第391話 またやって来た、ゴールデンウィーク 34 かつての配下との会話
「以上が私が彼女と会った経緯ですね」
シエラはヴァレンティアと出会った経緯を話し終える。
「なるほど、そう言う事だったのか、それにしても感情によって変化した姿とヴァンパイア族にしてはありえない早さの再生能力と再生する度に強化する身体か、確かに何かあると考えた方がいいが、そう言えば記憶を見る魔法を使えたよな? それで見れないのか?」
「もちろん使いましたが、見る事ができませんでした」
「見る事ができない?」
「はい、見ようとすると疎外されて記憶の映像を見る事ができなくなっていたのです」
不思議そうな顔をしながらシエラは答える。
「記憶を覗くと疎外される、ヴァンパイア族にそんな力はないはずだ、と言う事は」
「おそらく何者かがあらかじめヴァレンティアにそういう魔法を掛けていたと考えられます」
レイアの言葉にリズが続けて言う。
「何故そんな事をと思うが、それは本人に聞いた方が早いな、シエラ」
「はい」
シエラはヴァレンティアの頭に触れて眠っている相手を強制的に目覚めさせる魔法を発動する。
「んっ」
シエラの魔法によって気を失っていたヴァレンティアは目を覚ます。
「目が覚めたか?」
レイアが目を覚ましたヴァレンティアに話し掛ける。
「・・・・・・」
「久しぶりだなヴァレンティア、まあ、お前は僕の事を覚えていないかもしれないがな」
「まさか、レイアなのか?」
「僕の事を覚えていたのか、会ったのは一回か二回くらいだったはずだが」
「魔王の娘なのに出来損ないだったから嫌でも覚えているさ」
「は?」
出来損ないと言う言葉を聞いた瞬間、シエラはヴァレンティアに怒りを向ける。
「レイアお姉ちゃん本人の前で出来損ないとは、今すぐ始末しましょう」
「落ち着けシエラ、聞かなきゃならない事がある」
「・・・・・・はい」
不機嫌な顔をしながらもレイアの言う事を聞いてシエラは大人しくなる。
「それでヴァレンティア、お前に聞きたい事がある、シエラから聞いたがお前はヴァンパイア族ではありえない力を手に入れたそうだな、どうやってそんな力を手に入れた?」
「はあ? 何でお前に話さなければならないんだ?」
「いいから話せ、この状況で黙っていても仕方ないだろ?」
「はっ!! 魔王の出来損ないの娘と言われたお前が何を偉そうに言う、お前のような出来損ないが生まれてあの二人もさぞがっかりだったろうな」
「あの二人? それは父と母の事か?」
「ああそうさ、双子の姉の方は優秀なのにお前は出来損ない、だからあの二人は裏切られて殺されたんだよ!!」
「どう言う事だ?」
「お前の父と母は何故裏切られたのか、それはお前の存在が原因なんだよ」
「ヴァレンティア!! レイア様に対して何て無礼な事を!!」
レイアに対するあまりにも無礼な態度にもヴァレンティアは鼻で笑う。
「リズ、お前だって気づいてただろ? こいつがあまりにも出来損ないだったから不満に思っていた配下達も多くいた事を、お前だってその一人だっただろ?」
「それは」
ヴァレンティアの言葉にリズは言葉に詰まるがそんな姿など意に介さずにヴァレンティアは続ける。
「レイア、お前が出来損ないだったから不満に思う配下達が多くいたんだよ、姉は優秀だったから何も問題はなかったが、妹のお前が出来損ないだと他の魔王達に示しがつかなかったんだよ」
「・・・・・・魔王には出来損ないの娘がいる、それだけでその魔王は他の者達から軽く見られてしまうからか?」
「さすがにそこはわかってたか、そうだ何か一つでも突出した才能があればまだ何とかなったかもしれないがお前にはそれが何一つなかった、それを配下達は不満に思ってたんだよ、もしも姉の方に何かあれば後継者は出来損ないのお前になるんだからな」
「ヴァレンティア!! いい加減に・・・」
リズが何か言おうとするがレイアが手で制す。
「言いたい事はわかった、それよりお前のその力はどうやって手に入れた? 僕の質問に答えろ」
「だから何で私がお前の質問に答えなきゃならない?」
「いいから答えろ」
「出来損ないが、まあ、お前の父親も母親も出来損ないだから仕方ないか」
「何?」
ヴァレンティアの言葉にレイアの目が鋭くなる。
「お前の父は甘いんだよ、争いを好まない? 無益な殺しをしない? 意味がわからない、強さこそが全てだ先代の魔王はよくわかっていた、だから私はあの男の配下になった」
「先代、僕の祖父か」
「そうだ、あの男は他者を圧倒するその強さで自分の領地を広げていった、配下もその強さで従えた、実にわかりやすくて良かった、強さによる支配だから誰もあの男に手を出そうと思わなかった、それに比べてお前の父親は甘いだから配下に裏切られて殺されたんだ、配下に裏切られるなんて出来損ないだろ?」
「・・・・・・」
ヴァレンティアの言葉を黙って聞いているレイア。
その顔は何を考えているのかわからないがそんな事など気にせずにヴァレンティアはさらに続ける。
「お前の母親もそうだ、あの男の娘のくせに甘い女だった」
レイアの父と母を罵倒するヴァレンティアにシエラとリズは今にも殺しに掛かる勢いだがレイアが制しているため必死で抑える。
イゴールは自分は部外者のようなものなのでレイアに全て任せて冷静に聞いている。
「あの男のようにならずに育ったのなら、お前の母親も出来損ないだ、出来損ない同士なら出来損ないが生まれるのも当然か」
「・・・・・・もういい、黙れ」
「お前の姉も優秀だと言ったが、こっちの世界で死んだと聞いたからな、お前のような出来損ないに魔王の座を譲ったのならお前の姉も出来損ないだな!!」
「黙れ」
「お前の父親も母親も姉も皆出来損だったんだよ!!」
「黙れ!!」
レイアが魔力を解放させる。
それを受けたヴァレンティアは全身に冷や汗をかく。
「聞こえなかったのか? 僕は黙れと言った、そして僕の質問に答えろと言ったんだが?」
そう問いかけるレイアの目は今にも誰かを殺そうとする、殺意の籠った目だった。
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レイアの地雷を踏みまくってしまったヴァレンティア、果たしてどうなるか。
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