第34話 今後について、そして 2
今回は、いつもより長めです。
「という事があったんだ」
レイアは家に帰ってからリズに学園で何があったかを夕飯を食べながら話していた。
「なるほど、それにしても真理亜様のお友達は面白い子達ばかりですね」
「そうだな、僕も毎日話していて楽しいと感じるよ」
「レイア様も今度の学校生活は楽しんでいるようでなによりです、私も嬉しい気持ちになります」
リズはレイアが楽しんでいるのを自分の事のように嬉しく感じていた。
「まあ、あの時は色々迷惑をかけて悪かった、他の者にも心配をかけたしな」
「お気になさらないでください、レイア様の苦しみをわかっていて何もしなかった私達にも責任はありますので」
「そんなことはないさ、お前達はいや、もうやめにしよう過ぎた事だしな、これからの話をするべきだ」
「そうですね、わかりました」
また暗い話になりそうだったのでレイア達は無理やりに話を終える事にする。
「こっちに来てある程度たったが、魔力の反応は感じるが敵意は感じないな」
「ええ、こちらも色々な所を周っていますが、敵意のある魔力はありませんね」
レイア達は人間界に来て最初に真理亜を襲った魔族のグムバ以来真理亜を襲う魔族は現れていない。
グムバの話では他にも真理亜の命を狙う様に何者かから頼まれているという魔族がいると聞かされているが、今のところまだ現れていない事にレイア達の警戒は強くなっていた。
「今のところ現れていないのは良い事だが、いつ来るかわからないしな、それにしても魔力を持った者は意外といるんだな」
「そうですね、ですがどれも大した事はありませんし敵意もないのでおそらく何も知らず普通に暮らしていると思います」
「この世界にいる魔族全てがそうという事ではないようだな、イゴールやフィオナのようにこの世界に来たと考えるべきだろうな」
「ですが、何故この世界に魔力を持った者がたくさんいるのでしょうか? 私のように転移の魔法が使えるわけではないのに」
リズは人間界に魔力を持った者が多くいる事に疑問を持つ。
「僕もそこは気になってた、確かに多いと思うな」
「原因は何なのでしょうか? こっちの世界には私達の世界のように異世界から呼び出す召喚魔法なんてありませんし」
「そう言えばフィオナが言ってたな、突然空間が歪んでその中に吸い込まれて気づいたらこの人間界に来ていたと、それが関係しているのか?」
「その空間が歪んだというのも気になりますね、イゴール様のように自力ではないという事ですよね?」
「ああ、自然に発生して吸い込まれたと言っていたな」
「普通に考えればそれが原因かもしれませんね、ですが人間界にいる魔力を持った者の数からして頻繁に起こっている現象という事になりますが」
「ああ、だから何故そんな現象が起こっているのか自然に発生しているのかあるいは」
「人為的によるもの・・・・・・ですか?」
レイアの考えにリズが続けて答える。
「そうだ、グムバが言っていたが、自分に頼んだ奴がいると、そいつによってこの人間界に来たと、まあ、可能性の話だがこの多さからしてないとも言い切れない」
「だとしたら何者なのでしょうか? 真理亜様の命も狙っているようですし、それにレイラ様を殺した可能性のある者かもしれません」
人間界に魔力を持った者が意外と多い事。
その原因が元いた世界で空間が歪みそれに吸い込まれて人間界に来た可能性がある事。
数が多い事から頻繁に起きているかもしれない事。
その原因が自然によるものかあるいは人為的によるものか。
もし人為的なものならグムバのように真理亜の命を狙う者達が連れてきた事からその可能性がある事。
そしてその者達が姉レイラを殺した可能性あるいは何か知っているかもしれない事。
「考えれば考えるほど謎が深まってわからない事だらけだ」
そんな事を言いながらレイアは溜息を吐く。
「確たる証拠も何もありませんからね」
「まず、姉貴が殺されたと考えるとどんな奴なのか全く見当がつかない」
「そうですね、魔王に匹敵する存在だと心当たりがあるとすればイゴール様ですけど、それはないですもんね」
「そうだな、一応聞いてみたしな、そしたら」
『私は一人で自由に行動するのが好きなんですよ、誰かに指図されて動くなんて気はありませんよ』
「って言ってたしな」
「ええ、一応記憶も見ましたけど関係ありませんでしたしね」
レイア達はレイラが他の魔族に殺されたかもしれない事を考え一応イゴールにも聞いてさらに記憶も見させてもらっていたのだ。
結果はやはりレイア達の思った通り関係はなかった。
「そもそも、姉貴が殺される理由が思いつかないな、リズ、姉貴を恨んでいる者に心当たりはあるか?」
レイアはリズにレイラに恨みがある者がいないかを聞く。
「人間界ではわかりませんが元の世界なら勇者とか人間とかだと思いますが基本レイラ様は人間にもお優しい方でしたから恨みという線は薄いのではないかと」
リズはレイラに恨みを持つ可能性のある者を思い返すがあまりいないと答える。
「確かに姉貴はあまり人間を殺すなんて考えはなかったな・・・・・・今思いついたけど僕に対する恨みのある者とかは?」
「レイア様にですか? だとしたら何故レイア様にではなくレイラ様に?」
「あれだろ、僕には敵わないから代わりに僕の大切な者達を殺して僕に対する復讐とか、それなら僕を恨む奴なら結構いるからな」
レイアは自分に恨みを持った者がレイラを殺し自分に対する復讐をしたのではないかという考えを思いつく。
大切な者の命を奪う事でレイアに絶望を与えるために、それならレイラを殺す理由にもなりえるかもしれない。
「だとしても、レイラ様は魔王ですよ? 不意打ちを受けたとしても何かしらの反撃をしていたと思いますしそもそも殺すなら何度も言いますけど少なくとも魔王以上の実力者という事になりますよ?」
「そうだな、魔王以上の実力を持った者、姉貴が殺されたと仮定するならそういう事になるな」
「それに、レイラ様が本当に殺されたのかも可能性の話ですし、もしかしたら本当に事故に会って亡くなられたのかもしれませんし」
レイアとリズは考えるがどれも確たるものは何もなくただ可能性の話でしかなかったのだ。
「考えても何もわからないな」
「ええ、何だか疲れてしまいましたね」
「そうだな、だが確信を持って言えるのは真理亜の命が何者かによって狙われているという事だな」
真理亜の命が狙われている。
それは間違いない事である。
「誰が狙っているかはわからないが今後真理亜を狙う者が現れたら生かして捕らえるべきだな」
「そうですね、もしかしたら真理亜様を狙う者について何か知っているかもしれません」
「ああ、さらにそいつにたどり着けば、真理亜を殺そうとしているんだ、もしかしたら姉貴の死に関係しているかもしれない」
「でしたら、我々の今後の目的は決まりましたね」
「ああ、真理亜を狙う者が現れたら殺さず生かして捕らえ情報を聞き出す、そして真理亜を殺すよう依頼した者を探し出す、今後はこの二つを優先する」
「わかりました」
今後の方針が決まった事によりレイア達は一層気を引き締めるのだった。
「では、レイア様そろそろ寝ましょうか?」
「そうだな、ところでリズ」
「何ですか?」
レイアはリズをじっと見る。
「あの日以来着ていないけど、ネグリジェはもういいのか?」
「あ、あれは試しに着てみただけです、それにあれを着る時はもう決めてますから」
そう言ってリズは顔を赤く染めていた。
「そうか、ゼナの前で見せるんだな、きっと喜ぶぞ」
「ッ!! も~うレイア様!!」
顔を真っ赤にして叫ぶリズを見てレイアはからかうような笑みを浮かべていた。
「そうでした、レイア様」
「ん? 何だ?」
「私も私なりに真理亜様を守る方法を見つけましたよ」
「どんな方法だ?」
「それはまだ秘密です、明日になればわかりますよ」
リズもリズなりに真理亜を守る方法を見つけたみたいだがレイアにはどうやらまだ秘密らしい。
果たして彼女が見つけた方法とは何なのだろうか。
次の日。
いつものように授業のチャイムが鳴り席に着く。
「はーい、皆さん席に着いてください、授業を始めますよ」
先生が入ってきたが真央は先生を見て目を見開いた。
「今日から英語の授業を担当する事になりました、新任教師のリズ・フランベールと申します、気軽にリズ先生と呼んでくださいね」
その先生は、リズだった。
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