第38話 帰り道の出来事 2
真央がリズと下校する少し前、真理亜達は帰りながら話をしていた。
「それにしても、リズ先生が真央ちゃんの保護者なのはびっくりしたね」
「親を亡くしたと言ってたし保護者となる人がついて来ているとは思ってたけど、教師になったのは真央自身も驚いてたみたいだしな」
「うん、真央姉さんも知らなかったって言ってたしね」
「真央さんをびっくりさせるサプライズですね」
話の内容はリズについてだった。
綺麗な先生だということもそうだが、まさか真央の保護者代わりだという事には驚いていた模様。
「ねえ、皆は真央ちゃんの事どう思う?」
ここで真理亜が真央の事について聞く。
それを聞いた彩音達は疑問を感じた。
「真理亜ちゃん、どうしたの?」
「真央の事どう思うって?」
「真央さんと何かあったのですか?」
三人が真理亜に問う。
「ううん、真央ちゃんと何かあったわけでもないし、ケンカしたとか嫌いになったとか、そういうのじゃないから」
「じゃあ、何なんだ?」
「よくわからないんだけど私、真央ちゃんの事、よくわかっていないのかなって」
「よくわかっていないですか?」
「うん、真央ちゃんは大切な友達だけど、でも遠くにいる人みたいな、私達とは違う世界を生きている人みたいなって、あ、ごめんね皆変な事言って」
「いや、何となく真理亜の言いたい事はわかるよ」
「うん、私も真理亜ちゃんと同じで真央姉さんは私達とは違うって感じる時があるよ」
「そうですね、私も真央さんが本当に私達と同い年なのかって思う事がありましたから」
真理亜の言い分に彩音達も何となく心当たりがある事を感じていた。
「この間、跳び箱の授業の時も真央が跳び箱って何だって聞いてきた時には何かの冗談かと思ったがあまりにも真剣に聞いてきたから本当に知らないのかって思ったよ」
「それだけじゃないよ、真央姉さん野球もサッカーもバスケもルールどころか名前すら聞いた事ないって言ってたけど、あの時の顔は嘘をついている感じじゃなかったから、本当に知らないんだと思うよ」
「そう言えば、テレビとか電話とかも知らないと言っていましたし今も道路で普通に走っている車すら聞いた事すらないとおっしゃっていましたね」
彩音達は真央に関して何かを感じていた模様。
歩いている途中、信号が赤になったので真理亜達は歩みを止めた。
「そう言えば真央ちゃんこの信号機の事も見たことも聞いた事もないって言ってたよね?」
「ああ、さすがに驚いたよ、いくら何でもそれぐらいは知っているだろうと思っていたからな」
「私もびっくりしたよ、聞かれた時は真央姉さん一体何言ってるのって思ったもん」
真理亜達にとっては当たり前の物を何も知らない真央に真理亜達はただ驚いていた。
「でも、これだけ何も知らないという事は真央さんってどのような国に住んでいたのでしょうか?」
ここで唯が真央に対する疑問を言う。
「確かにこれだけ何も知らないとなると、どこかの部族なのかと思ってしまうな」
「でも、真央さんもリズ先生もそういう感じではありませんでしたし」
「少なくとも日本に引っ越して学園に通ってるって事はお金持ちの家の子だと言うのは確かなんじゃない?」
「確かにうちの学園お金持ちのお嬢様じゃなきゃ通えないからな」
「だったら真央ちゃんの住んでいた国ってそれなりの国になるよね」
真理亜達は真央について色々意見を言い合う。
「でも、それなら知っていてもおかしくないのですが」
「そう言えば真央の住んでいた国って時々敵が来て追い払うとか言ってたよな」
「テレビや電話や車などを知らなくて、部族でもなくそれなりの国でお嬢様で敵が来る国って」
「どんな国だよ!」
沙月はもはやわからないとでも言う様に突っ込む。
「・・・・・・あ! もしかして」
ここで唯が何かを思いついたかのように声を上げる。
「どうしたんだ、唯?」
沙月は唯に聞く。
「真央さんは、実はとある国のお姫様だったのではないでしょうか?」
「「「え?」」」
唯の発言に真理亜達は何を言い出すんだと言うような顔をする。
「真央さんは実は前に住んでいた国のお姫様であり、ずっと城の中で過ごしていたから、だから知らない事が多いのかも知れません、箱入り娘ですね」
「はあ」
「ですがその国は敵が多く、攻めてくる国に応戦して何とか防ぎ切っていたのです」
「それで」
「やがて敵の進軍にとうとう防ぎきれなくなりこのままでは王国も滅んでしまう危機に陥ってしまうのです」
「おいおい」
「だから、国王は愛する娘である真央さんだけでも逃がそうとしたのです、リズ先生は真央さんの護衛として共に逃げ出したのです、結果真央さんは逃げ延びましたが代わりにお父様とお母様を」
「おい、唯」
「さらに、共に逃げ切ったお姉様も病にかかってしまいそのまま」
「もしもーし、おい唯、もしもーし」
「そして、大切な人を失った真央さんはこの国に来た時にはもう心を閉ざし子供とは思えない大人の振る舞いをするようになってしまったのです、なんて悲しい運命でしょう」
「えーい! いい加減戻ってこんかー!!」
沙月のツッコミにより唯は入ってしまった自分の世界から戻ってきた。
「ハッ!? 私ったらまた、ごめんなさい」
「おお、戻ってきたか」
「真央姉さんがお姫様なのはさすがにだけどお金持ちなのは間違いないと思うよ」
「まあ、確かに学園に通っているんだからそこは間違いないと思うな」
「と言う事はやはりどこかの貴族のお嬢様で、そうか実は信じていた使用人の中に裏切者がいてそして」
「だから、戻ってこーい!!」
唯がまた自分の世界に入りそうだったので速攻で沙月が戻した。
「でも、こうして考えれば考えるほど真央ちゃんの事、何もわかっていないって思ってしまうよ」
「そうですね、真央さんあまり自分の事話そうとしませんしね」
「まあ、良いんじゃないか真央が話したくないならそれで」
「「「え?」」」
沙月の発言に真理亜達は疑問に思った。
「だってそうだろ? 誰だって話したくない事ぐらいあるし、真央が話したくないなら無理に聞く必要なんてないだろ?」
「確かにそうだけど」
「それにこれだけは確かな事があるだろ?」
「「「確かな事?」」」
「真央が私達の友達だという事これは本当の事だろ? って何恥ずかしい事言ってるんだ」
沙月が自分で言った事を恥ずかしがっている。
しかし、皆は笑っていた。
「うん、そうだね」
「真央姉さんは友達だよ」
「確かにそうですね」
「まあ、とにかく自分の事を話さないからって私達が真央の事友達じゃないとは思わないだろ? 大事なのは真央自身の事を知るよりもどうすればもっと仲良くなれるかじゃないのか?」
「「「おおー」」」
「って私はまた何を恥ずかしい事を言ってるんだ」
沙月はまたもや自分の言った事を恥ずかしがっていた。
「確かに沙月ちゃんの言う通りかも、真央ちゃんの事何もわかっていない事に気を取られて大切な事を忘れていたかも、真央ちゃんともっと仲良くなりたいって気持ちはあったのに」
「それは仕方ないよ真理亜ちゃん、だって真央姉さんと仲良くなりたいなら真央姉さん自身の事を知りたいと思うのは当然だよ」
「真央さんともっと仲良くなるのは良いですけどどうすればいいのでしょう?」
唯の発言に真理亜達は考える。
「そう言えば、もうすぐあの日が来るよな?」
「あの日って、あ、そうか!!」
「そう言えば、もうすぐあの日ですね」
「あの日が来れば、真央ちゃんと一緒にいられる時間が多くなるかも」
真理亜達は何かを思い出したかのように話し合う。
「ふっふっふ、覚悟しておきなさいよ真央、アンタに楽しい思い出をたくさん与えて、もっと仲良くなってやるんだから」
「さっちゃん、何か言い方が悪役みたいな感じがするよ」
果たしてあの日とは一体何なのだろうか。
読んでいただきありがとうございます。