第390話 またやって来た、ゴールデンウィーク 33 シエラVSヴァレンティア 7
「その姿は何ですか?」
シエラは目の前にいるヴァレンティアと思われる者に問う。
思われると言うにはヴァレンティアの見た目があまりにも変わっていたからだ。
身長が倍の大きさになっており、背中にはコウモリのような大きな羽が生えさっきまで整っていた髪が乱れまくり鋭い牙や爪が生えていた。
「野獣のような感じですね」
「あー、本当にムカつく」
「自我があるのですか!? そんな暴走形態みたいな見た目で!?」
ヴァレンティアの自我がハッキリしている事にシエラは驚く。
どう見ても自我を失った姿に見えるからだ。
(どう考えてもこれはヴァンパイア族の力ではない、やはり何かしらの方法でありえない力を手に入れたと言って良いですね、その力が本人の感情が不安定になった事であんな暴走形態みたいな見た目になった)
「ムカつくのに、頭はすこぶる良い気分、おまけに力が溢れる、これでお前を殺してやる、殺してやるうぅぅーーーーーーーーー!!!」
ヴァレンティアは勢いをつけてシエラに突撃する。
今までと違い明らかにスピードもパワーも桁違いに上がっている。
「ふむ、身体がデカくなったのにスピードがむしろ上がっていますね、おそらくパワーも上がっていると思いますね、ですが」
シエラは躱すでも受け流すでもなくヴァレンティアに向かって行きヴァレンティアの顔面を蹴るとそのままヴァレンティアは飛ばされ結界に当たり倒れる。
「身体がデカくなった分、攻撃も当てやすくなりますし、このくらいの強化ならこのままでも十分でしょう、むしろ覚醒を使わなくても勝てますしね」
シエラの言う通り本当は覚醒を使うまでもなく全体の四割くらいの力でヴァレンティアには勝てたのだが、相手の戦意を喪失させるために覚醒を使ったのだ。
ヴァレンティアの予想外の変化には驚いたが、それでも覚醒を使わなくても勝てる程度の変化だったのだ。
「まあ、強化したのなら私の攻撃に耐えられる時間も伸びると思いますし、練習時間が増えたと思って良しとしますか」
「練習時間が増えただと? お前が死ぬ時間が早まったの間違いだろ!!」
ヴァレンティアは羽を広げ空高く飛び上がる。
「はあ!!」
手に魔力を込めてシエラに向かって放つ。
「空からの攻撃ですか、おや?」
放った魔力の塊のスピードが上がっている事に気づいたシエラは躱すタイミングがずれてくらってしまう。
「まだだ!!」
両手をかざすと両手から魔力の塊がマシンガンのように連続で放たれる。
結界で周りを覆ってるので放たれた魔力の被害は結界内だけなのでそんなに被害はないがそれでも結界内の地面に穴が空いてしまうのだった。
「少しやりすぎたか、魔力も消えたし、これじゃ」
「跡形もなく消えてるかもしれない、と思ってますね?」
「何!?」
声のした方を向くとヴァレンティアの背後にシエラが立っていた。
「お前!! 何で!?」
「何でと言われましてもただ避けてあなたの背後に回っただけですが?」
「そうじゃない!! 何でお前が生きているのかって聞いてるんだ、確かに魔力が消えたはずなのに」
「ああ、それなら答えはこれですよ」
シエラが手をかざすと隣にシエラがもう一人現れる。
「身代わりの魔法、自分の魔力を使って自分と同じ姿の身代わりを作り出す魔法ですよ、私の魔力を使ってますから、身代わりの私も私の魔力を纏っていますし、おまけに魔力を連射したから爆風でちょうど目くらましになったから簡単に身代わりと入れ替える事ができましたよ、あなたが身代わりの私に魔力を連射している姿を背後から見ていましたけど、結構楽しかったですよ、あ、ちなみに私が空中に立っているのは風魔法を使って浮いているからですよ」
「そんなのどうでもいいわ!!」
ヴァレンティアが手に魔力を込めて至近距離でシエラに向けて放つがシエラは指一本でヴァレンティアの込めた魔力に当てると魔力が打ち消される。
「なっ!?」
「あれだけたくさんの魔力を連射するのをずっと見ていればどれくらいで相殺できるかわかりますよ」
「何だと?」
「今のあなたの強さも大体わかりましたし、もう少し私の特訓に付き合ってもらいたかったのですが、ほっとくとまた変な変化をしそうな気がするので、そろそろ終わりにしましょうか」
言ってシエラは指先に魔力を溜めて放つ。
「ぐあああああー!!」
至近距離での攻撃なのでヴァレンティアはガードできずにくらってしまいそのまま地面に落ちていく。
「ぐ、まだだ」
「さっきは何とか防がれましたが、これなら防げませんよね」
先程よりもさらに巨大な魔力の塊が指先に集中し放つ。
「ぐ、こんなもの!!」
ヴァレンティアは両手に魔力を込めてシエラの放った巨大な魔力の塊を受け止めようとするが覚醒状態のシエラが放った魔力には敵わずそのまま押しつぶされる形でくらってしまうのだった。
大きな爆発音と共に爆風が出るが結界で守られているため大きな爆風は結界内だけに留まっていてさらに先程のヴァレンティアの魔力の連射で地面に穴が空いてしまったのを見てあらかじめ地面にも結界魔法を使用したので地形が変化するほどの威力の魔力の塊を打っても地面も結界で守っているので地形を破壊せずに済むのだった。
「・・・・・・これは驚きました」
「はあ、はあ」
煙が晴れるとそこには立っているヴァレンティアの姿があった。
しかし変化したその姿は消え元のヴァレンティアの姿に戻っていた。
「パワーもスピードも上がってるからタフさも上がってると思ってましたが、相当なタフさですね、ですがさっきの一撃で元の姿に戻ってしまったようですね」
「私が、こんな」
「まだ倒れませんか、これ以上は命の危険になると思いますが、仕方ないですね」
シエラは次の攻撃を仕掛けようとするがヴァレンティアを見て攻撃をやめる。
「こんな、混ざり・・・物の・・・・で・・・・・・き」
ヴァレンティアはその場に倒れて動かなくなる。
シエラがヴァレンティアに近づき様子を見るとヴァレンティアは気を失っていたのだった。
「少し手間が掛かりましたが終わりましたね、さて、このままにもできないので、あそこに連れて行くしかないですね」
裏切者の配下との戦いは幕を閉じたのだった。
読んでいただきありがとうございます。
シエラVSヴァレンティア決着です。
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