第369話 またやって来た、ゴールデンウィーク 12 変わり種
「こいつを使わせてもらうよ」
郁恵が出したのは調味料の入ったビンだった。
「随分赤いな、もしかして辛い調味料?」
「そうだよ、唐辛子を始め複数の種類の辛い調味料さ」
「激辛お好み焼き」
「そうさ、今から辛いお好み焼きを作る、新たな刺激って奴さ」
「面白い、ぜひ食してみたい」
「待ってな、今作ってやるから、でもその前にこれをつけてっと」
郁恵はマスクとゴーグルをつけて辛い調味料を入れてお好み焼きを一枚焼く。
「ほら、できたよ」
郁恵が作ったお好み焼きは真っ赤な色をしていた。
「匂いが凄いな」
真央はヘラを使おうと思ったが一旦ヘラを置いて割り箸で切って一口入れる。
「・・・・・・辛い」
⦅そりゃそうだ⦆
真央の言葉にその場の全員が内心で頷いていた。
「辛いって言うわりにはそんなに辛そうな顔をしてないね」
「まあ、普通なら火を吹きそうだからな」
⦅マンガじゃねーよ!!⦆
真央の言葉に全員が内心でツッコむ。
そんな周りの心情など知らない真央は辛いお好み焼きを食べ終える。
「これは唐辛子を使ったお好み焼きか?」
「そうだよ」
「なるほど、辛いけど、この辛みが他の素材と合わさって悪くないな、見た目は凄いけど」
「そうかい、なら辛さを上げようか」
「ん?」
郁恵はさらに辛い調味料を出す。
「お好み焼きのメニューになるかと思って集めた世界中の辛い調味料さ、でもここの客達は情けない事に辛くて一口食べたらもう良いって言うからどうしたものかと思っていたのさ」
⦅そりゃそうだろ!!⦆
周りが内心で同じ事を思う。
「でも、アンタならあたしのこの世界中の辛い調味料で作った激辛メニューお好み焼きを制覇できるって信じてるよ」
「また出すメニューが変わるのか、面白い、いただこう」
「そうこなくっちゃね」
二人は笑みを浮かべながら激辛メニューお好み焼きを作って食べるのだった。
「なあ、あれ食えるか?」
「いや、無理ですよ、激辛そんな得意じゃないから」
「そうですね、無理だと思いますけど、彼女なら普通に食べちゃいそうな気がするんですよね」
このみの言葉に平岡も高遠もそして他の店主達も迷わずに同意するのだった。
「ほれ、できたよ、激辛の豚玉」
「辛い、けど豚肉と良い感じに合わさって辛いけど旨いな」
「ほれ、続いて激辛海鮮お好み焼きだよ」
「プリプリした食感に辛みが加わって刺激的で旨い」
「まだまだ行くから、どんどん食べな」
郁恵が激辛お好み焼きをどんどん作り真央は食べていくが普通のお好み焼きに比べて明らかに食べるペースが落ちている。
「さすがのアンタも辛いのは食べるペースが落ちるかい?」
「そうだな、辛くて水を飲まないとやってられないな」
そう言って真央は水をコップにではなくビールの大ジョッキに注いで一気に飲む。
「ぷはあっ、旨い」
⦅いや、おっさんじゃないんだから⦆
ビールの大ジョッキに入れて飲む姿がどうも子供に見えない周りの人達。
「コップよりこっちの方が良いな、本当はビール専用だけど」
「別に構わないさ、あたしもメニューじゃないのをアンタに食べさせてるからね、おあいこって事にしとこうか」
「助かる」
その後も真央は激辛お好み焼きを食べ続けるが辛いために食べるスピードは上がらずに大ジョッキの水を飲みながら食べていく。
やがて真央は激辛お好み焼きを食べて箸を置く。
「どうした?」
気になったのか郁恵が真央に問うが真央からの返事はない。
「なあ、これって」
「ああ、そういう事だな」
カレー屋の店主と寿司屋の大将は真央の今の状態が何なのかを理解した。
「そろそろ、良いだろう」
真央は再びヘラを持つのだった。
読んでいただきありがとうございます。
激辛お好み焼きが出ました。
自分が平気なのは中辛くらいですね。
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