第37話 帰り道の出来事
放課後の時間。
レイアは教師として学園に来たリズと一緒に下校していた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
しかし、二人には会話らしいものがなかった。
いつもなら何か会話をするのだが今は全くそれがない。
(これってやはり、私がレイア様に黙って勝手に教師になったのが原因なのでしょうか、だからレイア様は怒って何も話して下さらないのでは!?)
リズは心の中でそんな事を考えていた。
主であるレイアに何も言わず勝手に行動を起こした事、それはレイアの意思を無視した事になるのではないか。
それでレイアは一言も話してはくれないのではないか。
そんな事を思ってしまっていた。
(でも、そんな事でレイア様がお怒りになるとは思えませんし・・・いや、私が勝手にレイア様をそういうお方だと勝手に思ってるだけで、実は物凄く怒っているのでは!?)
リズの心の中はさらに深く考えていた。
(そうですよ、レイア様は最強の魔王などと言われていても中身はとても純粋な心を持ったお方)
リズの心の中はさらに冷や汗をかいたような感じになっていった。
どんな感じだ。
(わ、私は何て事を、いくらレイア様を驚かせようとサプライズだと言っても、レイア様の純粋な心を傷つけるような事になってしまったのでは!!?)
リズの心の中は余裕を持てない状態になっていた。
(ああああああああああああああああああああ!! どうすればいいのですか!? 幹部の一人でありながらレイア様に対して何て事を、これではリゼやゼナに合わせる顔が無い!!!)
リズの心の中はもはや悲鳴を上げるほど限界に近付いていた。
「れ、レイア様」
「ん? どうしたリズ?」
リズの声に返事をするレイア。
「申し訳ありません!!」
そう言ってリズはレイアに頭を下げてきた。
「おい、どうしたリズ!? いきなり」
レイアはリズのいきなりの行動に驚く。
「周りに人がいるんだぞ!? 見られたらマズいだろ!?」
「それなら大丈夫です、認識阻害の魔法を使ってますから」
「そうか、ならいいが急にどうした?」
レイアは落ち着きを取り戻しリズに問いかける。
「はい、レイア様を怒らせてしまったので」
「は? 僕が怒ってる? 何で?」
「ですから、私がレイア様に何も相談せず勝手に教師になってしまってレイア様に迷惑をかけたのではないかと思いまして」
「いや、別に僕は怒っていないけど」
レイアは怒っていない事をリズに伝える。
「え? では何故、何も話さないのですか? てっきり怒っていたからなのではないかと」
「別に大した事じゃないさ、ただ話題が思いつかないから何も言わなかっただけさ、怒っているわけじゃない、だから気にするな」
「そうだったのですか」
レイアの言葉に安心するリズ。
「まあ、教師になる事は確かに相談してほしかったとは思うけど」
「やはり、怒っているではないですか」
「いや、そうじゃなくてお前に無理をさせたくなかったんだ」
「え?」
レイアの言葉にリズは疑問の声を上げる。
「だから、こっちに来て僕の身の回りの世話や家事などをやってくれているのにこれ以上仕事を増やすのもどうかと思っていたんだ、だからお前が真理亜を守る方法を考えた時は嬉しかったが同時にお前に負担をかけさせて良いのかと思った、だから相談してほしかったんだ」
「レイア様」
人間界に来てからレイアの世話はリズが一人でしてくれた。
家に帰ってからの家事とかも全部リズがしてくれた。
それだけでも大変だと言うのにさらに真理亜を守る方法を自分なりに考え、そして教師になってレイアと同じ学園に来てくれた。
嬉しい気持ちもあったが、ただでさえ忙しいリズに真理亜を守りさらに教師として勉強を教えるなど仕事が増え負担をかけることがレイアにとっては良いのかと思ってしまっていた。
元々真理亜を守りたいと言う自分の身勝手に付き合ってくれたリズに負担をかけさせるのが申し訳ない気持ちになってしまっていた。
だから、せめて話し合って決めたかったとレイアは自分の意思をリズに伝えた。
「レイア様、私のためにそのような事を思ってくれていたのですね」
「ああ、付き合ってくれているんだ、無理してほしくないんだ」
「ありがとうございます、ですが大丈夫ですよ、私がしたいからしているのです、それにレイア様」
「何だ?」
「私はレイア様の配下です、レイア様の手足となって動くのは当然ですレイア様が一言命じてくだされば他の何よりも優先しますレイア様が真理亜様を守りたいと言うのなら私もレイア様のためになる事をするだけです、そしてレイア様のお役に立てるのは配下の我々にとってはこの上ない喜びなのです」
リズは真剣な顔でレイアに言う。
そして。
「ですからレイア様、我々配下を遠慮なく使ってください、あなたの助けになりたいのです」
リズは微笑みながらレイアに言う。
「そうか、ありがとう」
レイアはリズに感謝の言葉を言う。
「では帰りましょうか、認識疎外の魔法も解きますので」
そう言ってリズは認識疎外の魔法を解く。
「そうだ、リズ」
「はい」
帰ろうとした途端レイアはリズを呼び止める。
「次は僕にも相談してほしい、僕はお前を信頼しているからな」
それを聞いたリズは。
「はい、レイア様」
笑って答えるのだった。
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