第32話 唯とのコミュニケーション
「はい次、宇界さん」
先生がホイッスルを吹き走り出す真央。
ジャンプ台に足を踏みその勢いで跳び箱六段を綺麗に飛び越える。
『お~!!』
皆から歓声の声が上がる。
そう、今は体育の授業で跳び箱をしているのだった。
「さっすが真央姉さん!!」
「おおー、相変わらず運動神経良いな」
「凄いね、真央ちゃん」
「そんなに凄い事なのか?」
「うん、うちのクラスで六段跳べるの彩音ちゃんと真央ちゃんだけだよ二人共凄い」
「えへへ~、真理亜ちゃんありがとう」
「お前何か気持ち悪い顔してるぞ」
「次の人、準備して」
「あ、そろそろ私の番かも」
「そうか、頑張れ」
「うん、ありがとう」
真央は真理亜を応援し跳び終わった人達の所で座って待っていた。
「お疲れ様です、真央さん」
声のした方を向くと隣には唯がいた。
「ああ、唯もお疲れ」
「ふふ、真央さん凄いですね、六段を跳べるのは真央さんと彩音さんだけですからね、私は何とか五段を跳べましたけど今はここが精一杯ですね」
「そうか、まあ人それぞれだからな、自分に合わせてやればいいさ」
「そうですね」
二人は他の人の跳び箱を見ながら会話をしている。
「そう言えば、真央さん聞きましたよ」
「何を?」
「彩音さんの更生の事ですよ、協力してくれるそうですね」
「ああ、その事か、うん、そうだけど唯も協力するって聞いたけど」
「ええ、でも私は別に彩音さんが真理亜さんを好きになっても良いと思いますよ」
「え?」
唯の発言に真央は驚く。
「だって人が人を好きになるのは普通の事ですし、その愛の形だって色々あるのですから、お友達の恋だってできるなら応援したい気持ちにもなりますよ」
「でも、更生には協力するって決めたんだろ?」
「ええ、彩音さんの恋は応援したいですけどもしこれが原因で二人の仲が悪くなってしまうのは私も嫌ですからね、私はできる事ならお友達とは大人になった後も時々会ったりして話したりしたいと思っていますから、だから私は沙月さんの案を受ける事にしたんです」
唯は自分の意思を真央に伝える。
「大人になっても・・・か」
「はい、大人になって久しぶりに会って今こう言う事をしているなど、そんな他愛のない話をしたり遊んだりするのに憧れているんですよね」
「随分気が早くないか? まだ子供だぞ?」
「そうかもしれませんね、でも私はそうありたいと思うんです、あ、もちろんその時は真央さんも一緒ですよ」
そう言って唯は真央に笑顔を向ける。
「そうだな、そう言うのも良いかもな」
「ええ、素敵ですよ」
こう言う待っている時に友達と会話をする事に真央は自然と笑みを浮かべていた。
(この子とはあまり話した事がなかったからちょうど良かった、良い子そうだし仲良くなれそうかな)
真央はそんな事を思っていた。
「ところで、話は変わりますけど良いですか?」
「良いけど、何だ?」
「たいした事ではないですよ、ただどうしても気になる事がありまして、真央さんにとっては失礼な事を聞かれると思いますけどそれでもよろしいですか?」
唯は真央に確認するように問う。
「別に良いぞ、僕に聞きたい事があるなら遠慮なく聞けばいいさ」
「わかりました、では言わせていただきますね」
そう言って唯は少し間を置き。
「真央さんって本当に私達と同い年ですか?」
唯の問いに真央の中で一瞬動揺が走った気がした。
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