第341話 カツ丼タワー
「いただきます」
真央は一番上のカツを一切れ箸で掴み一口食べる。
「うん、旨い」
そのまま二口目を口に入れて一切れ食べ終えた真央は次のカツを一切れ掴み口に運んで行く。
「そうかい旨いなら何よりだよ、カツも良い感じに歯応えよく感じる柔らかさでソースはしつこくない量で玉ねぎと卵でとじて旨さが凝縮されていてね、年寄りのあたしでもこうしてたまに食べたくなるのさ」
郁恵もカツ丼を食べながら旨さを伝える。
「しかし、カツが上にあるからご飯に手が付けられないな」
カツは上手いがカツばかり食べているからそろそろご飯と一緒に食べたいと感じる真央であったがご飯を食べるとカツ丼タワーが崩れて落ちてしまうためにカツを先に食べるしかないのであった。
「だったら一皿用意してもらってその上にカツを置いたらどうだい?」
「ああ、その手があったか」
「別に良いだろ?」
「俺は頼まれたものを作って出すだけだ、どう食べるかは客の自由だ、待ってろ」
老店主は一皿を手に持ち真央の前に置く。
「使いたきゃ使え」
「どうも」
真央は用意された皿にカツ丼タワーのカツを移し最後の一枚だけご飯の上に残し普通のカツ丼にして再び食べ始める。
「やっぱりご飯と食べると旨いな」
「アンタ本当に良い食べっぷりだね、その小さな身体のどこにそんなに入るのか、あたしはそれが気になって仕方ないよ」
「ほう、もう二枚目のカツを食べ終えたのか、大体の奴は二枚目からペースが落ちてギブアップする奴が多いんだけどな」
「カツは腹に溜まるからね」
二人が話し合っている間にも真央はカツを食べていきもう三枚目のカツを食べ終える状況だった。
「嬢ちゃん、水のお代わりいるか?」
「ん?」
「カツばっかり食べてるんだ、腹にも溜まるし喉だって渇くさ、カツばっか食べて飽きてるなら一旦口の中を水で洗い流してスッキリするのもありだ」
「そう言えばそうか、じゃあ水おかわり」
「おう」
老店主は真央のコップに水を注ぎ水の入った容器をそのコップの横に置く。
「そこに置いておくから水が飲みたくなったら注いで飲みな」
「どうも」
真央は礼を言ってカツ丼を食べ進める。
「驚いたな、もう五枚くらい食べてるのに一向にペースが落ちない」
「この子にとっちゃまだまだいけるって感じかね、あたしはごちそうさんだよこの年になっても肉が食えるのはアンタのカツ丼くらいだよ」
「毎回来る度に言ってるな」
「良いだろ、アンタだって素直に褒められて嬉しいだろ?」
「そういう事にしといてやるよ」
二人がそんな会話をしている間にも真央はカツ丼を食べ続ける。
「ん、肉が柔らかくていくらでも食べられそうだな、カツ丼一筋でやって来たのは伊達じゃないな」
「年端もいかないちびっ子が何を言う」
そう言いながらも老店主はどこか楽しそうな感じだった。
「・・・・・・」
六枚目のカツを食べている途中で真央は周囲の客を見渡すと老店主に向いて注文をするのだった。
「たくあんとお味噌汁を頼みたいんだけど」
「ん?」
「たくあんと味噌汁ってそう言えば普通にカツ丼を頼むとついて来るがカツ丼タワーにはついてないね」
「ああ、これだけでも大変だからな、これ以上増やすのもどうかと思ったから出さなかったんだが、食いたいのか?」
「あまりにも旨そうだったから」
「そうかい、おい」
「はい」
老店主に声を掛けられた店員が厨房に入り少ししてたくあんとお味噌汁を真央の前に出す。
「これで良いか?」
「どうも」
真央はたくあんと味噌汁を口に入れるとほっこりした気分になる。
「やっぱ、カツ丼ばかりだと水を飲んでも飽きるからな、こういうのがあると良いな」
「まさか、これと一緒にたくあんと味噌汁を食う奴がいたとはな」
「本当に底が知れない子だよ」
たくあんと味噌汁を口に入れながらカツ丼を食べていくとカツ丼タワーだったカツが残り一枚となり見た目は大盛のカツ丼となった。
「ひょっとしてこれは」
「ああ、アンタの思ってる通りだと思うよ」
「本当にか、本当に」
老店主が何やら言っているがそんな事などお構いなしに真央はがっつくようにカツ丼を食べていく。
そして最後に丼を持ち上げてがっつくのだった。
「ふう、ごちそうさま」
丼を置くと中身は綺麗になくなっていたのだった。
「全部食っちまったのか、本当に」
老店主は真央の食べ終えた丼を見る。
「ふ、ぬはははははは!!」
そして老店主は大声で笑うのだった。
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