」
「だって、普通に考えてそんなラノベみたいな事現実に起こるのって思うじゃん、『ぼっちの私がゲームで知り合った友達は学園で有名な子でした』ってラノベのタイトルとして出そうな感じの展開だよ」
「最近のラノベみたいな感じのタイトルをつけてんじゃねえよ!! それと私はぼっちじゃないわ!!」
「朱莉ちゃん、そんな大声出したら目立つよ? ほら、皆見てる」
「え?」
里奈に言われて見ると確かに朱莉の大声に反応したのかクラス内の子達が一斉に朱莉に目を向けている。
「~~~っ!!」
恥ずかしくなった朱莉は里奈の後ろに隠れる。
「あー、やっぱりこうなっちゃったか、ねえ、そこのあなた」
「何?」
「宇界真央さんを呼んでもらっていい? 私達その子に用があるの」
「いいよ」
クラスの子に頼んでしばらくして真央が教室の入口に来るのだった。
「僕に用があると聞いたが?」
「ああ、ごめんね、私じゃなくて用があるのはこっちよ」
「ん?」
「よお、R」
里奈の後ろから朱莉が姿を見せる。
「おお、あかりんごじゃないか、何か用か?」
「ああ、今度ゲームで遊びたいと思ってさ、その約束をしたいと思って来たんだ」
「なるほど、遊びの約束か」
「真央、その子誰だ?」
会った事ない子と話をしているのが気になった沙月が真央に問う。
「ああ、この子はな」
真央はあかりんごこと朱莉についての説明をする。
「真央ちゃんがオンラインゲームで友達になった子なんだ」
「それでこの前の休日でスーパーのゲーセンで真央姉さんに会って」
「その子が真央とよくオンラインゲームで組んだり対戦していた子で」
「そしたら、その子は真央さんと同じこの学園の生徒だった、と言う事ですか?」
「ああ、そう言う事だ」
⦅そんな、ラノベみたいな展開が実際にあるんだ⦆
真央の説明を聞いた真理亜達は内心で同じ事を思うのだった。
「えっと、あなたが真央ちゃんのお友達で良いの?」
「ああ、水瀬朱莉だ、よろしく」
「あ、高梨真理亜です、よろしくね」
「ん」
真理亜と朱莉は自己紹介するが朱莉は素っ気ない感じの態度なので真理亜達もどう反応すれば良いのか困っている様子だ。
「はーい、私、朱莉ちゃんの友達の東山里奈だよ、皆誤解しないでほしいんだけど、朱莉ちゃん素っ気ない態度に見えるけど、これただ緊張してるだけだから」
「え? そうなの?」
「うん、そうだよ」
真理亜の問いに里奈は頷いて答える。
「うん、朱莉ちゃんって人との付き合い方や接し方がよくわからなくて、緊張して素っ気ない態度になる事が多いんだ、そのせいで話し掛けてほしくないのかもしれないって勘違いされる事が多くてさ、あまり友達がいないんだよ、いわゆるぼっちって奴だね」
「誰がぼっちだ!!」
「そうなのか? けど、あかりんご、お前僕と初めてリアルで会った時はそんなでもなかっただろ?」
「Rとはゲームでチャットとかもしたから特に緊張する事もなかったんだよ」
「なるほど」
「R? あかりんご?」
真央と朱莉が呼び合っている名前に真理亜は首を傾げる。
「おそらくですが、ゲームでのプレイヤー名で呼び合ってるのでは?」
「ゲームで使うニックネームみたいなものだな」
「あ、そうか、真央姉さん達最初はゲーム内で会ったからそれで二人共そっちの呼び方の方が慣れちゃったんだね」
「なるほど」
唯の言葉に真理亜達は納得するのだった。
「それにしても、朱莉ちゃん本当に私以外にも現実に友達がいたんだね」
「何だよ、悪いかよ?」
「ううん、むしろ私は嬉しいよ、あのぼっちの朱莉ちゃんが私以外にも友達ができたなんて」
里奈は感動で手で涙を拭うような仕草をする。
「朱莉ちゃん、私意外で友達と言える子がいないから、私がいなくなった時どうなるのかなってずっと心配してたんだけど、私の知らない所でちゃんと友達ができていたんだね、お姉ちゃん嬉しいよ」
「お前はいつから私のお姉ちゃんになったんだ、後、ぼっちじゃねえよ」
「真央ちゃん、朱莉ちゃんはちょっと誤解されやすい子だけど仲良くしてあげてね」
「ああ、良いぞ」
「うん、ありがとう」
「あ、じゃあ私達もお友達になって良いかな?」
真理亜が手を上げて言う。
「え? 良いの?」
「うん」
里奈の言葉に真理亜が頷く。
「あ、じゃあ私もなるよ」
「まあ、友達が増えるのは良い事だしな」
「これも何かの縁ですね」
「うう、皆ありがとう、良かったね朱莉ちゃん、友達が一気にできたよ、これでぼっち卒業だね」
「だからぼっちじゃねえよ!! 私の意思無視して勝手に進めるな!!」
「え? じゃあ、朱莉ちゃんは友達いらないの?」
「うぐっ」
朱莉は真理亜達の方に顔を向ける。
「・・・・・・えっと、その、私と友達になってください」
『良いよ』
朱莉の言葉に真理亜達はそう答えるのだった。
こうしてぼっちの朱莉にたくさんの友達ができたのだった。
「だからぼっちじゃねえ!!!」
読んでいただきありがとうございます。
朱莉もぼっちじゃなくなったようで何より、おや、誰か来たようだ。
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