第410話 獣人生活 14 獣人スポーツ 9
「どう言う事ですの? この怪奇現象のようなものを可能にする獣人がいるですって?」
唯の言葉に茜だけでなく他の子達も驚く。
「ええ、いますよ」
「で、ですが、何もない空間でボールの動きが変化する超能力みたいな事ができる動物なんていませんよ?」
「確かに友里子さんの言う通り超能力が使える動物は存在しませんよ、だってその獣人はちゃんとボールに触れていたんですから」
唯の言葉にますます全員の頭に?マークが浮かび上がる。
「え? どう言う事?」
「ですから、その何もない空間にその獣人がいたんですよ」
「ふえ~?」
唯の説明を聞いても彩音は全くわからず今にも目が回りそうな勢いである。
「何もいない空間にいたって、そんな透明人間でもいたとおっしゃいますの? 透明になれる獣人なんているわけが・・・・・・あ、ああ!!」
ここで茜はある事に気づく。
「五十嵐さん、わたくしにもわかりましたわ、確かに一人だけいますわ、この怪奇現象を可能にできる獣人が一人だけ」
「透明、獣人、ふふ、そう言う事ね、全部わかったよ」
茜に続いてめぐるも答えに辿り着く。
「今もそこにいますね、姿を見せたらどうですか? もうわかっていますよ、実里さん」
唯が言うと何もない空間から実里が姿を現す。
「真央ちゃん、バレちゃったよ」
「問題ない、唯あたりが気づくと思っていたからな」
「あ、そうか、実里ちゃんって確か」
実里の姿を見て彩音もようやく全てわかったようだ。
「あー、そう言う事ね」
「なるほど、橘さんはカメレオンの獣人、カメレオンは擬態で周りの景色に溶け込む事ができますから、それで透明人間のような現象が起きていたって事ですか」
「怪奇現象じゃなかったんだね、残念」
奈木と友里子も納得するが、めぐるだけは残念そうにするのだった。
「しかし、短時間でよく消える時間長くなったよな」
「元からできるって感じがしたからちょっと集中したら長時間消える事ができるようになったよ」
実里は沙月にピースをして答える。
「でも本当に大変だったよ、ずっと消える練習してて試合なんてサーブ以外してなかったし」
実里はその時の事を思い返すのだった。
~回想 バレーの試合が始まる前~
「こっちはこの六人だな」
真央が自分のチームを見ながら言う。
「獣人になったから全員運動神経は良くなってるな」
「うん、私いつも運動苦手で足を引っ張ってるけど、今日は大丈夫な気がするよ」
気合を入れて真理亜は言う。
「私がいるから大丈夫よ、だって私消える事できるもん」
そう言って実里はその場で消えて見せる。
「カメレオンの擬態か背景に溶け込んでるな」
「でも、すぐに戻っちゃう」
姿を消してから数秒で実里は姿を現す。
「その姿を消すのもっと長くできないのか?」
「うーん、わからない、でも最初からできそうな気がしてたから練習すればもっと長く消える事ができるかも」
「じゃあ、こうしたらどうだ」
こうして真央に言われて実里は今までの試合中自分のサーブ以外は透明化の練習をしてコツを掴んだのか透明化できる時間が長くなったのだった。
~回想 終~
「これでお互いに出せる手は全て出した」
「ならば、ここからやるべき事はただ一つ」
「「全力で勝利を取りに行く」」
真央と茜、お互いに出せる手は全て出し尽くした。
ここからはお互いに全力を出し尽くすのみ。
試合は決着へと向かって行くのだった。
読んでいただきありがとうございます。
不思議現象の正体は実里と判明して試合も大詰めです。
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