第409話 獣人生活 13 獣人スポーツ 8
「ふふ、やっぱり気になるよね、私のこの腕」
言ってめぐるは腕を上げる。
普通の人間の腕よりも長い腕であり、見る人によっては気味が悪い光景でもある。
「私、テナガザルの獣人なんだよね」
「テナガザル、だからそんなに腕が長いのか」
「腕が長い感覚ってどんな感じなんだ?」
「うーん、何だろうね、手が長いのには最初驚いたけど感覚としては耳や尻尾と同じように最初からこうだったって感じで違和感も何もなく普通に扱えたんだよね、ほら、こんな風に色々動かせるよ」
言ってめぐるは長い両腕を器用な感じに動かす。
普通の状態の腕ではありえないような動きをしているので見る人にとっては気味悪いものとも言えるだろう。
「手が長いからある程度の距離でもボールに手が届くか、厄介だな」
「そうだな」
「おーほっほっほ!! これこそ最強のチームですわ!!」
「くっ、悔しいがその通りだな」
沙月は拳を握り悔しそうな顔で茜を見る。
「だが、こっちも手の内をを全て明かしたわけじゃないぞ」
しかし、すぐに茜に指をつきつけ言う。
「こっちにもまだ切り札は残っているぞ、勝負はまだこれからだ」
「あら、面白い事をおっしゃいますわね、なら見せてもらいましょうか」
「おう、見せてやるぞ」
そう言って沙月は真央に所に行く。
「悪い真央、勢いで言っちゃった」
「問題ないさ、それにお前の言う通り勝負はこれからだし、あいつもそろそろできてる頃だと思うしな」
「本当か? なら、もう大丈夫なのか?」
「ああ、いけるか?」
真央はある人物に問うとその人物は頷いてガッツポーズをして見せるのだった。
「さあ、どこからでもかかって来なさい」
「じゃあ、遠慮なくいくぞ、おらぁ!!」
茜の挑発に乗り沙月は思い切りサーブを打つ。
「単純なサーブですわね、簡単に拾えますわ」
茜が沙月のサーブを拾いトスと繋げて彩音がスパイクを打つ。
「うりゃー!!」
彩音が思い切りスパイクを打つがブロックされて誰も拾えずに点を取られるのだった。
「え?」
しかし、彩音は信じられない顔をしていた。
それは彩音だけでなく茜達も同じであった。
「ねえ、今起きた事をそのまま言うけどさ、私思い切りボールを打ったら見えない壁に当たって跳ね返ったんだけど、おかしい事言ってるのはわかってるんだよ、でもそうとしか言えないんだよ」
「大丈夫ですわ、加藤さんがおっしゃったようにわたくしにもそう見えましたわ」
茜が言うと他の子達も皆頷く。
皆にも同じ光景に見えたようだ。
「ど、どういう事なの?」
「と、とにかく続けますわよ」
状況がよくわからずに試合は続くがまたもや不可思議な現象が起きる。
「よし、行け」
沙月がトスを上げる。
トスを上げた先にはミーシャがいたので茜達は誰もがミーシャがスパイクを打つと思って構えると沙月とミーシャのちょうど中間あたりの何もない空間でボールが突然茜達のコートへと落ちていき点が入る。
「ど、どうなっていますの?」
その光景に茜の理解は追いつかない。
「はっ!!」
奈木がスパイクを打つとそこには真理亜がいたがレシーブをせずにボールは真理亜の横を過ぎていくがボールが地面に着く前に突然上に上がる。
「は?」
「おっしゃ、チャーンス!!」
茜達が驚いているとその隙をついて沙月がスパイクを打って点を入れる。
「タイムをお願いしますわ」
茜が言うと茜達は集まって話し合う。
「どういう事ですの? 本当にどういう事ですの? 全くわかりませんわ」
「うん、誰もいないのに突然ボールが・・・・・・はっ!!」
彩音が何かに気づくと顔を青褪める。
「ま、まさか、幽霊!?」
「ふふ、私達が楽しくバレーをしているのを羨ましがって途中から入って来たって事? ふふふ、ならぜひ姿を見せてほしいね」
「いやいや」
「さすがにそれはないでしょ」
彩音はガタガタと震え、めぐるは興奮しているが奈木と友里子が否定する。
「・・・・・・」
「あら、五十嵐さんどうしましたの?」
「わかりましたよ、この現象の正体が」
唯が言うと全員が唯を見る。
そして唯は言うのだった。
「いますよ、たった一人だけこの現象を可能にする獣人になった人が」
読んでいただきありがとうございます。
めぐるはテナガザルの獣人でした。
そして不思議現象の正体とは?
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