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第334話 大人の時間 4

「私もこの世界に来たのは数百年も前の事ですからね、あの時と比べると今の人間達は物分かりの良い方達ですね」


 グラスを拭きながらイゴールが会話に入る。


「数百年って、徳ちゃんそんな昔からいたの?」


「長く住んでいるとは思ってたけど、まさかそんなに前から住んでいたなんて」


「この話をあなた方にするのは初めてでしたね」


 拭き終えたグラスを置いてイゴールは話し出すのだった。


「私が最初にこの世界に来た時はまだ戦争とかがあった時代でしたね、人間達は皆自分の国を守るために戦っていました、最初は争いでしか解決しない自分の世界の人間と変わりないと思っていましたが、戦争が終ってからの人間達を見ていると少しづつ変わっていき大きな戦争をしてから繰り返さずにしていく人間達を見て少し興味が涌いてきましたね」


「人間って意外と大きな失敗をした時って二度と同じ事を繰り返さないようにするのよね」


「そうね、大きな失敗は自分の築いてきた全てを失うような事だと思うのよね、地位や名誉、自信やプライド、そう言ったものを失ったりするのよね、そうなったら人間は立ち上がるのに苦労するわ、そうならないために大きな失敗は繰り返さないようにしてるのかもね」


「人間に興味を持った私は初めて人間と関わってみようと思いました、最初はただのアルバイトから初めてみました、その時一緒になって私に仕事を教えてくれた若者はとても丁寧に教えてくれました、若いのに身分が上なのに決して私を見下したりせずに丁寧に教えてくれた、中々礼儀のある若者だと思いました、いつの間にか私はその者と一緒にいて色々な話をしました、どうやらお金を夢を叶えるためにお金を稼いでいると言ってました、叶うかわからない難しい夢だと言ってましたがその時の彼の顔は夢に向かって輝いているように見えました、私がいた世界の人間とは全然違いました」


「その人間はその後」


「ええ、その過程の中で新たな生きがいを見つけ彼はその仕事を生涯続けました、本来の夢を叶える事はできませんでしたが後悔はないと言ってました」


「そうか」


「それからも色々な人間と関係を持ちました、夢を叶えた者そうでない者、夢半ばで命を落としてしまった者、夢を叶えたのに思い描いた通りに行かなくて自ら命を絶った者、現実を知り夢を諦めてしまった者、特に夢を持たないが楽しい人生を歩めた者、色々な人間に会って来ました」


「たくさんの人に会って来たのね」


「でも徳ちゃん、今はこの仕事をずっと続けてるよね?」


「ええ、どう言うわけかこうして自分の店を開いて誰かの愚痴を聞いたりして話し相手になったりするのが結構性に合っていると思いましてね、現にこうしてあなた達と一緒に話をしていると楽しいものですよ」


「あら~、嬉しい事言ってくれるわ~、だからあたし徳ちゃん大好き」


「ふふ、徳本さんがいてくれると心強いわ」


「そう言ってくれると私も嬉しいですね、ルーグ様」


「何だ?」


「この世界の人間とはこうして仲良くできる事はできますが、我々の世界の人間もこうして仲良くできる者がいるかもしれません」


「・・・・・・本当にそう思うか?」


「まだ私達は自分の世界の人間の事を何も知りません、これから何がきっかけになるかわかりませんがいつか人間との共存を考える時が来るとそんな気がしますね」


「もう戦争をしなくて済むならそんな時が来て欲しいものだな」


「そうですね、ですが」


 イゴールはグラスにカクテルを注ぎイゴールに渡す。


「今はこの楽しい一時を味わいませんか?」


 そう言ってもう一本のグラスにカクテルを注ぎ自分の手に取る。


「・・・・・・そうかもな」


「あら、乾杯するならあたしも付き合うわよ」


「ええ、私も付き合わせてもらおうかしら」


「では、この出会いの奇跡に」


 そう言って四人はグラスを当て飲むのだった。

 たった一夜の時間ではあるがそれなりに楽しい一時なのだった。


読んでいただきありがとうございます。

明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

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